ロサンゼルスに本社を置く創業10年のインキュベーター兼ベンチャー企業Science Incは2021年1月最終週の初めに3億1050万ドル(約378億円)を調達し、NASDAQにブランクチェックカンパニー(SPAC)を立ち上げた。創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏とMike Jones(マイク・ジョーンズ)氏は、この資金をモバイル、エンターテインメント、消費者直接取引(D2C)サービスの分野で会社を上場させるために使用するとしている。
株式公開を考えている投資先企業があるとしても、先日の対談では語らなかっただろう。しかし、もしそうであれば、興味深い候補がいくつか存在するはずだ。ファム氏は、South by SouthwestフェスティバルのダンスフロアでアマチュアのeスポーツプラットフォームであるPlayVSの創業者であるDelane Parnell(デレイン・パーネル)氏に会ったことをきっかけに、同プラットフォームの育成に貢献した。同氏はまた、Credit Suisse(クレディ・スイス)との連携を報じられているマイクロモバイル企業Birdの出資者でもある。そして山の水をアルミ缶で売る、冗談混じりのマーケティング戦略を持つLiquid Deathの創設と成長にも貢献している。しかもファム氏によると、これはかなりの売り上げを出したようだ。
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ただしこれはあながち冗談でもない。実際に飲料水は2016年以来米国で最も売れているパッケージ飲料なのだ。
両氏は長時間におよんだTechCrunchとの対談の中で、2021年に強力な消費者ブランドを構築する方法について分野を問わず語ってくれた。その対談の全容はこちらで聞くことができる。また長さとわかりやすさを考慮して軽く編集した大筋を以下に記載するので、参照いただけたらと思う。
TechCrunch(以下、TC):新しいSPACを設立しましたね。潜在的なターゲットについてお伺いします。ご自身がこれまでに関わった企業、あるいはScienceで資金を調達した企業を検討していますか?
マイク・ジョーンズ氏(以下、MJ):いいえ、SPACは独立した組織です。私たちは100社をはるかに超える企業群が、スタック内で私たちが求めている資質に適合すると考えています。これらの企業は私たちが(彼らに対する)投資エクスポージャーを持っているかもしれませんし、持っていないかもしれませんが、分析のプロセスはScienceのポートフォリオに依存していません。
TC:そうなるとその可能性は否定できないのですね。
MJ:独立した取締役を置いていますので、ポートフォリオ内の企業を検討する場合には異なるプロセスが実行されます。しかし現時点はターゲット候補となる適切な範囲を集積しているところです。その後正式なプロセスに進みます。
TC:どのような指標に注目していますか?あなたはD2Cをはじめとする企業に携わる専門家です。ターゲットとしている企業は収益性の高い企業である必要がありますか?
MJ:私たちが関心を寄せている多様な見込み企業は、特定のレベルの収益性や売上が必要条件となっているわけではありません【略】セクター内で成功する企業を生み出すと私たちが考える重要な指標や収益要因については公開していません。しかし、私たちはデータに特化したチームです。次世代を担うジェネレーションZとミレニアル指向のマーケティングの最前線にいます。大ブレイクするブランドになり得るための要素とは極めて特定的なもので、それを我々は求めているのです。
TC:お2人はソーシャルメディア分野に精通されています。Clubhouseのように多くの注目を集めている新しいソーシャルメディア事業が出現していますね。Scienceの中核事業に話を移しますが、この分野での投資は検討していますか?
