先日のテック企業公聴会は、絵に描いたような対比の構図だった。公聴会の間、建前上はソーシャルメディアと2020年の選挙に関する話題(未訳記事)から逸れないよう努めていた議員たちと、思いついたことをただ話す人たちとの対比だ。
また、過去と現在との対比もあった。ソーシャルメディア企業はこれまで、米国通信品位法230条の改正の試みを、放射性物質であるかのように嫌ってきた。ところがいまは協力する側に回り、会話から無視されることがなくなった。
だがとりわけ目立ったのは、バーチャル証言台に立った2人の人物の対比だった。論点のすり替えが得意なFacebook(フェイスブック)の最高責任者は、そのサービスについては過剰に、しかし内容は乏しく語るという戦法に終始した。口数少ないTwitter(ツイッター)のビジネス仙人は、魔法使いのような顎髭もさることながら、この事態に対応する準備を整えていたように見えた。
米国時間11月17日、米国上院司法委員会議長のLindsey Graham(リンゼイ・グラハム)上院議員は、事前に示していた公聴会の目的は、並べ立てられた不満の数々を反映するものではないことを示唆し、そうした意向を早々に破棄して、両CEOにそれぞれのプラットフォームの常習性を示すものを見たことがあるかと尋ねた。
Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏は、あの特徴的な自己弁護の構えで、その分野での調査は「決定的」なものではないと答えた。
「私たちの製品が常習性を持つことを、私たちは決して望んでいません」とザッカーバーグ氏は、行動科学者(The Guardian記事)、フェイスブックからの離反者(The Guardian記事)、同社製品に関する常識的な見解(Vice記事)に反して述べた。そして「人々には、そこに意義を感じて使って欲しい」と付け加え、それがフェイスブックの手口だと訴える「世間の誹謗ネタや誤情報」を非難した。この応答は、タバコ産業大手企業の公聴会で用いられたシナリオに沿ってビッグテックも対応しているという、一部の議員の主張に見事にはまっている。
同じ質問に対して、Dorsey(ドーシー)氏はそれほど不誠実ではなかった。「すべてにいえることですが、こうしたツールは常習性をもたらす可能性があり、私たちはそこに気づき、認識すべきだと強く感じます」とドーシー氏は答えた。彼の供述は、ソーシャルメディアが現代人の行動習慣をどこまで変化させたかについて言及を避けるものともとれるが、結果として、ツイッターのプラットフォームとしての健全性とユーザーの中毒に冒された脳にとっては、よい傾向だ。
Sen. Lindsey Graham: "Do you have any…evidence to suggest that your platforms can be addictive?"
Zuckerberg: "Most of the research suggests that the vast majority of people do not…experience these services as addictive."
Dorsey: "I do think…these tools can be addictive." pic.twitter.com/eL9TrqbEli
— ABC News Live (@ABCNewsLive) November 17, 2020
ABC News Live
リンゼイ・グラハム上院議員「あなたのプラットフォームに常習性があることを示す証拠はありますか?」
ザッカーバーグ氏「ほとんどの調査で、大半の人々はこれらのサービスに常習性を感じていないことが示されています」
ドーシー氏「これらのツールが常習性をもたらす可能性があると強く感じます」
2人のCEOは、それぞれのアルゴリズムに関する質問でも、はっきりと態度が分かれた。
Amy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員が、ソーシャルプラットフォームは、ユーザーが何を見ているかを判別する各社のアルゴリズム関連事項の透明性を高めるべきかと尋ねると、ドーシー氏は、ユーザーが管理するかたちで透明性を高めるべきだと提案した。「望ましい対策は、アルゴリズムをオフにできる、あるいは別のアルゴリズムを選べるといった選択肢を増やすことで、人々が自身の体験へのアルゴリズムの影響を確認できるようにすることだと思います」とドーシー氏は述べた。
ドーシー氏はさらに、ユーザーがランキングのアルゴリズムを自分の必要性に応じて選べるサードパーティーの「マーケットプレイス」のようなものを通じて、そうしたツイッターのオプションを拡大できると示唆した。
一方、ザッカーバーグ氏は、そのような考え方を汚い物であるかのごとくに遠ざけ、代わりに現在のフェイスブックがサードパーティーに依頼しているファクトチェックプログラム(フェイスブックが提示するファクトチェックは非常に控えめであることは別として)と、同社が削除した規約違反コンテンツの総数を記したコミュニティー標準報告書を自賛した。フェイスブックのアルゴリズムはブラックボックスであり、その中に閉じ込められたユーザーは、どうすることもできない(当然のことながら、このブラックボックスが広告収入を生み出す)。
それとは対照的に、ツイッターはオープン化を約束している。完全なかたちではないが、少なくとも新鮮だ。同社はそのプラットフォームのポリシーに関する決定を、ある意味、生きたドキュメントとして扱っている。間違いを認め、常に学び修正することを重視しつつ、注目度の高い決定については、ほぼリアルタイムでツイートして更新を伝えている。
ツイッターの実験的アプローチの一例を示そう。同社は、米国の選挙当日まで、ワンクリックでのリツイートを全面的に停止していた。ユーザーが反射的に行動しないよう願い、選挙に関連する誤情報の拡散を鈍化させるのが狙いだ。この変更は、ツイッターがそのプラットフォームの摩擦力を高めようと行ってきた新しい実験の一環でもある。ツイッターではさらに、特に性質の悪い誤情報やツイート(一部はトランプ大統領から発せられている)を隠したり、シェアの制限も行っている。フェイスブックは「ラベル(未訳記事)」に固執している。現状では、それが内容を審査していることを示す必要最低限のポーズだ。
ドーシー氏の企業は、いまだに嫌がらせや、思考停止を招く陰謀論や、いまでは死に体となった大統領による米国民主主義の破壊を目論む活動などの横行に悩んでいる。しかし少なくともツイッターは、改善を望む気持ちからプラットフォームの方向性を正す可能性を含む変化に対して、オープンであるように感じられる。
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カテゴリー:ネットサービス
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(翻訳:金井哲夫)