リモートワークが今日のビジネスの重要な側面としての地位を確立し続けている中、企業向けにエンジニアのカテゴリーに特化してリモートスタッフの調達とオンボーディングを支援するプラットフォームを構築したスタートアップが、その需要に応えるため、さらなる資金調達を行っている。
遠隔地にいる有望なエンジニアを評価して企業に代わってマネジメントを行う、AIベースのプラットフォームを手がけるTurin(チューリング)が、WestBridge Capital(ウエストブリッジキャピタル)主導のシリーズBラウンドで3200万ドル(約33億円)を調達した。同社の計画は、対応する世界と同様に野心的だ。AIプラットフォームによって企業が成長のためにIT関連の人材を調達するための、未来の方法を定義するというものだ。
チューリング共同創設者兼CEOのJonathan Siddharth(ジョナサン・シダース)氏は、主要投資家について、先日のインタビューで「彼らはCognizant(コグニザント)やGlobalLogic(グローバルロジック)のようなグローバルITサービスへの投資に豊富な経験を有しています。彼らにとって、チューリングはそのモデルの反復だと私たちは考えています。ソフトウェアがITサービス業界を席巻すると、Accenture(アクセンチュア)はどうなるでしょうか?」。
同社のデータベースには現在、約18万人に上るエンジニアが登録されており、React、Node、Python、Agular、Swift、Android、Java、Rails、Golang、PHP、Vue、DevOps、機械学習、データエンジニアリングなどを含む約100種類のエンジニアリングスキルに対応できる。
ウエストブリッジに加えて、今回のラウンドにはFoundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)、Altair Capital(アルテイア・キャピタル)、Mindset Ventures(マインドセット・ベンチャーズ)、Frontier Ventures(フロンティア・ベンチャーズ)、Gaingels(ゲインジェルズ)などの投資家が名を連ねている。また、著名なエンジェル投資家が数多く参加しており、創設者自身が蓄積してきたネットワークが顕著に示されている。その中には、名前を明らかにしていないが、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Twitter(ツイッター)、Microsoft(マイクロソフト)、Snap(スナップ)などの幹部を始め、フェイスブック初のCTOであり現在はQuora(クオラ)のCEOを務めるAdam D’Angelo(アダム・ディアンジェロ)氏、Gokul Rajaram(ゴークル・ラジャラム)氏、Cyan Banister(サイアン・バニスター)氏、Scott Banister(スコット・バニスター)氏、Upwork(アップワーク)の創設者Beerud Sheth(ビーラッド・シェス)氏も含まれている(本記事の下に全リストを提供する)。
チューリングは評価額を公表していないが、ファウンデーション主導のシードラウンドで1400万ドル(約15億円)を調達したのが8月に過ぎないことがその勢いを示している。シダース氏によると、同社はその評価中に十分な成長を遂げており、評価額と関心の高さから、シリーズAを完全にスキップしてシリーズBに進んだという。
同社のプラットフォームに登録している開発者は、8月時の15万人から18万人とさらに数を増やし、その拠点は1万もの都市に広がっている。そのうち約5万人がチューリングのプラットフォーム上での自動審査を通過しており、今後はこうした人材を活用する企業の数をさらに増やすことに取り組む。
シダース氏はこの状況を「需要に束縛されている」と表現した。同時に、同社の収益は増加を続けており、顧客ベースも拡大している。収益は10月の950万ドル(約9億9000万円)から11月には1200万ドル(約12億5000万円)へと急増し、14か月前に一般公開されて以来17倍に達した。現在の顧客には、VillageMD(ビレッジMD)、Plume(プルーム)、Lambda School(ラムダスクール)、Ohi Tech(オーハイテック)、Proxy(プロキシ)、Carta Healthcare(カータヘルスケア)などがいる。
リモートワーク = 即時の機会
新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、多くの人がオフィスに出社することができなくなっている今日の状況の中で、リモートワークについて語られる機会も増えている。しかし実際には、もう何十年も前から、別の形でそのワークスタイルは存在してきた。
アクセンチュアやその他のシステムインテグレーターなど、サードパーティの支援によるオフショアリングとアウトソーシングの2つは、雇用、規模の拡大、場合によっては労働力そのものを縮小するために必要な運営コストを負担するのではなく、任意の機能を実行し、特定の分野を構築するこれらのサードパーティに一定の金額を支払うことによって企業の事業規模の拡大と運営を推進する方法である。
