オンライン決済のAffirm、宿泊施設シェアリングのAirbnbが上場申請(未訳記事)した直後というタイミングでRobloxが提出していたS-1上場申請書の内容が公開された。
Robloxが米国証券取引委員会(SEC)に申請書を提出したのは2020年10月中旬だったが内容はこれまで公開されていなかった。
ゲームエンジンのユニコーン(10億ドル超スタートアップ)としては2020年初めにUnityが上場しており、Robloxは2020年初めて株式を公開するゲームプラットフォームではない。上場後Unityの株は急上昇しているので、市場はRobloxの上場にも強い期待を抱いているはずだ。
ここではSECに提出された申請書に基づいてRobloxのビジネスの概要、これまでのベンチャーキャピタル調達、株式の所有者について解説してみる。申請書を精査して詳細がつかめればさらにレポートする。
財務の現状
Robloxは無料ゲームとそれらのゲームを開発するためのデベロッパープラットフォームだ。つまりユーザーはゲームやサービスにアクセスするために料金を払う必要はない。ただしRobuxとゲーム内通貨による課金とRoblox Premiumというサブスクリプションサービスがある。これらが同社の収入の大部分を占めている。
サードパーティのデベロッパーはRobloxのプラットフォーム上でゲームを製作できる。この仕組みは近年急拡大してきた。Robloxによると、2019年の第1から第3までの四半期のデベロッパー、クリエイターの収入合計は7220万ドル(約75億5000万円)だったが、2020年の同期間には2億9020万ドル(約303億4000万円)に急増している(TechCrunchは上場申請以前からRobloxの成功に注目して紹介してきた)。
Robloxは総収入も急成長を遂げており、2018年には139%増の3億1280万ドル(約327億円)、2019年には56%増の4億8820万ドル(約510億4000万円)となっている。さらに2020年の最初の3四半期では対前年比で68%アップの5億8870万ドル(約615億5000万円)となっている。
Robloxの規模の拡大は驚異的で、2020年には2019年よりも成長が加速している。同社はS-1申請書でパンデミックがむしろ追い風となったことを認めている。第1四半期にパンデミック由来の「急速な成長」が始まり、第2四半期と第3四半期では全面的に「新型コロナウイルス感染症による世界的なロックダウン政策の結果、ユーザーがいっそうオンライン化したことが(成長に)影響している」と述べている。
同社は、「今後の展望」について「収入の拡大速度は低下傾向となる」と警告している。パンデミックによるインフレを含む2020年の業績と比較すると「今後はブッキング(後述)、ユーザー数の成長が見られない可能性がある」としている。
現在のところ投資家がこの警告をどう受け止めるかは不明だが、Robloxの2020年の成長は並外れたものだった。例えば、ブッキング(同社の定義によれば「所定の期間における特定の非現金調整に影響を与えない販売活動」)は2018年に62%アップの4億9900万ドル(約521億7000万円)、2019年に39%アップの6億94300万ドル(約725億9000万円)、そして2020年の最初の3四半期には171%アップの12億4000万ドル(約1296億6000万円)に達している。
ともかくこの成長率はすごい。途方もない売上増はユーザーの関心の高まりを表している。Robloxは2020年の最初の9カ月間に「180カ国以上で平均DAU(1日あたりアクティブユーザー数)3110万人」を達成し、2019年の同時期の1710万から大幅に増加している。
Robloxプラットフォームを訪れる一般ユーザーの増加にともない利用時間も増加した。一般ユーザーの利用時間は2020年の最初の9カ月間に222億時間だったが、2020年の同時期に122%アップしている。DAUにカウントされるユーザーはプラットフォームで毎日平均2.67時間を費やしている。
ただしこの爆発的成長にもかかわらず、他の多数のユニコーン同様に、Robloxはまだ赤字だ。同社は2018年に9720万ドル(約101億7000万円)、2019年には8600万ドル(約89億9000万円)の損失を出している。赤字は2020年に急拡大しており、2019年の最初の第3四半期には4630万ドル(約48億4000万円)の赤字だったのに対し、2020年の同期は2億3320万ドル(243億9000万円)に膨れ上がっている。
2020年の赤字拡大の主因は、事業拡大に比例するコストの増加と、株式による報酬費用の増加したのようだ。
しかしGAAP基準の損益の数字から最初に受ける印象よりも、キャッシュフローはずっと良い状態にある。同社の営業キャッシュフローは、2019年最初の9カ月間に6260万ドル(約65億5000万円)だったのに対して2020年の同期は3億4530万ドル(約361億1000万円)に増加している。同期のフリーキャッシュフローは2019年に600万ドル(約6億3000万円)だったが、2020年は2億9260万ドル(約306億円)だった。
これらの数字は、Robloxのビジネスモデルのマーケットが巨大であり経済的に高い可能性があることを示している。ともかく株式公開は大勢のベンチャーキャピタリストに大金をもたらすはずだ。
既存株主
我々のCrunchbaseのデータによると、Robloxは非公開企業として3億3570万ドル(約351億円)を調達している。ラウンドをリードしたのはAltos Ventures、First Round Capital、Meritech、Index、Greylock、Tiger Global、Andreessen Horowitzだ。
Robloxは、上場に向けて約8億1000万ドル(約847億円)の現金および現金同等物を保有している。株式が公開されると、これまで流動性に乏しかった同社の株式は上場後は自由に換金できるようになる。投資家は株式を市場で売却できるようになる時点に向かってストップウォッチをスタートさせる。
S-1申請書は、誰がどれほどの株式を所有しているかを示している。つまり上場で最も利益を得るのは誰かなのかを推測できる。筆頭株主はAltos Venturesで、21.3%ないし1億1426万1961株を所有している。同社がRobloxのラウンドを何度もリードしてきたことを考えれば予想どおりといえる。Altosの後に10.3%を保有するMeritech Capital、9.9%を保有するIndex Ventures、7.3%を保有するTiger Global、6.3%を保有するFirst Round Capitalが続く。
Roblox経営陣の保有株数は合計で16.4%にすぎない。共同ファウンダーでCEOのDavid Baszucki(デビッド・バズースキ)氏は、6553万9773株を所有しているがこれは12%にあたる。Robloxのように巨額の資金を調達すると持ち分がいかに希釈化されるかよく表している。
数字以外の状況
RobloxhはS-1申請書で「我々の成功は子供たちに安全なオンライン環境を提供できるかどうかにかかっている」と述べている。それができなければ「ビジネスは劇的悪影響を受ける」という。
この言及は2018年に同社の提供するゲーム内で女の子のアバターがレイプされるという言語道断なハッキング被害(未訳記事)を受けたことを指すものだ。S-1によると同社の「プラットフォームを犯罪者が利用し子供たちをプラットフォーム外の犯罪者との交流に誘い込んでいる」などという疑惑が引き続き主張されるという。
「このような事態の発生を防ぐべく大量のリソースを費やしているがこうした試みのすべてを防ぐことはできない」としている。Robloxプラットフォーム上での通信は、「現時点」では暗号化されていないためデータのセキュリティ上の問題が起きる「リスクが増大している」と続けている。プラットフォームが子供向けゲームであるという点そのものがRobloxにとっての大きな弱点となっている。
ニューヨーク証券取引所のティッカーシンボルはRBLXを希望している。
【Japan編集部】当初英語記事には株式保有割合などに誤りがあったがアップデート済み。
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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Roblox、IPO
画像:Steve Jennings / Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)