世界最速Kirin9000を搭載
5つのカメラは贅沢三昧
ファーウェイは毎年春に「P」シリーズ、秋に「Mate」シリーズの新製品を投入している。Mateは同時期に発表になるiPhoneや他社のフラッグシップモデルに対抗すべく、その年最強と言えるスペックを搭載したモンスター級のスマホとして登場するのが習わしだ。2020年秋モデルとなる「Mate 40」シリーズは4機種が出そろった。
5つのカメラを搭載する「Mate 40 Pro+」、シリーズ中核の「Mate 40 Pro」、機能を抑えたハイパワーマシン「Mate 40」、そしてスペックを最高に高めポルシェデザインとコラボした高級モデルの「Mate 40 RS Porsche Design」。このうち上位3モデルはチップセットに最新のKirin 9000を搭載する。ファーウェイ子会社のハイシリコンによる同チップセットは、業界で大手メーカーのスマホが採用するクアルコム製の「Snapdragon 865+」よりも高性能。2020年秋冬モデルの中で頂点に君臨するスマホと言える。
Mate 40 Proは3つのカメラ、そしてMate 40 Pro+は5つのカメラを搭載する。その内訳は5000万画素F1.9の広角、2000万画素の超広角、1200万画素の3倍望遠、800万画素の10倍望遠、そして被写界深度を測定するToFだ。10倍望遠カメラは潜望鏡のように多数のレンズを横向きに配置するペリスコープ構造で、デジタルでは100倍の撮影に対応する。高倍率望遠に強いだけではなく、あえて3倍望遠も搭載することで普段よく使うだろう中低域の望遠も得意としているのだ。
Mate 40 Pro、Mate 40 Pro+はフロントカメラも強力だ。1300万画素カメラに加え、こちらにも深度測定用のToFカメラを搭載。フロントカメラでもボケを効かせたセルフィーが自在に撮影できるのだ。ただしディスプレイの左上に楕円形のように配置されたフロントカメラは、その存在感がちょっと気になってしまう。しかし逆に言えばこれがMate 40シリーズのアイデンティティーと言えるディスプレイデザインなのかもしれない。
スポーツカーを意識した高級機
ポルシェデザインコラボモデル
ポルシェデザインとコラボしたMate 40 RS Prosche DesignはMate 40 Pro+をさらに性能アップしたモデルだ。メモリ構成は業界トップレベルのRAM12GB+ROM512GB。5カメラ搭載はそのままに、温度計も搭載している。背面の赤外線温度センサーはマイナス20度から最高100度までを測定できる。体調が悪いときに目安的に体温を測ることもできそうだ。
しかしこのモデルのハイライトは何といってもその外観にあるだろう。背面のカメラモジュールはMate 40ノーマルモデルの円形とは異なり八角形。角の丸みはポルシェ911 RSを思わせる。このカメラを回り込むように配置されるストライプ模様は、スポーツカーの表面を流れる高速な空気のイメージ。手に持ってみるとまるで本体が動き出すような錯覚を覚えるかもしれない。
こんなカッコいいデザインのスマホだけに、ケースも当然専用のものが用意されている。本革をあしらったレザーケースは赤と黒の2色。白と黒の本体のどちらにも合う色合いだ。Mate 40 RS Prosche Designの本体価格は12999元(約20万4000円)とお高いが、本革ケースも1999元(約3万1000円)もする。中国ならこの値段でスマホ1台が買えてしまう。ケースも本物素材を提供する、これがファーウェイとポルシェデザインの製品に対する世界観なのだ。
ファーウェイとポルシェデザインのコラボはこれで5モデル目となる。両者の間には高い信頼関係が築き上げられており、最高の品質と機能を搭載するスマホを作り上げるファーウェイの技術をポルシェデザインはしっかりと認めているのだ。なお、関連製品としてポルシェデザインブランドのファーウェイのスマートウォッチ「Huawei Watch GT 2 Porsche Design」も展開される。価格は4688元(約7万4000円)で、サファイアガラスとセラミックバックケースの高品質仕上げ。3つのポルシェデザイン製品を買うと合計約30万円となるが、高い満足感を得られるだろう。
ファーウェイのスマホは
これからどうなるのか
ハイスペックなMate 40 Pro+や、高級かつカッコいいポルシェデザインモデルを見ると、ファーウェイを「中国のスマホメーカー」と見下した見方をするのは間違っていることに気が付くはずだ。なにせカメラもあのライカの名前を冠しているだけあって、その性能は最新のiPhoneでも追いつけない。ちなみにカメラ性能の指標と言われるDXOMarkでMate 40 Proは現時点ですべてのスマホの中で最もスコアが高い。Mate 40 Pro+が発売されればさらにそれを上回る性能を見せてくれるだろう。
ハイシリコンのチップセット、Kirinもスマホ業界に新しい風を吹き込んでくれている。今でこそ各社のスマホカメラは撮影シーンに応じてAIが最適なモードを選んでくれるが、このAI機能をいち早く強化したチップセットがKirinだった。さらに5G向けの高速・安定・低消費電力を実現するモデムもハイシリコンは手掛けている。5Gの通信性能も評判は高い。
ハイシリコンはチップセットの設計を行い、その製造は台湾TSMCなどのファウンドリ(半導体製造工場)が行う。しかし高度なチップセットを設計できても、それを製品化できる高度な技術を備えたファウンドリはわずかしかない。アメリカ政府の制裁は、そのファウンドリに対して「アメリカの技術や製品を使ってファーウェイ向けの製造を行ってはならない」というものだ。つまりハイシリコンがどれだけ優れたチップセット開発技術をもっていても、ファウンドリ側がアメリカからの制裁を恐れて製造を請け負うことができないのである。
もちろん中国にもファウンドリはあり、アメリカの制裁を回避することができる。しかしその技術はTSMCやサムスンという業界トップと比べて数年以上遅れており、Kirinを製造するだけの能力を持っていないのだ。
ファーウェイはこれを回避するため、チップセットを台湾メディアテックなどから購入し、スマホ製造を続ける考えだ。しかしハイシリコンのチップセットよりスペックの落ちる他社のチップセットを使うとなれば、完成品であるスマホの性能も他社と横並びになってしまう。Mate 40シリーズのような傑作を生みだすことが難しくなるのだ。
アメリカの大統領選挙がようやく終わったが、トップが変わることで対中国戦略も方向転換されるかもしれない。しかしその動きがあったとしても今すぐではないだろう。ファーウェイの優れたスマホもチップセットがあってこそ生まれてきた。今後ファーウェイは他社チップセットでどのように市場での生き残りをかけていくのだろうか。
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000131249/
- Source:デジモノステーション
- Author:山根康宏