マイクロモビリティシェアリング業界が非常に期待している市場の1つであるニューヨーク市は、電動スクーターの試験運用に関する情報提供依頼書(RFI)を公布し、同市内での事業運営の機会をめぐる企業間の競争が正式に始まった。
同市はまた、データの集計や分析、路上充電や駐車場、安全運転のトレーニングコース、スクーターの回収・保管サービスなど、電動スクーター業界に付随するサービスを提供する企業に対して、関心表明依頼書(「RFEI」)も公布した。
ニューヨーク市は、住民が移動するための新しい方法を提供し、その過程で急成長する業界をサポートしようとしている。Bird(バード)、Lime(ライム)、Spin(スピン)、Voi(ヴォイ)などのほぼすべての大手eスクーター会社や、知名度があまり高くない他のいくつかの企業が許可の申請を計画しており、各企業がベストプラクティスと独自の特別な運営ブランドを公約として打ち出して同市を説得しようとしている。TechCrunchに電子メールで送られてきた声明により、今回の競争がどのように繰り広げられるか予測できる。ライムやヴォイのような企業は自社の経験を売り込んだ。
ライムの政府関係担当シニアディレクターであるPhil Jones(フィル・ジョーンズ)氏は、電子メールでの声明で「当社はニューヨーク市と協力して、安全性、アクセシビリティ、公平性を優先する世界トップクラスのeスクータープログラムを作成できることをとても楽しみにしている」と述べている。「ロサンゼルス、シカゴ、パリ、ローマなどの大都市のほか、世界中の100以上の都市で事業を運用した経験から学んだように、eスクーターはニューヨーク市がより弾力性と適応性のある交通システムを構築するのに役立つ。ニューヨーク市民が新しい移動手段を模索する中、eスクーターは、ソーシャルディスタンスを保ちながらニューヨーク市内を移動したい人にとって理想的な選択肢となるだろう」とも述べている。
ヴォイは、ヨーロッパでの事業展開から得たノウハウを売りにしている。
ヴォイの共同創設者兼CEOのFredrik Hjelm(フレドリック・イェルム)氏は、次のように語っている。「サイクリングインフラストラクチャーが拡大を続けていること、公共空間をオープンストリートやアウトドアダイニングに変える構想が最近立てられていることなどからわかるように、ニューヨーク市は、街並みを変革するという米国全体での取り組みをリードしている。当社はこれまでヨーロッパの50以上の都市が自動車の利用価値を再考するのを支援してきたが、今後、ニューヨーク市を米国の拠点にしたいと考えている」。
バードは、公平性、安全性、アクセス、効果的な駐車場ソリューションを優先することを公約にしている。スピンはさらに踏み込み、プログラムがどのようなものであるべきかを提言し、いくつかの競合他社の排除を狙う戦術をとった。
スクーター会社がいわゆる格差解消ゾーンを設定し、低所得者向けの料金を少なくとも50%引き下げ、スマートフォンなしでスクーターをレンタルする手段を提供することを求めるよう、ニューヨーク市の交通機関当局に提案したとのことだ。スピンは、このプログラムで許可を与えるのは3~4社のみに限り、1業者あたりのスクーターの上限を2000台にすべきだとも主張している。また同社は、障害者向け車両、スクーターを駐輪施設に確実に固定できるロック技術、および企業が地元で雇用することを条件としたW-2従業員の使用を要件とすることも提案している。
背景
ニューヨーク市議会は6月下旬、市内における電動スクーターシェアリングの試験運用プログラムを作成するよう、ニューヨーク市運輸局(DOT)に求める法案を承認した。DOTは10月までに、eスクーターシェアリングの試験運用プログラムに参加するための提案依頼書を公布する必要があった。
試験運用プログラムは2021年3月1日までに開始しなければならない。ニューヨーク市議会は、DOTと引き続き協力し、試験運用プログラムの実施場所を決定することになっている。TechCrunchがeスクーターを推進する複数の企業や支持者から入手した情報によると、試験運用プログラムの実施エリアが限定されると、このプログラムが失敗する可能性があるとのことだ。
マンハッタンでは運用が禁止されているが、残りの4つの行政区(ブロンクス、ブルックリン、クイーンズ、スタテン島)については規定がない。
スクーターを許可する法案が最初に提出されたのは2年以上前のことだった。しかし、2020年4月にニューヨーク州知事のAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)氏がスロットル式の電動スクーターと電動バイクの同州における使用を合法化する法案に署名するまで、試験運用プログラムの実施は技術的に不可能だった。同州法の下では、マンハッタンでのスクーターシェアリングは許可されず、残りの行政区でも、スクーターのシェアリングサービスを運営するには、試験運用プログラムがニューヨーク市議会で承認されなければならない。
提出された地方法案では、試験運用プログラムがどのように構成されるかについていくつかの要件を設けている。既存のバイクシェアリングプログラムを利用できない地域は、試験運用プログラムの地理的境界を決定する際に優先的に考慮される。許可を受ける企業は、アクセシビリティに配慮したスクーターのオプションを提供するなどの運営規則を満たすことが求められる。
その他の激戦市場
電動スクーターシェアリング企業にとって、ニューヨーク市が世界で唯一の重要な市場というわけではない。シカゴ市、シアトル市、パリ市をはじめとして、他のいくつかの大都市では、パイロットプログラムの申請手続きが完了し、運営許可が下りている。パリ市では、16社もの企業がスクーターを運営するための許可を求めて競争した。同市は7か月間の入札プロセスを経て、ライム、Dott(ドット)、Tier Mobility(ティアモビリティ)に運営許可を与えた。バードは、ちょうど1年前にフランス市場を見込んで大きな賭けをし、パリ市にヨーロッパ最大のオフィスを開設する計画を発表したが、競り負けた。バードは当時、2021年半ばまでに1000人を雇用したいと述べていた。Bolt(ボルト)、Comodule(コモジュール)、スピン、ヴォイ、Wind(ウィンド)も、パリ市での営業許可を受けられなかった。
8月、シカゴ市は2回目の試験運用プログラムにおいて、バード、ライム、スピンに参加を許可した。今回、シカゴ市では、スクーターの使用時間を午前5時~午後10時に限定し、最高速度も時速25キロメートルに制限しているほか、レイクフロント・トレイルのようにスクーターの利用を禁止しているエリアもいくつかある。各スクーター会社が運用できる台数は3333台以下に制限されており、そのうちの50%は格差解消エリアに配備しなければならない。2回目の試験運用では、利用終了時にスクーターを固定物に固定するよう利用者に求めるロックシステムをすべてのeスクーターに実装する、という要件が追加された。
多くの大規模市場では運営業者が既に決まっており、残っている大きな市場はロンドン市とニューヨーク市の2都市のみである。ロンドン市交通局はこの夏、スクーター会社が市内で営業できるようにすると発表した。ただし、営業許可はまだ与えられていない。バード、ボルト(エストニアで創設されたライドシェアリングのスタートアップ)、ライム、Neuron Mobility(ニューロンモビリティ)、ティア、ヴォイ、Zipp Mobility(ジップモビリティ)はすべて、ロンドン市のスクータープログラムに関心を示した。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:スクーター アメリカ
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(翻訳:Dragonfly)