「ウィズコロナ」と名づけられ、ニューノーマルな働き方が定着しつつある今、リモートオフィスを実現するサービスに注目が集まっている。TechCrunch Japanが今年開催した「Startup Battle Online 2020」の出場企業であるoViceもその1つだ。同サービスでは、まるでオフィスにいるかのようにスタッフたちの現在地を認識しながら近寄り、ホワイトボードツールや動画の共有を通じて協働作業が行える。鍵付きのルームも用意可能なため、会議もツール内で行えるフルスタックぶりだ。
同社は2020年2月に設立。創立者のSae Hyung Jung氏(ジョン・セーヒョン氏)はエンジニアかつシリアルアントレプレナーであり、oViceの創業当時はチュニジアにいたという。「すでに新型コロナウイルスの影響は始まっていたが、限定地域のみで影響は少ないだろうと考えていた。あっという間にロックダウンになり、リモートワークを強制的に始めなくてはならなくなった。当初は社内利用目的でプロトタイプを開発したが、商用化ができると踏んで、日本へ帰国し6月にはクローズドベータを開始した」とアイデア着想の背景について話す。
「リモートツールでユーザーが離脱しない最大の理由は、安定性です。Zoomが安定している理由はアプリだから。私たちはブラウザで誰でも簡単にログインされ、ツール上での音声、チャット、動画再生等全てが滑らかであることを目指しました」(ジョン氏)。
ブラウザいっぱいに空間を作れ、入場者は顔アイコンとして表示され空間上を移動でき、近づけば音声が聞こえてくる。50名から500名まで対応しており、エレベーターを作ってフロアを構築することもできる。自社オフィスのリモート化だけでなく、コワーキングオフィス入居者のコミュニケーション場所、学校のバーチャルキャンパス、コンベンションセンター、展示会、学会など、多様なビジネスユースが行われているそうだ。背景画像のカスタマイズが可能なので、ユーザー自らユースケースを発掘し、テレビ番組のような○×ゲームや演劇も行われたこともある。
ジョン氏は、自分たちを、リモートワークツール提供者ではなく、空間の提供者であると捉えていると語る。「我々が提供するのは空間そのもの。内装をユーザが作っていくものとすれば、我々の立ち位置は不動産業にあたる」。
今回の取材で、実際に私は玄関から入り、ミーティングエリアまで自らアイコンを動かし、畳エリアで向かい合いながら座って会話をした。ジョン氏は開発当時「あつまれ どうぶつの森」をプレイしており、あの感覚を目指したという。「バーチャルでは効率性が求められます。ショートカットが可能な環境で、わざわざ移動を再現すべきかという意見もありました。しかし私たちが目指しているのは、リアルにできるだけ近いコミュニケーションが可能な空間の再現なのです」。
oViceが目指すのはオフィスの再現に止まらない。「コアコンピタンスは、現実のコミュニケーションをバーチャル上で快適に再現する技術。API連携をしてできることは増えていく。例えばShopifyと連携すれば、リンクさせた商材の情報をオンラインで見ながら、近くにいる店員にアドバイスをもらうという買い物も実現できます」。実際にoViceが提供するのは背景や機能などの「箱」であり、ユースケースは無限大で、なんでもバーチャルに生活を再現していくことができる。フロアを繋げればオフィス、オフィスを繋げればビル、ビルを繋げれば街となるのだ。
「新型コロナウイルスが収束してもリモート状況は併用されるでしょう。その時、対面参加者とオンライン参加者の差分がないくらい滑らかな生活を作っていきたいと考えています」。
画像クレジット:oVice
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:oVice リモートワーク
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/02/12/ovice/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Eriko Nonaka