ピーター・ファム氏(以下、PP):YouTubeがマーケティングのプラットフォームになったのは10年前です。そして6年か7年程前にInstagramが(マーケティングのプラットフォームになりました)。Snapchatに続いてInstagram Stories(が登場し)、次にTikTok、そしてさらに新たなプラットフォーム、それがClubhouseです。常に新しいものが現れています。
Facebook、Instagram、Snapchatから目を離すことはできませんが、Clubhouseはまるで別物です。ほとんどラジオのようなものですが、参加型です。South by Southwestに行くとまるで24時間SWSXパネルのようです。聴衆の中にいながら、手を上げて、ステージ上に引き上げてもらえば、あなたはパネルの一員になれる、という実に興味深い動的な体験ができます。それが多くの人々を魅了する理由であり、自分を知ってもらい、より多くの聴衆に自分の声を届ける機会が得られる場となります。
TC:その成長が持続可能だと思われる理由をお聞かせください。
PP:マーケターがプラットフォームに参入する瞬間です。本物のマーケター、つまりお金の稼ぎ方についての方法や不動産の手に入れ方、不動産を売って収入を得る方法などを販売するタイプのマーケターが現れたとき、それはアービトラージ(裁定取引) になります。基本的には非常にスマートな人たちで、費す時間ごとに多くのお金を稼ぐことができます。ROI、顧客獲得コスト、収益の面で他人がやっている他のことに時間を費やすよりも価値があることを認識しています。
TC:2021年、Scienceのポートフォリオ企業はこういったプラットフォームをどのように利用していくでしょうか?あなたはLiquid Deathの投資家です。2020年末に4000万ドル(約42億2200万円)を調達したサブスクリプション下着企業MeUndiesの成長を支援しました。また初期のDollar Shave Clubに関わっていました。水や下着、カミソリなどでどのようにして切り拓いていくのでしょうか。
PP:プラットフォームは、常に単なる踏み台に過ぎません。ゲームのルールやフィードは変化するので、長期的にこれらの場所を当てにすることはできません。10年前、Dollar Shave Clubをローンチしたとき、私たちのホームページにはYouTubeの動画が自動再生されていました。その当時は、誰かに何かを買ってもらうためにYouTube動画を投稿することについて考えた人はいませんでした。MeUndiesはInstagramを使っていました。サブスクリプション方式の下着を想像した人はいたでしょうか。けれどクリスマス、新年、バレンタインデー、セント・パトリック・デーなどの祝日が毎月のようにやってきます。そのときに合わせて着ることができる何かおもしろくて楽しいものがあったらいかがでしょうか?
Liquid Deathに関しては、まだInstagramとTikTokにフォーカスしています。しかし、どのようなケースにおいてもブランドは、誰かがそのブランドについて好意的に話し、支持してくれるような存在にならなければなりません。
マイクは私たちのデータ面を控えめに表現していますが、私たちは絶え間なく、それぞれのビジネスに関して起きているすべてのことを測定しています。それには、彼らのソーシャルリーチ、彼らのエンゲージメント、ビジネスの維持、顧客が戻ってくる頻度、私たちがそれぞれの個人からどれだけの収益を生み出しているかそしてそれぞれのマーケティングの価値が何に値するかなどが含まれます。これらはすべて(私たちが決定する)この複雑なエンジンにつながります。背後にビジネスは存在するのか。Facebookに頼らずに自力で成長できるのか。ほとんどの企業では、自分自身のコミュニティやブランド、オーディエンスを構築する方法を理解していなければ、最終的にはGoogleかFacebookが勝者となってしまいます。
TC:今はどのようにコミュニティを構築しているのですか?
私は個人的に4000缶を配りました。Liquid Deathの初期の頃は10代の若者たちに手渡していて、10人中6人が写真を撮って友達にスナップを配信しました。その瞬間を何度も目にして、これはうまくいくと確信しました。3月、4月、5月にInstagramのフィードがいかに退屈だったか気づいたと思いますが、それはみんなが家にいて何もすることがなかったからです。しかし私たちはコンテンツの一部を提供することができました。
TC:Liquid Deathは現在、セブン-イレブンを含むいくつかの店舗で販売されています。人々はオンラインで購入していますか?何パーセントの人がサブスクリプションを利用していますか?
PP:1 / 3の顧客がオンライン(サイト)で商品を購入しています。24ドル(約2500円)の帽子と45ドル(約4700円)のパーカーも扱っており、コンスタントに製品を提供しています。ブランドであり、ライフスタイルとも言えます。CEOのMike Cessario(マイク・セサリオ)は、お気に入りのバンドのようなものを作っていると表現しています。海に捨てられてしまう(ペットボトルのような)プラスチックではなく、砂糖も入っていません。また飲酒運転につながるお酒でもないため、この製品のファンになることができるのです。
絶妙なセンスがあり、誰かに伝えたくなる理由となります。アイスブレーカーにもなり得るし、楽しく、どうしようもなく、呆れてしまうけどおもしろい。それでこそみんあにとって話す価値があり、見る価値があります。
こういった軌道は測定するのが難しいかもしれませんが、実際に見てよく観察し、繰り返し見られるようなら結果は明らかだと言えます。
カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Science Inc、資金調達、ロサンゼルス、SPAC
画像クレジット:Liquid Death
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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)