チューリングは実質的に両方のコンセプトを採用している。エンジニアに特化した人材チームの調達を代行し、チームを運用する新しい方法を創出した。その一方で、事業立ち上げの昨年来、この機会を活用して、以前はオフィスに人材を派遣することを強く希望していたであろうエンジニアリングマネージャーなどに対して、リモートで働いてもオフィスにいる場合と同様の生産性を維持できるという意識の変換を促している。
シダース氏と、共同創設者でCTOを務めるVijay Krishnan(ヴィジェイ・クリシュナン)氏は、その背景を十分認識している。両氏ともインド出身で、最初は学生としてシリコンバレーに移り住み(スタンフォード大学の大学院を修了している)、その後働いている。当時は、彼らのような野心家にとって、大規模でグローバルなテクノロジー企業に就職したり、スタートアップ企業を立ち上げたりするためには、事実上シリコンバレーに移住することが唯一の選択肢だった。
シダース氏は今年初め、その状況について「才能は普遍的なものですが、機会はそうではありませんから」と筆者に語った。
過去に両氏が共同設立したスタートアップであるコンテンツ発見アプリRoverは、市場のギャップを浮き彫りにした。遠隔地に分散したエンジニアチームを中心にスタートアップを構築したことで、コストを抑えながら優秀な人材を確保することができた。その間、ライバルたちはシリコンバレーでチームを構築していた。「パロアルトや周辺地域の競合他社は多額の現金を投じていましたが、状況は悪化するばかりです。給与水準が急上昇しましたから」と同氏は言う。
TaboolaやOutbrainなどと競合するレコメンドプラットフォームRevcontentにRoverを売却した後、両氏は、かつて自分たちがスタートアップを築きあげた方法に基づいて、新たなスタートアップを築くことに目を向けた。
リモートで働く機会のさまざまな側面を活用して人材の調達と管理方法に取り組む企業は、数多く存在する。
そうした企業には、11月に3500万ドルを調達したRemote(リモート)、9月に3000万ドルを調達したDeel(ディール)、同様に9月に4000万ドルを調達したPapaya Global(パパイヤグローバル)、7月に4500万ドルを調達したLattice(ラティス)、4月に1600万ドルを調達したFactorial(ファクトリアル)などが挙げられる。
チューリングの興味深いところは、新しい人材を見つけるためのさまざまな段階に対応し、サービスを提供しようとしているところだ。まず、AIプラットフォームを使って候補者の情報を集め、精査する。そして、機会と人材をマッチングし、そのエンジニアのオンボーディングを行う。彼らの仕事と生産性を安全な方法で管理する手助けをし、請負業者、あるいは将来的にはフルタイムのリモート従業員として、最も準拠した方法で労働者を管理する最善の方法についてガイダンスを提供する。
同社はフリーミアムではないが、プロジェクトにコミットする前に2週間の試用期間を与える。チューリングは、アクセンチュアとは異なり、ある程度の弾力性を顧客に約束するのではなく、自社製品に持たせようとしている。
今では素晴らしいアイデアに思えるが、印象的なことに、このアイデアが本格的に軌道に乗り始めたのは、今年の3~4月ごろにリモートワークが一般的になってからだ。
ウエストブリッジキャピタルのマネージングディレクター、Sumir Chadha(スミル・チャダ)氏は、インタビューで、「コロナ禍がもたらしたことには驚かされます。それはチューリングにとって大きな機運となりました」と語っている。さらに、テクノロジーチームを立ち上げようとしている人たちにとって、「もはやエンジニアを見つけて顧客にマッチングする労力は不要になりました。これらはすべてクラウドでできるのです」とも述べている。
アルテイア・キャピタルのマネージングパートナー、Igor Ryabenkii(イゴール・リャベンキー)氏は声明の中で「チューリングのビジネスモデルは非常に興味深く、今の時節においてはとりわけ重要です。世界中の優れた人材にアクセスでき、適切に管理されたコスト効率の高いサービスの提供は、多くの企業にとって魅力的です。創設チームのエネルギーは同社に急速な成長をもたらし、Bラウンド後、その成長はさらに加速するでしょう」と述べている。
