小型人工衛星が広い地域の水害状況をリアルタイムで観測。そのデータを保険・金融企業や政府機関などに提供するサービスが開始された。
合成開口レーダー衛星が詳細な情報収集
東京・江東区に本社を置くスタートアップ企業「Synspective(シンスペクティブ)」が開始したその情報提供サービス、名称は「Flood Damage Assessment Solution」という。
水害発生時に、広範囲な地域の詳細かつ最新の被害データ——例えば浸水域、浸水深、被害道路、被害建物の状況などを、Web上で提供するサブスクリプション型サービスだ。情報が混乱しがちな災害時に、事実に基づいた1次情報を最も必要とする政府機関、保険・金融企業などによる利用が見込まれている。
これまで一般的に、被災地の状況を把握するには飛行機やドローン、人工衛星からの写真映像が使われて来た。だが、水害の際は悪天候であることが多く、正確な情報を迅速に得ることが困難だ。「Flood Damage Assessment Solution」は、この問題を合成開口レーダー衛星を使うことで解決している。
合成開口レーダー衛星(SAR衛星)は、写真を撮るのでなく、雲などの影響を受けないマイクロ波を使ったレーダーで情報収集する。しかも、移動しながら観測したデータを重ね合わせ、仮想的に大口径のレーダーと同等の精度を実現するので、一般のレーダー衛星では不可能だった詳細なデータ収集が可能になる。
UR2020フォーラムのコンテストでトップ4に選出
この水害情報提供サービスは、災害時対応や危機管理をテーマにした国際フォーラム「Understanding Risk (UR)」で開催されたコンテスト「SSTL × The World Bank HADR Challenge」でトップ4に入り、ファイナリストとして選出されている。
このフォーラムは約180カ国の企業・団体が参加するもので、今回のコンテストはシンガポールの宇宙テクノロジー企業「Singapore Space and Technology Ltd」と、世界銀行が支援する「SEADRIF(東南アジア災害リスク保険ファシリティ)」が主催したもの。
- Original:https://techable.jp/archives/144654
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:信人安谷