「SLA」に「SLO」に「SLI」。ソフトウェア開発の管理業務に携わる人たちが共通して大好きなものは「略語」だ。しかし、サービスレベル合意(SLA)の意味は誰もが知っているだろうが、サービスレベル目標(SLO)とサービスレベル指標(SLI)についてはあまり知られていない。だがそれらの考え方は意外にわかりやすく、「SLO」はSLAで約束した合意内容に合致させるために開発チームが達成すべき目標であり、「SLI」はそれら2つを具体的な数値でサポートする基準だ。DevOpsの登場により、これらの考え方は企業の総合的なサイト信頼性エンジニアリング(SRE)において大切な要素となり、主流になりつつある。とはいえ、これらを実行するとなると、ひと筋縄では行かないのが通常だ。
Nobl9(ノブルナイン)は、SLOを中心とした運営方法と組織内の適切なフィードバックループを構築し、エンジニアリング、機能開発、信頼性の間での厳しい経費のやりくりを軽減しつつSLOの達成を助けるツールを企業に提供する。
同社は米国時間2月10日、2100万ドル(約22億円)のシリーズB投資の調達を発表した。このラウンドを主導したのは、同社のシリーズAラウンドにも参加したBattery VenturesとCRV。そこに、やはりシリーズAに参加したBonfire VenturesとResolute Ventures、さらに新規の投資者としてHarmony PartnersとSorenson Venturesも加わっている。
Nobl9を立ち上げる前、共同創設者でCEOのMarcin Kurc(マーシン・カーク)氏とCPOのBrian Singer(ブライアン・シンガー)氏は、ともにOrbitera(オービテラ)に在籍していた。当時シンガー氏は共同創設者でCOOであるカーク氏はCEOだった。2016年にOrbiteraがGoogle Cloud(グーグル・クラウド)に買収された後は、そちらに移っている。そこで2人は、Googleのサイト信頼性エンジニアリングの枠組み作りと評価を行ってきた。
次に何をしようかと考え始めたころ、それまでに得た経験から、SREの考え方を製品化しようと心が向いていった。「もしKubernetes(クバネティクス)を使うとしたら、サービスベースのアプリケーションやモダンアーキテクチャーを運用するとしたら、現実にSREよりも優れた方法はないという結論に達しました」とカーク氏は私に話した。「そこに注目し始めると、必然的にSREは完全な枠組みとなり、プロセスが見えてきました。そしてSREの構成要素を調べてみると、SLO、つまりサービスレベル目標が基本であることに気づきました。SLOなしにはSREは実現できません」。
シンガー氏も指摘しているが、SLOを採用するためには、企業は自社が保有している、たとえば稼働時間や遅延で測定されるサービスの信頼性に関するデータを、適切な目的のために役立てる方法を知らなければならない。これはなかなか難しい。実際のところそのデータは、いろいろなデータベースやログの中に点在しているためだ。しかし本当に難しいのは、各企業ごとに、そのデータに基づいて適切なSLOをどう定義するかだ。
同社は、2020年のβテストを終え、先週、そのプラットフォームを一般運用を開始した。最初の顧客には、Brex(ブレックス)やAdobe(アドビ)も含まれている。
彼らは今回の資金調達をシリーズAラウンドと考えている。すでに750万ドル(約7億8500万円)というかなり大規模なシリーズA投資を得ているため、これはシードラウンドではなくシードAとすることに決めたのだと、カーク氏は私に話してくれた。「定義が難しいのです。ある一定の収益を基準に決めるのなら、正式版を公開したばかりの私たちには、まだ収益がありません」とシンガー氏。「しかし、単純に製品と会社の成熟度という点で考えれば、我々はシリーズBに相当すると思っています」。
そのラウンドは2020年11月にクローズした。新規のベンチャー投資者も呼び込もうと考えていたのだが、既存の投資者がすでに同社へのさらなる投資に興味を示していた。また、前回のラウンドが定員超過になってしまったこともあり、シリーズAの恩恵が得られなかった一部投資家のために新しいラウンドの追加を決めたという。
同社は新しく調達した資金を使って、そのロードマップの推進と、主に営業、マーケティング、カスタマーサクセスの分野の人材増強を行う予定だ。
カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Nobl9、資金調達
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:金井哲夫)