ここ数年、ディープラーニングが大きく進化している。GPT-3のような新しいシステムとモデルが、人の言語の解釈で高い性能を発揮するようになり、それをさまざまな形で応用するよう開発者たちを奮い起こさせている。文章を読み上げるボイスレコーダーや翻訳アプリなどでその結果が見られるが、最近の性能の進歩にはビックリさせられる。
では、このAIインフラが引き出す次なる機能の波は何だろう?Hebbia(ヘビア)はそこを探ろうとしている。
Hebbiaは、現在ではスタートアップだが、そもそもはプロダクトスタジオだった。スタンフォード大学博士課程に在籍し、現在休学中のGeorge Sivulka(ジョージ・シバルカ)氏と、その他3人のスタンフォード大学のAI研究者とエンジニアからなる混合部隊が創設した、いわばAIに関するアイデア帳のような存在だ。彼らは現在使える最新のディープラーニング技術とモデルを使い、知識グラフ、意味解析、AIが最終的に人の生産性に役立つことの限界を押し広げようとしている。
シバルカ氏は、知識経済で働いていた友人の経験を知って刺激を受け、この分野に焦点を当てようと思い立った。「多くの仲間が……、全員が一日中机に向かって膨大な量の情報を読むだけというホワイトカラーの職種に進みます」とシバルカ氏は話す。「金融アナリストになった人たちは、1行か2行の情報を得るために米国証券取引委員会の報告フォームを徹底的に読み込みます。またはロースクールに進んだり法律家になった人たちも、同じことをしています。……文章の壁に挟まれ身動きが取れない状態で、情報の雪崩の中から意味を読み取ることなど不可能です」。
(おっしゃるとおり)
彼自身とその仲間たちが目指しているのは、個々人の知識のパーソナルユニバースの解明を助ける検索と分析と要約のツールを開発して、人の生産性をパワーアップさせることだ。「人々の仕事のやり方を強化するとの方針に従って、Hebbiaがそうした思考のための生産性向上ツールを作るというのが私たちの目標です。具体的にそれは、みなさんが毎日処理している情報のインプットとアウトプットを管理するものです」とシバルカ氏はいう。
野心的なビジョンだ。そのため彼らは、どこかでスタートを切る必要があった。そんな同社の最初の製品が、そのビジョンに私が興奮を覚えたこのChrome(クローム)のプラグインだ。しばらくプライベートなベータテストを行った後、米国時間10月29日、世界に向けてリリースされる。これはChromeの検索機能をアップグレードして、単なるテキストパターンのマッチングを超え、入力されたテキストから、実際に何を知りたいのか、どう答えるべきかを考える。下の動画は、TechCrunchのサイトでこのプラグインを試したところだ。
例えばWikipediaのページでCtrl-Fを使い「この人はどこに住んでいた?」と質問すると、プラグインはこの文章は場所を聞いているのだと判断し、そのページで関連情報を含む文章をハイライトする。もちろんこれはAIで、しかも現時点ではまったくのベータ版AIなので、その答えに一貫性がないことも現在のところあり得る。しかし、Hebbiaがこのモデルの精度を高めてテキストの読解力を改善すれば、ブラウザーでの検索は完全にこちらに移行し、生産性が大幅にアップすることが期待できる。
シバルカ氏は、いわゆる神童だった。十代のころからNASAで働き始め、スタンフォード大学の学部を2年半で卒業。その後、修士号を1年ちょっとで取得し、Hebbiaに寄り道をする前に博士課程に進んだ。
Hebbiaのアイデアは、創設から数カ月以内にベンチャー投資家の関心を惹きつけた。Floodgate(フラッドゲート)のAnn Miura-Ko(アン・ミウラ=コー)氏は110万ドル(約1億1500万円)のプレシードラウンドを主導し、Naval Ravikant(ナバル・ラビカント)氏、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏、Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏、Michael Fertik(マイケル・フェルティク)氏、Cory Levy(コリー・レビー)氏がそれに参加した。
Ctrl-Fは、現在Hebbiaの最重要製品であり、知識グラフと個人の生産性がもたらす大きな可能性への入口の役割を果たしていると、シバルカ氏は話す。「これは、コンピューターにできることの最後のフロンティアなのです」とシバルカ氏。コンピューターは、データをデジタル化して処理しやすくすることで、すでに数多くの分野に革命をもたらしたと彼は指摘する。Ctrl-Fに関してはこう話す。「これは基本テクノロジーなので、(私たちは)これを使ってできることの、ほんの上面を引っ掻いているに過ぎないのです」。
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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Hebbia、ディープラーニング、検索
画像クレジット:RapidEye / Getty Images
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(翻訳:金井哲夫)