米国時間10月22日、メディアはQuibi(クイビ)のニュースにがっついた。我々もそうだった。皆がそうした。むしろ、そうじゃなかった人がいただろうか?およそ20憶ドル(約2100憶円)の資金(そのうち3億5000万ドル(約370憶円)は戻されるが)、スター揃いの経営陣と生産チーム、大金をはたいた広告キャンペーン、そしてRR戦略はどれもが、イカロスの翼を溶かしてくれと太陽にいわんばかりだった。
とんでもない大失敗(今回はQuibiだったが)における我々全員のため息は、「信義誠実に基づいた失敗を、我々は不快なほどに攻撃しているのではないか?」という論理的で興味深い質問に繋がる。Quibiは他のスタートアップとまったく同じ、賭けであり、たまたま失敗してしまった賭けだっただけではないだろうか?A16ZのゼネラルパートナーAndrew Chen(アンドリュー・チェン)氏はツイッターで「へどが出る」と堂々とつぶやき、スタートアップの立ち上げにおける起業家精神あふれる挑戦を賞賛している。
all the people rushing to their keyboards to type in their “i told you so” hot takes on Quibi:
It’s gross. Building a company is hard, why celebrate a fail?
Go build something instead of using your energy to let twitter know how smart you are the say the consensus thing.
— Andrew Chen (@andrewchen) October 22, 2020
これは私にもよく分かる。実際TechCrunchでは全員が分かっている。我々がここで誇れることの1つは、そのやる気に敬意を払っていることだ。スタートアップの立ち上げがどんなに大変かよく知っている。チームとして、我々は毎年実に何千もの創業者を取材している。起業には、時に胸が張り裂けそうなストーリーや完全なトラウマが伴うものだ。そしてたまに、サクセスストーリーも聞くことができる(そう、我々のレポートの大部分は成功に焦点を当てている)。
正直になろう。ほとんどのスタートアップは失敗しているのだ。ほとんどのアイデアは見当違いで、起業家のほとんどは決して成功することはない。これは、スタートアップを立ち上げるな、情熱や夢を追いかけるなという意味ではない。成功した起業家がいれば、我々はその成功について話し、報告し、成功の理由を説明したいと思う。なぜならより多くの起業家の成功は最終的には我々全員にとってプラスであり、この世の中の進展を促すからだ。
だがバッドアイディアが存在することもはっきりさせておこう。そして、違う状況ならもっと分別がある賢い人々が、目に余るほどのひどいアイデアを出し、何十億ドルもの資金を集めることもある。Quibiは、友達や家族からラーメン代程度のお金を集め携帯電話の新しいフォーマットを発明しようとしている、エンターテイメントに熱い思いを寄せる大学中退者のひらめきではなかった。Quibiは現在のアメリカで最もパワフルで影響力のある2人のエグゼクティブが運営していた。彼らはこのプロジェクトに、他の女性創業者達が今年調達した金額の合計よりも多くの金額を調達した。
チェン氏は、テック業界における多くの自明のアイデアは、ばかげたアイデアから始まるという重要な点を指摘する。確かにその通りだ!実際、テクノロジーの歴史には、投資家やプレスが、ばかげていると感じたり、構築不可能(「ばかげている」の、より礼儀正しい言い方)と思っていたアイデアの例がたくさんある。
for everyone who “obviously” knows when they see a bad idea in tech – everyone citing Quibi today – here’s a thread for you. https://t.co/QpXXKG16Vm
— Andrew Chen (@andrewchen) October 22, 2020
ばかげていると思われるアイデアが、賢いアイデアに変わるのはなぜだろう?理由の1つはばかげたアイデアとして始まったものが、ゆっくりと手直しを繰り返し、非常に優れたアイデアに変わることだ。Facebook(フェイスブック)は、大学構内でクラスメートについてチェックする「フェイスブック」に過ぎなかった。そこで終わっていたら、それまでのその他の多くのソーシャルネットワークと同じように廃れていき、歴史のごみ箱に捨てられていたことだろう。だがZuckerberg(ザッカーバーグ)氏とそのチームは何度も手直しを行った。写真やフィード、メッセージングなどの機能を追加し、成長することを最重要視して、開始当時よりも多くの機能を搭載した製品に仕上げた。
我々はこのパターンをずっと、何度も何度も見てきている。創業者はユーザーからフィードバックを得て、手直しや方向転換を行い、ゆっくりだが確実に、未熟だったかもしれないコンセプトから、ビジネスと消費者の注目を集める今日の激しい市場でもっと戦えるものに移行していくのだ。
Quibiの展開はこうではなかった。あらゆる企業の成長において回避できない困難な状況に対応するための資本を慎重に節約する一方、製品の手直しや、同社が魅力を感じたユーザーや才能を熱心に育てるといった長期的な計画が全くなかった。
我々評論家ももちろんミスはする。だがアナリストはQuibiの警報を発しているかのような紛れもない欠陥のすべてを指摘できないバカではなかった。アナリストは賢かった。彼らは正しかった。もちろん次回は間違う可能性もある。アナリストは予測に自信過剰になるべきではない。しかし同時に、我々は総じて両手を広げ、出されるアイデアすべてを天からの素晴らしい贈り物だと宣言すべきではない。ほとんどのアイデアは本当にばかげているし、我々全員はそれを指摘する権利がある。
だから、やる気に敬意を払おうではないか。プロジェクトを世に出そうと頑張っている、一生懸命な起業家を蹴倒すようなことはやめよう。だが、ばからしいと思うのにそう言うな、ということではない。優秀な起業家は、たとえそれが信じられないほどの毒舌であっても、批判的なフィードバックがスタートアップの成功にとって必要な要素であることは知っている。みんなを褒め称えるということは、誰も褒め称えていないことになる。
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(翻訳:Dragonfly)