人工知能によって生成された「無限の物語」を持つゲームを開発しているスタートアップLatitude(ラチチュード)が、シードファンディングで330万ドル(約3億5000万円)の資金を調達したと発表した。
AIが生成したストーリーというと、短編映画「Sunspring」のような愉快で無茶苦茶な実験を思い浮かべるかもしれないが、Latitudeの最初のタイトルである「AI Dungeon」は、幅広いジャンルとキャラクターから選択できる印象的なオープンエンドの(そして首尾一貫した)テキストアドベンチャーゲームだ。
「Zork(ゾーク)」のような古典的なテキストアドベンチャーでは、デザイナーが意図していないことをプレイヤーが入力すると、すぐに「それはできません」というようなメッセージを頻発するが、AI Dungeonはそれらとは異なり、どんなコマンドにも反応することができる。たとえば勇敢な騎士が戦闘に突入している時に「get depressed(気落ちせよ)」と入力すると、彼はすぐに岩の上に座って頭を両手で抱えてしまった。
「AIはどうやって、何が良い話であるかを知るのでしょうか?」と、同社の共同創立者兼CEOであるNick Walton(ニック・ウォルトン)は言った。「それはたくさんの良い物語を読み、それに関わるパターンを知っているからです」。
AI Dungeonは、ウォルトン氏のハッカソンプロジェクトの1つとしてスタートした。最初のバージョンでは何の賞も獲得できなかったが、彼はOpenAIの言語生成モデル(最新バージョンは「GPT-3」)による改良に助けられて開発を続けた。
「私が作ったAI Dungeonの最初のバージョンは、文章レベルでは首尾一貫していましたが、段落レベルでは意味をなしませんでした」とウォルトン氏はいう。「GPT-2が使えるようになると、より意味のあるものになりました。そしてGPT-3に達すると、ストーリーレベルでさらに首尾一貫したものになりました。このような首尾一貫性やストーリーが意味を成さないという問題は、AIが向上するにつれて解決されていくと私は思います」。
Latitudeによると、AI Dungeonは月間150万人のアクティブユーザーを集めているという。このスタートアップは今後もさらに多くのAIを使ったゲームを制作し、最終的には他のゲームデザイナーたちも同じようなことができるようになるプラットフォームのリリースを計画している。
ウォルトン氏は、AIがなければ、ビデオゲームは常にクリエイターの想像力によって制約されると指摘する。ランダムに生成された町や惑星が舞台となる「The Elder Scrolls II:Daggerfall」や「No Man’s Sky」のようなゲームでも、「似たようなコンセプトに同じ捻りを効かせたもの」と彼は主張する。
たとえばDaggerfallでは、「どの町に行っても、基本的にはすべて同じ。それがプロシージャルジェネレーション(手続き型生成)の問題点です。特異なものを作り出すことはできません」。これに対して、AIは「完全に特異で、毎回違うものを作る」ことができる。
ビジネスの観点からは、これによりAAAゲームの開発コストを、現在の1億ドル(約105億円)以上から10万ドル(1050万円)以下に引き下げることが可能になると、ウォルトン氏は述べているが、まだLatitudeはグラフィックを使ったゲームをリリースしていないので、そのレベルに到達するには長い道のりがある。ウォルトン氏はまた、これが新たなレベルの没入感とインタラクティブ性につながる可能性があると語る。
「この技術を使えば、何万ものキャラクターがそれぞれの希望や願望、夢を持っている世界を作ることが可能です」と彼は語る。「World of Warcraft」のような、1000万人が同じクエストに参加しているような世界ではなく、ダイナミックで生き生きとした世界を実現できます」。
Latitudeの今回の資金調達は、NFXが主導し、Album VC(アルバムVC)とGriffin Gaming Partners(グリフィン・ゲーミング・パートナーズ)が参加した。
NFXのJames Currier(ジェームス・カーリア)氏は声明の中で、「Latitudeはゲームの作り方に革命を起こし、AIを燃料としてまったく新しいジャンルのエンターテインメントゲームを制作しています」と述べている。「世界がかつて見たことのないようなゲームを生み出すために、最高のAIの知性とエンジニアが集結しています。すでにLatitudeは圧倒的なAIゲームのリーディングカンパニーです」。
カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Latitude、資金調達、ゲーム、Opens AI
画像クレジット:aurielaki / Getty Images
[原文へ]
(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)