MeWe(ミーウィ)、CloutHub(クラウトハブ)をはじめとするテック巨人に取って代わろうとするソーシャルメディアがアプリストアの上位を占めている。最近、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領がFacebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)などの主要ソーシャルプラットフォームから追放され、直近では保守系ソーシャルアプリのParler(パーラー)がApple(アップル)App StoreとGoogle Playの両方から削除された結果だ。Parlerが削除されて以来「free speech(言論の自由)」を謳うソーシャルネットワークが急速にダウンロード数を伸ばしている。
2012年5月にスタートした次世代ソーシャルネットワークのMeWeは、その中でも最大の新規インストール数増加となっている。
このアプリは米国大統領選挙とそれを巡るFacebookやTwitterといった巨大プラットフォームによる誤情報管理が始まって以来、安定した成長を続けている。主要ソーシャルネットワークは自社のポリシーを強制し、 新たなルールを作ってまでトランプ氏とその支持者がシェアするコンテンツを制御しようとした。そこには、選挙に不正があったという、数十件の訴訟にも関わらず立証されていない彼らの根拠なき主張も含まれている。
現在までにMeWeは世界で1600万回インストールされていると、アプリ調査会社のApptopia(アップトピア)は報告している。しかし、米国時間1月6日以降だけみてもアプリは世界で20万回近くダウンロードされている。新規ダウンロードの大部分は米国ユーザーによるもので、14万3000回近くを数える。
そのユーザーの大半は、ParlerがAppleのApp Storeを追われた結果MeWeにやってきた人々だ。同社は米国時間1月9日土曜日にPartlerを排除し、その結果MeWeのランクは急上昇した。土曜日と日曜日だけで、MeWeの米国における新規インストール数は11万200回に達した。
同社が本誌に伝えたところによると、直近の72時間で100万人のメンバーが新規登録し、その後も1時間あたり2万人以上の新規メンバーが増えている。
App Storeのトップチャートは、ダウンロード総数だけでなく新規インストールの速度も反映しているため、MeWeは最近のトレンドを受けて非常にすばやくトップ10に躍り出た。
米国時間1月10日時点で、MeWeは米国App Storeの無料アプリ部門で7位にランクされていた。11日にはすでにそれを上回っている。
これは、2020年10月にはApp Storeのトップチャートに名前すらなかった非主流のソーシャルアプリとしては異例の伸びだ(ランク外というのは1500位以下で、事実上順位の追跡が不可能という意味だ)。ただしMeWeは、その期間にソーシャルネットワーク部門でチャート入りしたことはあった。
Parler禁止を含め最近の出来事の恩恵を受けているもう1つのアプリが、比較的新参のCloutHubだ。
2019年1月にスタートしたこのアプリは、「社会・市民・政治ネットワーク」のための言論の自由を切り口としたソーシャルネットワークと自称している。同サービスのウェブサイトには、「誰もが自分の考えを主張できる場」を提供したいと書かれている。
現在までのCloutHubの有効インストール数は25万5000回にすぎないが、先週、正確には米国時間1月6日以降だけで3万1000回以上増えている(CloutHubは新規ユーザーの急増に苦闘しているようで、新規登録やログインがしばしばタイムアウトになった)。アプリは米国App Storeで現在11位にランクされている。
トップチャートに入った次の2つのアプリは名前間違いのためだ。
Mashable(マッシャブル)の最新記事は、「Parlor」という名前のアプリが、禁止された「Parler」 と間違えられていると報じている。記事に引用されているSensor Towerのデータによると「Parlor」は12月だけで4万回ダウンロードされている。
Apptopiaによると、このソーシャルチャットアプリは2011年5月にスタートし、全世界のダウンロード数は860万回だ。しかし米国時間1月6日から1月10日までだけで、11万5846人の新規ユーザーを獲得した。その多くは「Parler」を探していたと思われる。そのうちの9万9220人以上が9日と10日に登録しており、Parlerの削除が始まった時期と一致する。AppleがParlerに対する措置を講じたのは米国時間1月9日の遅くだったが、スペル違いで「Parlor」に遭遇したユーザーはたくさんいただろう。
