自身のコンテンツがどのように使用されているか、あるいはオンラインで再使用されているかに関するコントロールを著作権所有者に与えようと、スタートアップPex(ペックス)が新規ラウンドで5700万ドル(約60億円)を調達した。
既存投資家のSusa Ventures、Illuminate Ventures、Tencent、Tencent Music Entertainment、CueBall Group、NexGen Ventures Partners、Amaranthineなどが本ラウンドに参加した。
2014年創業のPexはこれ以前に700万ドル(約7億4000万円)を調達していた。そして2020年、音楽著作権のスタートアップDubsetを買収している。創業者でCEOのRasty Turek(ラスティ・トゥレック)氏は、同氏が言うところの「著作権所有者が、著作権侵害を発見するためのGoogleのような検索エンジン」から生まれたプロダクトが広範なプラットフォームになったが、著作権とオンライン支払いを管理するより良いシステムを構築するというビジョンは変わらないと筆者に語った。
Pexは、コンテンツの著作権を有する個人や企業、コンテンツのライセンス供与やリミックスをしたいクリエイター、コンテンツがシェアされている大手デジタルプラットフォーム、これらを監督したい法執行機関を集合させた自社のAttribution Engineを「インターネットのためのライセンスインフラ」と表現する。
プロダクトには6つのモジュールがある。資産レジストリ、資産が新しいコンテンツで使用されたときに資産を特定するシステム、ライセンス供与、論争解決システム、支払いシステム、自分のコンテンツがどのように使われているかを確かめるデータと報告だ。
トゥレック氏はPexが「世界で最も大きな著作権保有者の大半」によって使用されており、コンテンツすべてをオンラインで取り締まるためのリソースを持たない「ロサンゼルスの路上にいる苦しんでいるミュージシャン」がアクセスできるよう構築さしたと話した。
トゥレック氏はまた、より広範な規制環境がPexのようなソリューションを求めているとも述べた。たとえばEUは2021年発効が予定されている新しい著作権指令を採択し、米国でも新たな著作権法が検討されている。EUの法案は大手プラットフォームが先制的に幅広いコンテンツをブロックすることにつながるかもしれないと批判されたが、トゥレック氏は「オーバーブロッキングの反対となる、オーディエンスを求めている多くのコンテンツがある」と主張した。
関連記事:米国の追加経済刺激策に違法ストリーミングを「重罪」にする法案
Pexは全体として規制監督当局に頼っているわけではない。同氏は、Pexがプラットフォームを使用している異なるグループの需要のバランスを取るようになっていると述べた。そしてPexはライセンス供与のディールから売上を上げるために、そのバランスを取るためのインセンティブも持っており、同社は「真にスイスのような中立国、真に中立派になる」ことにフォーカスしている。
「もし当社がシステムを悪用しようとしたら、私たちも失うという考えに基づいて事業をデザインしました。誰かがシステムを悪用したときは私たちは収益を上げず、すべてがうまく機能したときのみ利益を得ます」と同氏は述べた。
トゥレック氏はまた、パブリックドメインとCreative Commonsライセンスが同プラットフォームで「第一級市民」であり、Attribution Engineを使用している著作権所有者の多くが必ずしも金銭的補償を求めているわけではない、と主張した。「多くの人が認知のために著作権を守りたいのです。我々は社会性の動物です」(加えて認知は金儲けの機会につながり得る)。
Pexは新たに調達した資金で、引き続きAttribution Engineを拡大できると話す。
「投資は妥当性の確認だとは考えていません。義務に近いものだとと思っています。投資はあなたが正しい方向に向かっていることを証明しています」。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pex、著作権、資金調達
画像クレジット:Pex
[原文へ]
(文:Anthony Ha、翻訳:Nariko Mizoguchi)