米食品医薬品局(FDA)は、ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した1回の接種だけですむ新型コロナウイルス用ワクチンに緊急使用許可を出しました。これは米国ではモデルナ、ファイザーに続いて3番目に認可された新型コロナワクチンで、通常の冷蔵庫で保管できます。
先発のモデルナおよびファイザー製新型コロナワクチンは、いずれもmRNAと呼ばれる種類のワクチンで、ウイルスの一部の遺伝物質を体内に直接送達する仕組み。ただし、遺伝子の構造が破壊されやすく、保管温度がマイナス20℃(モデルナ)、または−75℃(ファイザー)と指定されています。そのため、医療施設には専用の保管用冷蔵庫が必要となり、運搬時の温度管理をどうするかといった課題があります。またどちらも2回の接種が必要とされます。
これに対し、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは英アストラゼネカのワクチンと似た種類を採用、不活性化した風邪ウイルス(26型アデノウイルス)に新型コロナの遺伝子を挿入したウイルスベクターワクチンで、1回の接種で完了するうえに、通常の冷蔵庫に保管が可能と手間と管理コスト両方にメリットがあるのが特徴です。米国、南アフリカ、ブラジルで行われた治験では、85%の重症化予防効果があり、中程度の症状も66%を予防できたとされます。FDAが出した緊急使用許可は、米国の18歳以上を対象とします。
先発2社のワクチンは予防効果が約95%と言われており、その点でジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンの効果が低いとする声も一部にはあるようですが、CNNは専門家の意見としてジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは治験が伝染性が高いとされる変異種も含む状況で行われたためとの見方を示しました。そして米国でも春頃から変異種の感染が急増する可能性があると指摘。「今日ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンが打てて、明日モデルナのワクチンが打てるなら、待つ必要はありません。今日打つ方を選ぶべきです」との言葉を伝えています。
ちなみに、日本では2月17日から医療従事者を対象としてワクチンの先行接種が始まったばかり。3月1日にはファイザー製ワクチンの第3便が到着する予定で、第1便から数えると合計で68万人(x2回)分が到着するとのこと。今後は国内の医療従事者470万人に順次優先接種が行われ、高齢者も含めてそれぞれ2回接種可能な分のワクチンを全国に分配する見通しです。
また、アストラゼネカは日本政府との契約のもと厚生労働省にワクチンの日本国内生産を申請しており、承認され次第、最大9000万回分を国内から供給する予定です。一方で、他の製薬会社による日本独自の国産ワクチンの開発も進められてはいるものの、こちらは輸入(国内生産含む)ワクチンの接種が本格化すれば臨床試験の実施が難しくなる可能性も考えられ、いつ頃実用化できるのかはまだわかりません。
(Source:FDA。via:Ars Technica。Coverage:CNN、BBC、Nikkei。Engadget日本版より転載)
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