1月10日時点で「Parlor」 は米国iOSアプリ全体トップチャートのナンバー4になっている。
一方、「Gab News(ギャブニューズ)」というアプリは、ワシントンD.C.、ジョージタウン地区専門のローカルニュースアプリであるにも関わらず、流行している。これは、以前のParlerユーザーが代替として推奨していた「Gab」というずっと前に禁止されたアプリと間違えたためだ。Appleは2016年にポルノコンテンツを理由にGabの配布を拒否し、後にヘイトスピーチを含むアプリの提供を禁止するポリシーのために再度拒否した。Gabは2017年にGoogle Playで公開することができたが、すぐに同じくヘイトスピーチを理由に削除されている。
しかし、「Gab News」は本稿執筆時点でApp Storeトップ無料アプリチャートの44位に入っている(ダウンロード数は入手できなかった)。
次はRumble(ランブル)という保守派のためのYouTube相当品だ。このアプリは2020年1月に公開して以来、全世界で240万回インストールされたとApptopiaは推計している。米国時間1月6日以降、9万1916回の新規ダウンロードがあり、そのうち7万3700回以上が米国内だった。これも米国App Storeで78位となり、2020年12月19日の1484位から急上昇した。
ただし、一連の動きのきっかけになったのはParlerの禁止だけではないことをいっておかなければならないだろう。
大型テック企業に対する反発は常に存在しており、力が大きくなりすぎた、と党派を問わず多くの人たちが感じている。
政府は2020年以降、Apple、Google、Facebookといった企業について、ビジネスモデルや業務慣行を反トラストの視点から全世界の市場で調査している。FacebookとGoogleは、プライバシー方針についてユーザーからも監視の目を向けられている。特にAppleが、全アプリにユーザーデータの扱い方を開示するプライバシーラベルを付加することを各社に義務付けて以降、いっそう圧力が高まった。
その結果、一部の人たちは自分が保守派であるからだけでなく、プライバシーを重視しているという理由で代替ネットワーキングアプリに目を向け始めた。その結果、Signal(シグナル)やTelegram(テレグラム)といった暗号化メッセージングアプリや、Googleに代わる検索エンジンであるDuckDuckGo(ダックダックゴー)が最近人気を呼んでいる。
これらのアプリもこの1週間で勢いを増した。Signalは現在米国App Storeの第1位であり、Telegramが2位、DuckDuckGoは8位だ。2020年10月中頃、それぞれの順位は618位、79位、715位だった。Apptopiaによる。DuckDuckGoは2019年から2020年にかけて前年比62%成長し、米国、英国、カナダ、オーストラリアで第2位の検索エンジンになったことも本誌に伝えている。
米議会議事堂の暴動を受け、FBIが反乱者の逮捕を始めたことで、プライベートメッセージングプラットフォームを探しているユーザーがいることも注目に値する。Signalは米国時間1月7日以来、32万5000人の新規インストールがあり、Telegramは33万600人以上だった。
代替ソーシャルネットワークや代替メッセージングアプリへの急速な転換は、今後アプリストアがポリシーを徹底させるのがいかに困難であるかの予兆だ。プラットフォームはヘイトスピーチを配信したり暴力の助長を許しているアプリに対して断固たる措置をとっているが、その動きは人々が次の代替アプリをダウンロードするよりも遅くなりがちだ。
同時に、人気の出たアプリはコンテンツの管理に苦労するかもしれない。たとえばすでにMeWeでは、行き過ぎたヘイトスピーチや暗殺要求が散見されている。同社が公式声明でその種のコンテンツを調査、削除すると言っているにも関わらずだ。
これらの言論の自由を謳う代替アプリの将来はどうなるのか。Amazon(AWS)がホスティングを拒否し、つい最近トランプ陣営との繋がりを断ったStripe(ストライプ)のような決済サービスも将来オンライン支払いの処理を拒否する可能性がある中、先行きは不透明だ。そうなったときは、民間資金を募って独自のインフラストラクチャーを構築したり、ユーザーに届けるための代替配信システムとしてウェブやサイドローディングを探し求めて生き残りを図るのかもしれない。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アプリ、アメリカ、SNS、ソーシャルメディア、App Store、Google Play
画像クレジット:TechCrunch
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )