【2020年注目ジャンル総まとめ】
数年前から市場を席巻しているe-Bike(イーバイク)と呼ばれるスポーツタイプの電動アシスト自転車。元々は日本で生まれた乗り物ですが、海外に渡って人気が爆発し、e-Bikeという呼び名とともに日本にもその波が戻ってきたようなかたちです。
そんなe-Bikeが、昨今の自転車通勤の需要増もあり、すごい勢いで販売台数を伸ばしています。ブランドによっては昨年比200%なんて数字も聞くくらい。2020年はe-Bikeの普及元年とも呼べそうです。そんな年に発売された注目モデルを5台ピックアップして、1年を振り返ってみましょう。
1. カーボンフレーム&前後フルサスのTREK「Rail 9.7」
前述のように、e-Bikeは海外で進化した歴史があるため、どうしても国内で販売されているモデルは、海外に比べるとスペック的に見劣りする部分がありました。そんな状況を払拭したのがTREK(トレック)の「Rail(レイル)9.7」(79万円/税別)。カーボン製のフレームに前後サスペンションを装備した海外でも人気の高い“フルサス”と呼ばれる電動アシスト付きのマウンテンバイク(e-MTB)です。
e-Bike向けのドライブユニットではトップシェアを誇るBOSH製のPerformance Line CXというトップグレードのユニットを搭載し、500Whのバッテリー(2021年モデルは625Wh)を装備。最大140kmのアシスト走行が可能になっています。バッテリーがインチューブ式と呼ばれるフレーム内蔵型となり、一見しただけではe-Bikeとわからないようなスマートなシルエットとなりました。
前後のサスペンションはフロント160mm、リア150mmのトラベル量を確保。強力なアシストとの組み合わせで、走れないところはないんじゃないか? と思えるスペックです。それでいて重量は21.83 kgと、一昔前のダウンヒルモデルくらいの重さに抑えられています。高価格ながら、あっという間に完売してしまったことからも、このモデルを待ち望んでいた人がどれだけいたかが伝わってきます。
2. 電動アシストの元祖メーカー・ヤマハの面目躍如「YPJ-MT Pro」
もちろん、国産メーカーも負けてはいません。電動アシスト自転車の生みの親であるヤマハもフルサスのe-MTB、「YPJ-MT Pro」(66万円)をリリースしました。こちらはアルミフレームですが、エンジン付きのバイクに用いられるツインチューブフレームをイメージしたDual Twin構造を採用。バイク好きならグッとくる造形が随所に施されています。
e-MTBの心臓部であるドライブユニットは自社製のPW-X2。軽量・コンパクトで、ペダルを踏んだ際のレスポンスに優れたユニットです。一般に装備されるスピード、クランク回転、ペダリングトルクのほかに、傾斜角のセンサーを加え、山道でパワフルなアシストを実現しています。
ホイール径は27.5インチと海外モデルに比べると小径で、日本人向けのコンパクトな設計。細い道が多い国内の里山を走るのにも適しています。それでいて、激しい下り坂を攻めるにも十分な性能を持っているので、これからe-MTBに乗ってみたいという人には最適な1台です。
3. e-Bikeの黒船、スペシャライズド「TURBO CREO SL」
これまでもドロップハンドルを装備したロードバイクタイプのe-Bikeは国内でも販売されていましたが、今年リリースされ“黒船”として注目されたのがスペシャライズドの「TURBO CREO(ターボ クレオ)SL」シリーズ(55万円~/税別)。自社開発のドライブユニットと、320Whという少し容量の小さいバッテリーを採用することで、トップグレードの「S-WORKS TURBO CREO SL」では12.2kgという軽さを実現しています。
従来のロードバイクタイプのe-Bikeは16kg台でしたから、12.2kgというのは驚愕の軽さ。これを実現しているのは、フレームやホイールが軽量なカーボン製とされていることもありますが、小さめのバッテリーと最大トルクを抑え、マグネシウムなどを多用したドライブユニットを採用しているから。アシストをやや抑えることで、車体を軽量に仕上げ、その軽さが電力消費を低減するので最長130kmというアシスト距離を実現しています。
実際に乗ってみると、アシストの最大トルク値が低いことのデメリットはほとんど感じません。ペダルの回転数(ケイデンス)を上げていった際の最大出力は既存のモデルとほぼ同等なので、ロードバイクらしいケイデンスが高めの乗り方をすればアシストは十分に活かせます。そして車体の軽さというメリットは大きく、時速24kmでアシストがゼロになった後も、グングン加速していける感じ。時速30km以上での巡航も余裕で可能でした。
軽くて速くて登り坂ではアシストも使えるというロードバイク乗りの夢を具現化したようなモデル。ハードルになるのはトップグレードで170万5000円(税別 2021年モデル)、最も安いアルミフレームのモデルで55万円という価格くらいでしょうか。
4. 前後にサスペンションを装備したキャノンデール「Topstone Neo Carbon Lefty 3」
ロードバイクの世界では、太めのタイヤで未舗装路も走れる“グラベルロード”と呼ばれるジャンルが人気ですが、そのカテゴリーで高い人気を誇るのがキャノンデール「Topstone」シリーズ。前後にサスペンション機構を装備し、ちょっとした凸凹道なら何事もなかったように走れてしまう走破性がポイントですが、そのe-Bikeバージョンが「Topstone Neo Carbon Lefty 3」(66万円/税別)です。
ドライブユニットはBOSH製のPerformance Line CX。バッテリーはインチューブ式の500Whタイプで、アシスト可能な距離は最長170kmにおよびます。タイヤはオフロードも走行できる650×47Cのブロックタイプで、舗装路はもちろん、ちょっとした山道まであらゆるシーンを楽しめるモデルです。
実際に走ってみると、前後サスペンションの効果は大きく、未舗装路を舗装路のように走れます。舗装路もアシストがあるおかげで、普通のロードバイクより楽に走れます。MTBコースも走破できてしまう性能を秘めているので、遊びのフィールドを一気に広げてくれそうですね。税別66万円という価格も、対応するシーンの広さを考えると安く感じてくるほどです。
5. 近距離通勤に最適なVOTANI「H3」
ここまではエポックメイキングな機能を搭載したハイエンドモデルを中心に紹介してきましたが、価格を抑えて通勤などに使えるモデルも充実してきています。その代表がVOTANI(ボターニ)「H3」(13万2000円/税別)。e-Bike専業メーカーのBESV(ベスビー)が手掛ける街乗り向けの新ブランドで、ママチャリタイプの電動アシスト自転車+αの価格で購入できます。
前後20インチタイヤを採用したミニベロ(小径車)で、モーターは前輪の車軸と一体化したタイプ。BESVの技術を採用したオートアシストモードは、ペダルを踏む力を感知して最適なアシストをしてくれるので、とても走りやすい。登り坂でも十分なパワーを発揮し、アシスト可能な距離は最大80kmです。近距離の自転車通勤なら十分な容量ですね。
スーツで乗ってもサマになるようなカラーリングで、車体の中央にはビジネスバッグがちょうど収まるようなバスケットを装備。フロントにはサスペンションも搭載し、小径のタイヤで気になる段差の乗り越え性能も確保しています。通勤には最適のモデルといえそうです。
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e-MTBからロードバイク、ミニベロまでラインナップが揃い、まさに普及元年といえる勢いですが、実は世界的にe-Bike人気は高まっているため、販売できる車体が品薄な状況。初期ロットは入ってきても次の入荷はいつになるかわからないような状態なので、気になるモデルを店頭で見つけたら、即購入しておいたほうが良さそうです。
<取材・文/増谷茂樹>
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- Original:https://www.goodspress.jp/features/344982/
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