日本の伝統技法を取り入れたセイコー プレザージュ
セイコー プレザージュがリブランディングを果たしたのは2011年のこと。長年培ってきた時計製造の伝統と現代のテクノロジーを融合するのみならず、日本の美意識を世界に向けて発信するフィロソフィーを掲げ、国内外にラインナップを展開するブランドとしてリローンチした。
ブランドは、プレステージラインとベーシックラインの2シリーズで展開。ベーシックラインが、自社製のムーブメントを搭載しながらもエントリーしやすいプライスを設定しているのに対し、プレステージラインは独創的なデザインやクリエイションを取り入れたラインナップ。それを象徴するのがダイアルで、琺瑯や漆、七宝に加え、2019年には有田焼も加わり、伝統技法によって生み出された美しいダイアルを堪能できるようになっている。
以前、この連載でセイコー プレザージュの「スタジオジブリ 紅の豚 コラボレーションモデル」を紹介したが、これも琺瑯ダイアルを採用したモデル。琺瑯職人の横澤満氏が監修を務めた艶やかかつ温かみのある質感が特徴で、よくあるアニメーション作品とのコラボモデルとは、明らかに一線を画す仕上がりだ。
日本古来の文様をモダンに表現した新シリーズ
「Sharp Edged Series」は、このプレステージラインに新しく加わったコレクション。そのデザインにおいて存在感を際立たせているのは、やはりダイアルだろう。ここで表現されているのは、日本の伝統的な柄である“麻の葉文様”。古くは平安時代より仏像の衣服に用いられ、やがて江戸時代になると、庶民の着物で流行した柄だ。作品の舞台は大正時代だが、『鬼滅の刃』の登場人物、竃戸禰豆子が着用する着物はまさにこの麻の葉文様。江戸時代の流行を機に、その後、定番化していったものなのだ。
しかも「Sharp Edged Series」においては、このパターンを平面のダイアルに描くのではなく、厚さわずか0.4mmの金属板に高低差を設け、立体的に表現している。つまりダイアルに光が当たると、その光は複雑な立体造形によって異なる方向へ反射し、平面のダイアルでは得られない独特の煌めきを放つというわけだ。
そのダイアルカラーは全4色をラインナップ。藍色がかった鉄色の“藍鉄(あいてつ)”をはじめ、光沢のある純白の練絹色“白練(しろねり)”、常緑樹の色を表現した“常盤(ときわ)”、そして茶褐色の竹の色を表した“煤竹(すすたけ)”という、いずれも日本の伝統色だ。藍鉄や常盤は、時計単体で見ると鮮やかなカラーに映るが、実際に装着してみるとその色合いは落ち着いており、スーツスタイルでは適度な存在感を示しながらも品よくまとまる。
そしてもう一点。シリーズ名が示すとおりの、シャープでエッジの効いたシルエットも特筆すべきポイントだ。ケースは平面を中心に構成。側面をポリッシュ、表面をサテンでそれぞれ仕上げることによってケースに立体感を生み出し、精悍な雰囲気を放っている。このケースが前述のダイアルと組み合わさることで、伝統のパターンを取り入れながらも決して古臭さを感じない、先鋭的なデザインを具現しているのだ。
古来より伝わる伝統技法に加え、伝統的な文様を現代の技術によってモダンに表現するセイコー プレザージュ。時計としての美しいデザインを楽しみつつ日本の伝統美にも触れられる、これぞまさに“カルチャーな腕時計”ではないだろうか。
セイコー プレザージュ
プレステージライン Sharp Edged Series
SARX077(左上)、SARX075(右上)、SARX079(左下)、SARX080(右下)
各11万円
問セイコーウオッチ●0120-061-012
https://www.seikowatches.com/jp-ja/products/presage
- Original:https://www.digimonostation.jp/0000132220/
- Source:デジモノステーション
- Author:竹石祐三