ラウンドに関して知る情報筋によると、Discord(ディスコード)が新しい資金調達ラウンドを間もなく完了する。同社の価値は最大70億ドル(約7280億円)とみられる。DiscordはMUD(マルチユーザーダンジョン)ルームに関して21世紀の答えを提供した通信サービスだ。
同社を35億ドル(約3640億円)で評価した1億ドル(約104億円)の投資から今回の新しい資金調達までわずか数カ月しか経っていない。Discordの企業価値の倍増は、新型コロナウイルスのパンデミックに米国が一貫して不適切に対応したために、バーチャルソーシャルネットワーキングの場を創り出すビジネスの採用と成長が加速し続けたことが要因だ。
その動きはDiscordの爆発的な成長に表れている。2020年の月間アクティブユーザー数はほぼ2倍の1億2000万人に達し、同社は1日あたり80万件のダウンロードを記録した。また大人気のゲーム「Among Us」(The New York Times記事)のおかげで、人気議員であるAlexandria Ocasio-Cortez(アレクサンドリア・オカシオ・コルテス)氏から絶大な支持(未訳記事)を受けている。
Discordはゲーム業界で最初の成長を遂げた。若いゲーマー世代(現在、世界中で数十億人を超える)のオンラインの溜まり場として、初期のソーシャルネットワークに取って代わったマルチプレイヤー、マルチプラットフォームゲームの台頭によるものだ。
だが同社の創業者が直近の資金調達ラウンド発表時に指摘したように、Discordの用途はゲームコミュニティをはるかに超えている。
「多くの人にとって、それはもはや単にビデオゲームに止まらないということがわかりました」と、共同創業者のJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏とStanislav Vishnevskiy(スタニスラブ・ビシュネブスキー)氏は、直近の資金調達を発表した7月のブログ投稿で書いた。
2人は自身の会社を「あなた自身のコミュニティや友人と心地良さの中で話し、ぶらぶらするよう設計された場所」として捉えている。同社は、「話し合う、何かを学ぶ、アイデアを共有するなど、本物の会話をし、人々と充実した時間を過ごす場所」だと彼らはいう。
それがインターネットの初期のユーザーにとって馴染みがあるように聞こえるなら、それはそのものだからだ。WWW(ワールドワイドウェブ)の黎明期に、MUD(マルチユーザーダンジョン)は任意の数のサブカルチャーの実行者が、オンラインで互いを見つけ、共有する嗜好の対象についてチャットする方法を提供していた。
ウェブが進化するにつれて、会話が行われる場所とスペースの数も進化した。現在、ユーザーがウェブ内で互いを見つける多様な方法があるが、Discordは他のほとんどの方法を上回っているようだ。
アナリストのJohn Koetsier(ジョン・クーツィール)氏が2019年にフォーブスで述べたように、すでに2億5000万人のDiscordユーザーが1日に3億1500万件のメッセージを送信していた。これは同社のパンデミック前の数値であり、どの基準に照らしても印象的だ。
ウェブ上で人気が高まっている他のプラットフォームと同様に、Discordに弱点がないわけではない。同社は3年前、多数の極めて人種差別的なユーザーを追い出そうとしたが、プラットフォームを利用して悪意ある表現を広める動きはしつこく続いている(Slate記事)。
2019年半ばまで、白人至上主義者らはこのサービスを十分かつ快適に利用して、Daily Stormer(デイリーストーマー、極右ウェブサイト)の創設者であるAndrew Anglin(アンドリュー・アングリン)氏の声高な主張を正当化することができた。同氏は仲間にサービスの使用をやめるよう促した(archive.today投稿)。
「Discordは極右グループにとって常にそこにある存在であり、利用可能でもあります」とData & Society Research Instituteのメディア操作担当主任研究員であるJoan Donovan(ジョアン・ドノバン)氏は、2018年にSlateで語った。「極右グループが晒しや嫌がらせキャンペーンを組織的に行っている場所です」。
Crunchbaseによると、これまでにDiscordはGreylock、Index Ventures、Spark Capital、Tencent、Benchmarkを含む投資家グループから3億7930万ドル(約400億円)を調達した。
2020年初めに調達した資金に加えて、Discordは新しいユーザーエクスペリエンスを強化し、ユーザーがより簡単にコミュニケーションできるように(そしてZoomと競争できるように)ビデオ機能を追加した。ユーザーがサーバーを作成するテンプレートも提供される。同社は音声とビデオの容量を200%増やした。
このプロダクトにおける新たな取り組みの一環として、Discordは同社が「セーフティセンター」と称するものを立ち上げた。そこで同社の規程や規制、またヘイトスピーチや乱用にサービスが使われているかを監視・管理するためにユーザーが行使可能なアクションを明確に定義している。
「私たちは、白人至上主義者、人種差別主義者、その他の悪用目的でDiscordを利用しようとする人々に対して断固たる行動を取り続けます」と創業者は6月に書いた。
当時TechCrunchが報じたように、Index Venturesの共同創業者であるDanny Rimer(ダニー・ライマー)氏は、Discordのより広いビジョンの提唱者だった。同氏はDiscordの直近の1億ドル(約104億円)の現金注入に応じた投資家グループを率いた。
「私はDiscordがプラットフォームの未来だと思っています。なぜならDiscordは、責任を持ってキュレーションされたサイトが、共通の関心を持つ人々に安全なスペースを提供する方法を示しているからです」とライマー氏は声明で述べた(Index Ventures投稿)。「Facebook(フェイスブック)のように生のコンテンツをあなたに投げかけるのではなく、あなたとあなたの友人に共有体験を提供します。我々はやがて、Slackが職場で起こる会話に対して行ったことと同様に、Discordがソーシャルな会話に対して行ったことを評価するようになるでしょう」。
どうやら、投資家らはその評価に賭けようとしているようだ。
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タグ:Discord、資金調達
画像クレジット:Discord
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(翻訳:Mizoguchi)