財務会計のように、送電網は順調にいっているときは決して社会の注目を集めることはない。ジャーナリストは「給電されています」などと書いたり、送電網を維持するための広範にわたる取り組みを議論したりはしない。その代わり、新聞の一面を飾り始めるには、米国最大の州の1つへの送電をノックアウトする記録的な寒波、あるいは2018年のカリフォルニアのCamp Fireのような米国で最も人口が多い州での大規模な山火事を要する。
グローバルの気候変動が異常気象をさらに激化させ、送電網にかなりの負荷がかかるのにともない、送電網は今後ますますニュースで取り上げられるようになる。筆者の同僚Jon Shieberが2月16日に書いたように、「カリフォルニアのような厳しく規制された市場であろうとテキサス州のような自由市場であろうと、現在の政策では天候が大混乱を引き起こし、人々の命を危険にさらすことを阻止できない」。送電網は我々が今世紀に直面している最も困難な課題の1つの中心にある。
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必要とされているのは、停電の原因を特定し、そしてまず停電を予防するためのより良いセンサーとテクノロジーだ。米国中には何百万という電柱と数十万マイルもの送電線があり、電力公共サービスはいかにして確実にシステムの質を認証できるのだろうか。また、使用料金アップを回避するためにいかに効率的な方法でそれを行えるのだろうか。
Y Combinatorの現在のセッションに参加しているGridware(グリッドウェア)はこの重要なニーズに挑戦している企業だ。同社のアプローチは、4本のネジで電柱に設置できるセンサーを搭載した小さなボックスの活用だ。Gridwareのパッケージにはマイクと電柱の周辺環境を感知するセンサーが入っており、異常を聞き分けてそれを適切なマネジャーに報告するのに搭載されたAI / MLプロセシングを使っている。
「電柱に耳を傾けて監視する、横に立っている番人」のようなもの、とCEOで共同創業者のTim Barat(ティム・バラット)氏は話し、ボックスのことを電柱のためのFitbitに例えた。木の枝が電線を切ってしまったときには「その場に居合わせない限り、感知する方法はない」。しかしGridwareを利用すれば「正しい時に正しい場所にいない、のではなくいつでも正しい場所」なのだと同氏は述べた。
創業チームに関して注意を引くのは、一部の創業者たちの経歴だ。バラット氏自身は現場で電柱の装備を評価し、問題を探し出す作業員として働いていた。「電柱に登るたびに、シロアリ被害があるかどうかなどをチェックするためにハンマーで叩きます。それがいまだに調査員の電柱の調べ方なのです」と同氏は指摘した。
その後同氏はカリフォルニア大学バークレー校に進学し、そこで電気エンジニアリングの教授で、後にGridwareに共同創業者として加わったPrabal Dutta(プラバル・ドゥッタ)氏の指導を受けた。ドゥッタ氏の専門は「産業のサイバー・物理システム」で、iCyPhyセンター経由のデジタルインターフェースを通じた産業コントロールシステムの研究を続けている。
バラット氏はまたエネルギー部門で何年も働いていたAbdulrahman Bin Omar(アブドゥッラフマーン・ビン・オマール)氏とも授業で知り合い、その授業はカリフォルニアの山火事で1週間休講になった。2人は2019年に共に取り組み始め、2020年にバークリーのスタートアップインキュベーターCitrus Foundryに参加した。3人は最終的に共同創業者のHall Chen(ホール・チェン)氏とRiley Lyman(リレイ・ライマン)氏とも知り合い、CalSEED プログラムを通じてカリフォルニア州エネルギー委員会から15万ドル(約1600万円)の助成金を獲得した。
Gridwareには現在従業員が7人いる。そして同社のプロダクトの展開についてあらゆる規模の送電公共事業体と協議している。送電網は長期のテストと販売サイクルがともなうため、新しいテクノロジーの受け入れはかなり緩やかかもしれない。しかし、過去数年我々が目にしてきた大規模な停電を考えると、同社が通常のタイムラインを加速させるチャンスがありそうだ。「新世紀の課題に向き合うために送電網を変容させる」必要があるのです、とバラット氏は話した。
カテゴリー:ハードウェア
タグ:Gridware、電力網
画像クレジット:Philip Pacheco/Bloomberg / Getty Images
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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi)