温暖化が進めば進むほど、冷房に要するエネルギーも大きなものになるだろう。再生可能エネルギーだけではまかないきれないことから代替ソリューションが求められている。「海水空調(SWAC)」はその有力候補の1つだ。
SWACは、700~1200mの海深から海水を汲み上げて冷却に利用し、暖かい水を海に戻すとのシステム。熱交換を利用したこのシステムの可用性を、このほど国際応用システム分析研究所(IIASA)が検討している。
1m³で風力タービン21基ぶん
IIASAによる調査からは、冷却効率や供給の安定性といった点で、SWACが優れているとの結果が示された。
SWACではわずか1m³の海水から、風力タービン21基ぶん、あるいはサッカー場68個ぶんの太陽光発電設備を利用したものと同等の冷却エネルギーが提供できるとのこと。
冷水はタンクに貯蔵され、冷房需要に応じて提供。冷房需要が少ないシーズンには、冷水を使用して貯蔵タンク内の海水や淡水を凍らせておくことも可能だ。冷房需要の高いシーズンには、冷水とタンクの中の氷の両方が利用できる。
エネルギーコストが77%削減できる地域も
所要コストを従来の冷却システムと比較したところ、初期投資のコストは従来の空調システムのほうが低くなるが、運用のエネルギーコストではSWACシステムに軍配が上がった。
利用に最適な地域は、海岸から深海までの距離が短く、エネルギーコストが高く、年間を通じて暖かい熱帯の島など。例えば、ドミニカ共和国では48%、ナウルでは77%エネルギーコストが抑えられるとのこと。
冷房で利用できるほか、食料の冷蔵や水素の液化プロセスにも利用できるSWAC。まだまだ課題もある同技術の今後の展開に注目したい。
参照元:A renewable solution to keep cool in a warming world/ IIASA
- Original:https://techable.jp/archives/140200
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:YamadaYoji