【アウトドア銘品図鑑】
クルマのベースキャリアに取り付けるルーフトップテント。いかにも冒険者のクルマって感じがして憧れます。
でもカタログを見ると、ベースキャリアの最大積載量は50〜100kgで大人1〜2人分。テントを載せたら明らかに限度を超えてしまいます。これらのことからルーフトップテント導入を躊躇している人もいるのでは。
今年、キャリアメーカーの雄「THULE(スーリー)」より純正ルーフトップテント「スーリー テプイ エクスプローラー」シリーズが発売されました。
スーリーといえば、耐候性・衝撃・化学物質など考えられる限りの試験を繰り返し、安全性を確信した製品のみを世に送り出すことで知られています。
クルマ好きならピンとくるかもしれませんが、「テプイ」はアメリカのルーフトップテントメーカー。信頼性の高いルーフトップテントを作りたがっていたスーリーが、アメリカのトップブランドのこだわりに惚れ込み、共同開発したのがこのシリーズ。ヨーロッパの工場で作られています。
スーリーが満を持して投入したルーフトップテント。安全性と使い勝手への期待が高まりますが、ベースキャリアの最大積載量問題もあるし、ホントのところはどうなんでしょうか。
■積載できるクルマは
そもそもルーフトップテントをベースキャリアに積載して大丈夫なの? そんな不安をスーリーの代理店「阿部商会」の大畑広夢さんにぶつけてみました。
大畑さんによると、ベースキャリアの最大積載量は走行時を想定しているそう。高速道路で100km/hで走行するのと駐車時では条件が違いますからね。
「ルーフトップテントに乗り降りするためにはラダー(はしご)が必要です。このラダーが柱の役割も担っていて、テントや上に乗った人の荷重がクルマとラダーに分散されます。スーリーのラボではキャリア、テントともに試験を行っていて、ベースキャリアの最大積載量の3倍まで利用できるとしています。『スーリー テプイ エクスプローラー』シリーズを載せるには最大積載量75kg以上のクルマであることが条件になります」
対応するベースキャリアは今のところ「Thuleスクエアバー」「Thuleプロフェッショナルパー」「ThuleウィングパーEvo」「旧Thule ウイングバー」です。
*他にも「クランプ式及びウィングバーエッジタイプのベースキャリアに装着不可」「装着不可のベースキャリア:754、7105、Thule ウィングバーエッジ、Thule エッジ」などいくつかの条件があります。
クルマのルーフはそれぞれ強度が異なります。いくら強度の高いベースキャリアであっても、ルーフそのものの強度が足りないと事故を引き起こしかねません。最大積載量75kgのベースキャリアがあるからといって、適合表に載ってない車両に無理矢理取り付けるのは危険なんですね。
「自作ルーフトップテントや、ベースキャリアと別メーカーのテントを取り付けている人の中には、ベースキャリアを3本に増やせばいいとする人もいますが、単純にそれでいいとは言えません。注意してください」
そしてもうひとつ、車検について。
「ルーフトップテントは屋根に固定しているのではなく、ベースキャリアに専用金具で止めています。だからキャリアと同じ扱いで、基本的に装着したまま車検を通せます」
■テントを広げてみると…
ルーフトップテントを広げるには、ラダーを使ってテコの原理を利用します。複雑なフレームを組み立てることも、何本もの張り綱をペグで固定することもなく、とっても簡単でした。
収納時のサイズは107×122×H28cm、重量48kg。ソフトボックスを屋根の上に載せているようなイメージ。燃費には多少影響を与えそうですが、思った以上にコンパクトです。
では展開してみましょう。
クルマが傾いているとテントの床も斜めになるので、なるべく平らな地面を選びます。また、ラダーが風上になると急な強風であおられる危険があるので、風向きを考慮して駐車位置を決めます。
カバーを外して屋根の上にあるラダーを引っ張り出し、ぐいっと地面に向けてラダーを下ろすとテントがほぼ垂直に。
あとは、ラダーを持ちながらクルマと反対方向に進めば、勝手にテントが開きます。カバーを外し始めてから3分程度でここまでできました。
ラダーの角度を調整して、ラダーの端を地面に密着させます。テントの重量をラダーでも受け止めさせるので、地面から浮くようではアウト。
ちなみにラダーと地面の角度は最低60度にします。テントの壁面と角度がそろえばいいようです。
テントの中に収納されていたゴールドのポールを取り出し、出入り口と窓に取り付けます。
テントの中にはコードが張られています。これは畳む時にテントが広がることなくキレイに収めるためのもの。宿泊時は取り外して大丈夫。
完成です。畳んだテントの上にのっているラダーに手が届ければ、驚くほど簡単に設営できます。背の高いクルマは、脚立を用意しましょう。
■ポリコットン×メッシュ×別売マットで結露防止
ロッジ型テントのようなデザインの「スーリー テプイ エクスプローラー」は、中央が高くなっています。だから思ったより広く、圧迫感がありません。
使用時のサイズは213×122×H99cmで、室内高96cm。4面+屋根が開閉できるメッシュで風通しは良好。
ちなみに、ルーフトップテントを取り付けた車両はラダーの反対側にオーニングを取り付けていて、オーニング側の窓のフライを張り出せませんでした。それでもこの開放感! 雨の心配がない日はフライを取り外して、星空を眺めながら眠ってもいいですね。
テント本体は600Dポリコットンで耐紫外線・防かび加工済み。蒸し暑い夏もさわやかに過ごせます。
なお、いくら防かび加工を施しているといっても、乾燥させてから保管しないとほかのテント同様に嫌なニオイやカビの温床に。一般的なテントとは違い、パパッと広げて干せるのでこの手間を惜しんではダメ。
6.5cm厚の高密度マットレスが付属しています。より快適な眠りに誘う高密度オーバーレイマットレス「ラグジュアリーマットレス」も用意されているそうですよ。
オプションで「アンチコンデンセーションマット」を設定しています。写真のメッシュのマットがそれ。
湿気がたまりやすいマットの下にメッシュマットを敷いておくことで、湿気を排出しやすくなり結露を防ぐというわけです。マットの寿命を延ばすためにも用意しておきたいですね。
ルーフトップテントから下をのぞくとこんな感じ。Gクラスのような車高2000mm前後のクルマだと、怖がりさんが降りるときに最初の一歩をためらうかもしれませんが、車高1500mmほどのクルマであれば見晴らしのよさに感激するばかり。思ったほど揺れないし、ゆったり過ごせます。
オールシーズン対応テントではありますが、メッシュが多く、通気性のいいポリコットン製なので、冬は小型ポータブル電源と電気毛布を持ち込むなど工夫が必要かもしれません。
* * *
2人用テントと考えると値が張りますが、ポリコットンのテントは5〜6万円+極厚のキャンプ用マット3万円×2枚で12万円。硬い地面対応のペグやタフなハンマーも不要だし、何よりも設営があっという間。この手軽さはプライスレスです。使用頻度によりますが、結構オトクなのではないでしょうか。
唯一、スキー板など長尺物をルーフに載せられないのが気になりますが、たたんだテント内に荷物を入れられる「スーリー テプイ ハイボックス」が2021年に発売予定とのこと。荷物が多い人は登場を待ってみるのもいいですね。
>> スーリー(阿部商会)
<取材・文/大森弘恵>
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