追伸:前述したように、今回のラウンドの完全なる長い投資家リストを掲載する。コロナ禍の時代において、今後しばらくの間はこれが最大のリストの1つとなるだろう。上記で既に挙げた投資家に続く、深いため息が出るほど長い一覧は次のとおり。Founders Fund(ファウンダーズファンド)、Chapter One Ventures(チャプターワンベンチャーズ)のJeff Morris Jr.(ジェフ・モーリス・Jr.)氏、Plug and Play Tech Ventures(プラグアンドプレイテックベンチャー)のSaeed Amidi(サイード・アミディ氏)、UpHonest Capital(アップオネストキャピタル)のWei Guo(ウェイ・グオ)氏、Ellen Ma(エレン・マー)氏、Ideas & Capital(アイディアズアンドキャピタル)のXavier Ponce de León(ハビエル・ポンセ・デ・レオン)氏、500 Startups Vietnam(500スタートアップス・ベトナム)のBinh Tran(ビン・トラン)氏、Eddie Thai(エディー・タイ)氏、Canvas Ventures(キャンバスベンチャーズ)のGary Little(ゲイリー・リトル)氏、B Capital(Bキャピタル)のKaren Appleton Page(カレン・アップルトン・ペイジ)氏、Kabir Narang(カビール・ナラン)氏、Peak State Ventures(ピークステートベンチャーズ)のBryan Ciambella(ブライアン・キャンベラ)氏、Seva Zakharov(セーバ・ザハロフ)氏)、Stanford StartX Fund(スタンフォードスタートエックスファンド)、Amino Capital(アミノキャピタル)、Spike Ventures(スパイクベンチャーズ)、Visary Capital(ビサリーキャピタル)のFaizan Khan(フェイザン・カーン)氏、Brainstorm Ventures(ブレインストームベンチャーズ)のAriel Jaduszliwer(アリエル・ジャドゥスリワー)氏、Dmitry Chernyak(ディミトリ―・チェリニャック)氏、Lorenzo Thione(ロレンゾ・ティオーネ)氏、Shariq Rizvi(シャリク・リズビ)氏、Siqi Chen(スィーキー・チェン)氏、Yi Ding(イー・ディン)氏、Sunil Rajaraman(スニル・ラジャラマン)氏、Parakram Khandpur(パラクラム・カンドプール)氏、Kintan Brahmbhatt(キンタン・ブランバット)氏、Cameron Drummond(キャメロン・ドラモンド)氏、Kevin Moore(ケビン・ムーア)氏、Sundeep Ahuja(サンディープ・アフジャ)氏、Auren Hoffman(オーレン・ホフマン)氏、Greg Back(グレッグ・ベック)氏、Sean Foote(ショーン・フット)氏、Kelly Graziadei(ケリー・グラジアデイ)氏、Bobby Balachandran(ボビー・ブラキャンドラン)氏、Ajith Samuel(アジス・サムエル)氏、Aakash Dhuna(アカーシュ・ドゥーナ)氏、Adam Canady(アダム・キャンディ)氏、Steffen Nauman(ステフェン・ニューマン)氏、Sybille Nauman(シビル・ニューマン)氏、Eric Cohen(エリック・コーエン)氏、Vlad V(ブラッド・V)氏、Marat Kichikov(マラット・キチコフ)氏、Piyush Prahladka(ピユーシュ・プララドカ)氏、Manas Joglekar(モナス・ジョーグレイカー)氏、Vladimir Khristenko(ウラジミール・クリステンコ)氏、Tim/Melinda Thompson(ティム/メリンダ・トンプソン)氏、Alexandr Katalov(アレクサンダー・カタロフ)氏、Joseph/Lea Anne Ng(ジョセフ/リーアン・イング)氏、Jed Ng(ジェド・イング)氏、Eric Bunting(エリック・バンティング)氏、Rafael Carmona(ラファエル・カルモナ)氏、Jorge Carmona(ホルヘ・カルモナ)氏、Viacheslav Turpanov(ビチャスラフ・トゥルパノフ)氏、James Borow(ジェームス・ボロー)氏、Ray Carroll(レイ・キャロル)氏、Suzanne Fletcher(スザンヌ・フレッチャー)氏、Denis Beloglazov(デニス・ベログラゾフ)氏、Tigran Nazaretian(ティグラン・ナザレティアン)氏、Andrew Kamotskiy(アンドリュー・カモツキー)氏、Ilya Poz(イルヤ・ポズ)氏、Natalia Shkirtil(ナタリア・シキルティル)氏、Ludmila Khrapchenko(ルドミラ・クラプチェンコ)氏、Ustavshchikov Sergey(ウスタブシチコフ・セルゲイ)氏、Maxim Matcin(マキシム・マッチン)氏、Peggy Ferrell(ペギー・フェレル)氏。
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タグ:リモートワーク 資金調達
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(翻訳:Dragonfly)