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アウトドアズマンが憧れたダナー

くたびれたこの靴、1932年創業の米・ダナー(Danner)の「ダナーライト3 ロー」である。2012年にダナーを取り扱うラクロス・フットウェア社(オレゴン州)が日本のABCマートに買収され、以来、日本全国にあるABCマート各店舗で安価な新しいダナーが買えるようになった。アウトドアズマンの憧れだったダナーが、手軽に買えるようになったのはとても良いことだと思う。その反面、質実剛健で、どこか頑固な職人を思わせる従来のダナーっぽさはだいぶ薄れた。写真のダナーライト3 ローは、ABCマートによる買収前のもの。ラクロス・フットウェア社がダナースピリットを継承し続けた一足だ。

購入したのはおそらく10年、15年前だと思う。当時ダナーはセレクトショップや専門店にしか置かれていなかった。買ったのは神保町のミマツ靴屋。戦後から続く老舗で、トラッドな革靴からアメリカンカジュアルなブーツまで幅広く揃う。ダナーがABCマートになってからお店に置かれなくなったのは、これまでのダナーとは違うからだろう。

ダナーと言えばゴアテックス、ビブラムソール。防水かつ耐久性があって、長く履けるのが特徴だ。この靴もソールを張り替えたりして、何度も修理しながら履いてきた。途中シューレースにあった金具を失くしたのは非常に惜しまれる。

現行のABCマート版、ダナーのローカットシューズ「シャドーウッド2」(1万2800円)は、ゴアテックスでもビブラムソールでもないが、その分、価格を抑えて、なおかつ最初から革が柔らかく足馴染みが良い。古い、ダナーらしいダナーを探している人は在庫が残っているショップを探せばまだ手に入る。最初から履きやすいダナーならばABCマートに行けばOK。新旧どちらもダナーには変わりない。

 

旅慣れしている人が選ぶ、
97Lキャリー

THE NORTH FACEのキャリーバッグと言えば、赤いウィールが特徴的。スーツケースタイプの「ローリングサンダー」シリーズが定番中の定番だが、あえて「BCローリングダッフル」を推したい。

キャリーバッグのようにハンドルを引き上げることはできず、持ち手はナイロンの固定式だが、ショルダーハーネスが備わっているのでザックのように背負うことができる。「引く」「背負る」をシーンによって使い分けできるのが特徴だ。旅慣れしている人ほど、このBCローリングダッフルを選ぶのにはわけがある。

日本は道路が補整されてて、主要駅にはエスカレーターがあり、スーツケースを持っての移動が容易だが、海外だとそうもいかない。ターミナル駅でさえエスカレーターの数が十分になかったり、地上に出るにはどこかで階段を使う必要があるなど、日本のあたりまえは通用しない。また、歩道も凸凹したところが多く、ウィールが小さなスーツケースだとバランスを崩すことも。バックパックならば背負って移動すればいいので悪路も関係ないが、ずっと背負っているととても疲れる。そこで背負えるウィール付きバッグが重宝するというわけ。

補整された道やビルのなかではウィールを転がして、階段などでは背負えばOK。97L入る大容量サイズは1週間程度の旅にも対応し、1000デニールのTPEファブリック生地は防水性と耐久性に優れた仕様だ。横にして、ジッパーを大きく開けられるので、庫内へのアクセスもしやすく、荷物の整理も簡単。まさに、スーツケースとザックの良いところ取り。ただし、大きくタフな分、重さ2,690gあるので、登山で使おうとは思わないこと。バックパック旅の相棒としておすすめしたい。

 

THEのスウェットを一年着てみてわかったこと

本誌の特集で「THE」を取り上げたのは2019年10月のこと(12月号)。取材先で実際に見て聞いた丁寧な仕事ぶりに共感し、すぐに購入したのが写真の「スウェット クルーネックプルオーバー」だ。以来一年間、あらゆるシーンで着てきた。秋冬の寒い時期は防寒着として活躍し、春夏はTシャツにプラス1枚として重宝する。一年通して使い勝手が良いTHEのスウェット。紡績は和歌山県で、生地作りは新潟県、縫製は青森県と、日本各地の職人たちによる高い水準のリレーで出来ている。

THEのスウェットは柔らかくて伸縮性があり、型崩れしないのが特徴。それでいて肌触りがよく、大きく動いても突っ張ることはない。これだけの高い品質を実現するためには驚くほどの時間がかかっている。

糸をつくるだけで通常1か月のところを3か月かけて、糸にかかるストレスをできるだけ省く。じっくりと時間をかけて作られた糸は綿本来の状態に近く、天然素材のふわふわ感そのもの。生地作りには吊り編み機を使用し、1か月でスウェット100着分しか作れないほどだ。それだけ希少な素材を使い、青森の工場でひとつひとつ手仕事で形になっていく。このとき用いられるパターンには動体裁断・動体縫製技術が取り入れられており、同技術は宇宙飛行士の船内被服としても使われているもの。動きやすさはJAXAの折り紙付きだ。

THEのスウェットは一着1万9800円という高価格帯だが、それは時間と人の手がかかっているから。その過程を知ると十分納得できる。一年着てみてわかったこと。ひとつ持っているとヘビーローテになるほど着倒してしまう。それでもへたることなく、着心地そのまま型崩れもしないのは流石だ。

 

一生着られるワックスドクロスコート

創業1894年、イングランド北東部の港町サウス・シールズで生まれたブランドは、一世紀以上経った今も定番ジャケットとして世界中で愛されている。バウアーと言えばワックス仕立てのコートがあまりにも有名。元々、港湾労働者のために作られたワークウェアで、防水・防風性能の高さから人気を博した。その後、モーターレースのライダースジャケットとしてもバブワーの製品は用いられるようになり、時を経て、乗馬用、狩猟用モデルが登場。今ではスタンダードモデルとしてこの2種類がブランドの顔になっている。

「ビューフォート」はハンティングジャケットだが、街着としても人気で、トラッドはもちろん、カジュアルな服装にもよく合う。インナーやフードをオプションで付けることができ、イギリス人がフードをかぶって雨を防ぐのをよく見かける(同国では傘を差さない人が多い)。

20年ほど前に購入したジャケットは、オフシーズンに専用のワックスを薄く塗って保管するのが毎年の儀式。洗濯機は使わず汚れはふき取るだけ。経年劣化が気になるわけでもなく、使い込まれた表面に味わいを感じる。それでも汚れたり、破損したりした場合はブランド認定の株式会社ラヴァレックス(仙台市)がクリーニングとリワックス、修繕等のメンテナンスを受けてくれるから安心だ。

アフターサービスがしっかりしているので、ダメージや汚れを気にせず着ることができる。変わらぬデザインは世代を超えても古く感じることはなく、若いうちに着ても、年を取ってから着ても違和感はない。バウアーオーナーの多くが「一生モノ」と言うのも頷ける。

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