米国時間11月18日、Google(グーグル)はAndroid版、iOS版のGoogle Payアプリのメジャーアップデートを行った。他のスマートフォンベースの非接触型決済サービスと同様、Google Pay(以前のAndroid Pay)は、クレジットカードを代替するサービスを目的としてスタートした。その後、さらに機能が追加されたが、基本的な狙いは変わらなかった。
5年後の現在、Google Payには30カ国で約1億5000万人のユーザーがいる。今回のリニューアルでグーグルは従来のコア機能を維持したまま、個人の財政管理を助けることに重点を置いた新しい方向を打ち出した(新機能の詳細は下記に)。
またグーグルはPlexとよばれる新しい種類の銀行口座を2021年にスタートさせるために11の銀行と提携した。Plexはモバイルファーストの銀行口座で利用は月額使用料、当座貸越手数料はなく最低残高などの制限もない。口座は銀行に開設されるがGoogle Payアプリが管理の主要なチャンネルとなる。Plexのスタート時のパートナーは、Citi(シティ)とStanford Federal Credit Union(スタンフォード連邦信用組合)だ。
グーグルのプロダクトマネジメントディレクターのJosh Woodward(ジョッシュ・ウッドワード)氏は私に新アプリについてこう説明してくれた。
新しいGoogle Payアプリは3つのタスクを1つにまとめます。3つのタスクはアプリの3つのタブに対応します。1つは友人や企業に簡単、迅速に支払を行う能力です。2つ目は、ショッピングで料金を節約できるようセールスや特典を見つけることです。3つ目は、支出を記帳、管理して自分の財政状態を常に把握しておくことです。
友人や店舗などへの支払は、これまでもGoogle Payのコア機能だったが新アプリでは重点の置き方が少し変化している。グーグルの支払プロダクトの責任者であるCaesar Sengupta(シーザー・セングプタ)氏はこう説明した。
ここではすべてがユーザーとの関係に基づいて整理されます。取引記録の数字が延々と並ぶ無味乾燥なリストではありません。すべての活動は相手となる人や会社が中心となります。
アプリの中心となる新機能は友達とのピア・ツー・ピア決済だ。いままでどおりに支払いや請求を行うこともできるが、リニューアルの目玉はレストランへの支払い友人とワリカンにしたり、家賃や公共料金をルームメイトと分割したりできるようになった点だ。誰がもう支払っているのか、誰が滞納しているのかもすぐわかる。ウッドワード氏によれば、ユーザーアンケートの結果、請求書の分割が非常に大きな問題であることがわかったため、グーグルはこの機能をシステムに導入したという。
Google Payからタップで直接支払をした場合であれ、クレジットカードまたはアプリにリンクされた銀行口座であれ、このタブから、最近の取引のリストを見つけて詳細を確認することができる。
上でも触れたが、このリニューアルで銀行口座とクレジットカードをGoogle Payに接続し、支出に関する情報を取得できるようになった。これが最も重要な変化かもしれない。簡単にいえばGoogle Payアプリ内に簡易版のMintが導入されたことになる。これによりGoogleアプリで多彩な財政管理機能を提供できるようになった。グーグルはこの機能を有効にするために「いくつかのデータソース」と協力していると述べているが、アグリゲーターとなるパートナーが具体的にどこであるかは明かしていない。他の新機能と同様に、デフォルトではオフで、利用するためにはオプトインが必要だという点は強調しておくべきだろう。
基本的には他の個人財政情報サービスと似ている。最も初歩的な機能は一定期間にどれだけ支出したか、手持ちの残高はどれほどかを確認できる点だ。しかしグーグルは強力な分析力によりユーザーの消費習慣に対して興味深い洞察をいくつか示すことができる。例えば月曜日にはその週末に費やした金額が表示される。ウッドワード氏に次のようにいう。
データをストーリーとして読めます。スワイプして最近の大口支出や今週の支出額を確認して通常の週と比較することもできます。今月、友達に送金した金額、その相手、お金を払った店舗なども簡単にわかります。
こうした情報の確認がすばやくできるのは、グーグルだからだ。強力な検索機能を使用して特定のトランザクションを発見できる。開発チームは「トルコ」で検索すると店名に「トルコ」が含まれていなくてもケバブレストランを利用したことを発見できるところをデモしてくれた。ユーザーがレシートをスキャン、もしくは撮影している場合はGoogle Payからそうした画像を検索して、購入した商品やGmailの受信トレイで受け取った領収書、請求書に遷移することもできる。.
Google Payの新機能として、割引クーポンを仮想的に「切り取って」クレジットカードにリンクすることができる。リンクされたクレジットカードを使用して特定のトランザクションを実行すれば自動的に所定の割引を受けられる。ユーザーは他に何もする必要はない。オプトインすればこうした機能を利用し、さらにカスタマイズすることもできる。
開発チームGoogle Lensのチームと協力し、プロダクトやQRコードをスキャンして割引を発見できるようにした。
これまでアプリのコアとなってきた決済機能については3万カ所のガソリンスタンドで非接触型決済が使用できるようになるという(多くの場合、割引が適用される)。スタート時のパートナーはShell、ExxonMobil、Phillips(66、76)、Conocoだ。
また近く400以上の都市の駐車料金の支払いも、このアプリからできるようになる。現在でもポートランド市ならかわいいネコのアイコンのParking Kittyアプリから払えるが、私たちはいつもポートランドにいるわけではない。駐車料金支払に参加する都市は当初オースティン、ボストン、ミネアポリス、ワシントンDCだが、他の都市も続くという。
Google Payを使って支払いをすることと、すべての資金移動データ(極めて個人的な情報だ)を提供することはまったく別物だ。開発チームも強調していたとおり、Google Payは、例えば広告ターゲティングのためにデータを販売することはしない。サードパーティの企業はもちろんグーグル社内の他部署に対しても一切データを流用をすることはないという。付加機能もすべてデフォルトでオフになっておりユーザーはオンにして3カ月試用することができる。3カ月後に改めてオンにするかオフにするかを決定することになる。
つまり今回追加されたオプション機能を利用し、財政データをグーグルに保存するかどうかは個人の選択となる。グーグルに財政データへのアクセスを許すことを望まないユーザーも当然いるだろう。いずれにせよ、Google Payのその他の主要機能は変更されていない。クレジットカードからの支払いもできるし、スーパーなどでスマートフォンのNFC機能を使った支払いもできるのは以前と同様だ。
【編集部追記】11月19日現在、日本版最終更新は11月3日。
カテゴリー:フィンテック
タグ:Google、Google Pay
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)