創業者のMike Cagney(マイク・キャグニー)氏は常に限界を押し広げようとしており、そのため投資家は同氏を愛している。2011年に共同で創業した個人向け金融企業であるSoFiを、セクシャルハラスメントの申し立て(The New York Times記事)により辞めてからまだそれほど経たないうちに、同氏は(フィギュア)という新しい融資スタートアップのために5000万ドル(約52億円)を調達した。このスタートアップは、投資家から少なくとも2億2500万ドル(約230億円)を調達し、1年前には12億ドル(約1250億円)と評価された。
現在、キャグニー氏はFigureで前例のないことをしようとしている。ブロックチェーンを使用して、住宅担保ローンやその借り換え、学生および個人ローンの承認の迅速化を進めるという。同社は米国で商業銀行の認可を申請した。認可を受けてもFDIC(米連邦預金保険公社)の保証付き預金の受け入れは行わないが、適格投資家から25万ドル(約26億円)を超える無保険の預金を受け入れることができる。
なぜそれが重要なのか。American Bankerが説明しているように(American Banker記事)、このアプローチは規制上のメリットをもたらす。同サイトが米国時間12月2日に報じたように、「Figure Bankは保険付き預金を保有しないため、FDICの監督の対象にはならない。同様に保険付き預金がない場合、銀行持株会社法に基づくFRB(米連邦準備制度理事会)の監督も受けない。この法律は、銀行業以外の活動に制限を課しており、銀行業が本業ではないハイテク企業にとってはディールブレーカーになると広く考えられている」。
実際、もし承認されれば、Figureは多くのフィンテックスタートアップに道を開くことができる。FRBやFDICの監督を受けずに収益性の高い金融商品を扱って取引したい小売企業にも道が開かれる。そして非伝統的な銀行に対する認可を獲得することができる。
自身が所属する老舗のファイナンシャルアドバイザリーファームがFigureの申請を支援したMichelle Alt(ミシェル・アルト)氏は、American Bankerに次のように語った。「このモデルが承認されたとしても、すべての会社に適しているわけではありません。多くの銀行候補は、とりわけ強力な資金源を持つ銀行になりたいと考えています」。だが、それが成功すれば「多くの人々が興味を持つでしょう」と同氏は付け加えた。
どのような波及効果があるかは推測するしかないが、アマゾン銀行が出現したとしても同社をフォローしている人を驚かせることはないだろう。
一方、戦略はFigureのような小さな会社にとってハイリスク・ハイリターンの開発であるようにみえる。従来の銀行よりもはるかに自由に動けるが、同社の経営は自社または顧客のためのセーフティネットなし行われる。最も明白な危険は取り付け騒ぎだ。高金利でプラットフォームに資金を貸すことをいとわない適格個人が、同時に資金の返還を要求し始めれば取り付け騒ぎが起こり得るし、実際に起こる(The New York Times記事)。
いずれにせよキャグニー氏はBrian Brooks(ブライアン・ブルックス)氏と一緒に今すぐ受け入れてくれる聴衆を見つけるかもしれない。長年Fannie Mae(米連邦住宅抵当公庫)の幹部を務めたブルックス氏はCoinbaseの最高法務責任者を2年間務めた後、この春に米通貨監督庁(OCC)に移った。OCCは商業銀行と連邦貯蓄組合の安全かつ健全な方法での経営を保証する機関だ。
ブルックス氏は5月にOCCの責任者に任命され、この夏(The Wall Street Journal記事)にVaro Moneyに対しフィンテックへの最初の銀行認可の1つを出した。OCCは10月下旬、SoFiからの商業銀行認可の申請についても、予備的にかつ条件付きで承認した(Reuters記事)。
ブルックス氏はFigureの申請に関する憶測についてコメントしていないが、7月のブルッキングス研究所のイベント(Banking Dive記事)で、フィンテックや決済の会社に認可を付与する取り組みに関する業界団体からの懸念について次のようにコメントしたと伝えられている。「いくつかの業界団体が誤解していると思われるのは、どういうわけか、少ない義務しか負わない軽量版の認可を与えることになり、競争条件が不平等になるという点です。まったく正反対だと思います」。
業界団体であるIndependent Community Bankers of AmericaのエグゼクティブバイスプレジデントであるChristopher Cole(クリストファー・コール)氏は納得していない。今週初め、同氏はFigureの銀行認可の申請について懸念を表明し、ブルックス氏が「退任する前に迅速に承認したい」のではないかと疑っていると付け加えた。
おそらくそうだろう。ブルックス氏の残りの日は数えるほどになりそうだ。トランプ大統領から2020年11月、5年間の任期で連邦銀行規制当局を率いる立場に指名され(The Hill記事)、現在上院の承認を待っている。だが、次期バイデン政権をスローダウンさせることを目的としたこの動きは、次期大統領のジョー・バイデン氏によって取り消される可能性がある。バイデン氏は、OCCの責任者を自由に解任(The Hill記事)し、上院で候補者が確認されるまで代わりを任命することができる。
コール氏が示唆するのは、ブルックス氏にはそれでもFigureの今後の道筋を理解するのに十分な時間があるということだ。また、新しい認可申請が承認され、法的な問題にも持ちこたえられるなら、他の多くの企業にも同じことがいえる。
カテゴリー:フィンテック
タグ:Figure
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(翻訳:Mizoguchi)