中国外に居住する多くの中国人と同様、Derek Weng(ドレック・ウェン)氏は中国に帰国する時はいつも家族や友人から買い物を頼まれる。最も頼まれることが多いプロダクトはマタニティーアイテム、化粧品、そしてビタミンサプリメントだ。中国に住む多くの人が「輸入物の方が品質がいい」と考えている。
そうした需要からウェン氏はビジネスのアイデアを得た。米国の健康補助食品を自身と同じ中国のミレニアル世代にオンラインで販売しようと2018年にLemonBox(レモンボックス)を興した。同社はすぐにY Combinatorからシード資金を獲得し、そしてちょうど今週、250万ドル(約2億6000万円)のプレAラウンドの完了を発表した。同ラウンドはPanda Capital(パンダキャピタル)がリードし、Y Combinator(Yコンビネータ)が参加した。
LemonBoxは2つの点で他の輸入会社と差別化を図っている。求めやすい価格と、パーソナリゼーションだ。以前Walmart(ウォルマート)で中国輸入事業に関わっていたウェン氏はTechCrunchに対し、多くの米国サプリメーカーと知り合いで、これにより中間業者のコストを省くことができていると話した。
「中国ではほとんどのサプリメントは薬局やAmway(アムウェイ)のような連鎖販売取引企業を通じてかななりの利幅で販売されています。しかしビタミンは製造するのにさほどコストはかかりません。Amwayや同類の企業はマーケティングと販売にかなり金をかけています」
LemonBoxはWeChatベースのライト版アプリをつくった。ユーザーがアプリで自身の健康状態に関する質問に応えるとプロダクトのレコメンデーションが案内される。LemonBoxはボトルで販売するのではなく、毎日摂取するさまざまなサプリのパックを提供することでユーザーのニーズをカスタマイズしている。
「もしあなたがベジタリアンで旅行が多い、そして別の人はかなり喫煙するという場合、それぞれが必要とするものは全く異なります。私はビッグデータを使ってユーザーの処方箋をカスタマイズしたかったのです」とビジネススクールで人工知能を学んだウェン氏は説明した。
たとえばBコンプレックスタブレット30錠はLemonBoxでは35元(約560円)だ。Amwayの同様のプロダクトの120錠入りボトルはJD.comでは229元(約3650円)で販売されている。これは30錠あたりの価格にすると57元(約910円)になる。
安いビタミンを販売することはLemonBoxにとって、消費者を引き寄せ、中国のミレニアル世代の健康に関する洞察を得る手段にすぎない。洞察をもとに同社は品揃えを増やしたいと考えている。ウェン氏は同社の顧客規模を明らかにするのは却下したが、ユーザーコンバージョンレートは「たいていのeコマースサイトより高い」と述べた。
新たな資金でLemonBoxはシリコンバレー拠点のものに次ぐフルフィルメントセンターを深センの自由貿易地域に開所する。新型コロナウイルスで国際線フライトや国境をまたぐ貿易に混乱が生じるなか、サプライチェーンに安定をもたらすのが目的だ。さらに同社は健康関連の認証の確保と調達地域に日本を加えることにも資金をあてる。
ウェン氏が米国で暮らしていたここ10年ほどで中国のインターネットは激変し、主にAlibaba(アリババ)とTencent(テンセント)に支配された産業になった。ウェン氏は単に米国のD2Cモデルを中国で真似ることはできないと気づいた。
「米国ではウェブサイトを、そしてアプリも作るかもしれません。製品を販売するためにGoogle(グーグル)やFacebook(フェイスブック)、あるいはInstagram(インスタグラム)にあなたのサービスを埋め込むでしょう。全ての“大陸”が互いにつながっています」とウェン氏は述べた。
「中国では全く状況は異なります。第一に、多くの人はウェブブラウザを使いません。モバイルから接続しています。Baidu(バイドゥー)はGoogleほど人気ではありませんが、みなWeChatを使っています。WeChatはトラフィックの多い主要プラットフォームとは関係がありません」
かくしてLemonBoxは、ウェブ版の立ち上げやAlibabaのTmallマーケットプレイスへの出店など、WeChatストア以外での展開を模索している。
「学ぶべきことはたくさんあります。ゼロから学ぶような体験です」と同氏は話した。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:資金調達、eコマース、LemonBox
画像クレジット: LemonBox founder Derek Weng with Eric Migicovsky
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(翻訳:Mizoguchi)