【男前マルチツールの世界】
マルチツール。それは、手に収まるほどのコンパクトなボディにさまざまな道具を詰め込んだ“ハンドツール”です。とかく専用ツールに比べ「間に合わせ」と思われがちですが、そこにはマルチツールだからこそ味わえる奥深い世界が存在します。
そんなマルチツールの男前な魅力を紹介する連載、第6回は自転車用マルチツール、TOPEAK(トピーク)「ラチェットロケット」(4180円)です。自転車に装着し携帯できるラチェットレンチとしては小型で信頼性が高いマルチツールです。
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TOPEAKは、自転車用の工具をはじめ、ポンプ(空気入れ)やライトやバックなどサイクルライフに無くてはならいアイテムを数多くリリースする台湾メーカー。日本はもちろん、世界中で愛用されているブランドのひとつです。
小型ラチェットレンチ「ラチェットロケット」は、TOPEAKの携帯工具の中でも人気商品のひとつ。7種のビットと11の用途に使用可能な多機能性があり、そのサイズからは想像もできないほどしっかり仕事をこなしてくれます。
ラチェットレンチを使用する場合は、レンチとビットを収納兼チェーンカッターから外して使います。ビットは7種類あり、どれも自転車を整備する上で使用頻度の高いサイズのものがそろっています。もちろんすべてのパーツに対応できるわけではありませんが、ステムやハンドル、ブレーキや変速機の調整など、出先で起こる可能性が高いトラブルに対応するには充分なものです。
ラチェット本体は丈夫で耐食性に優れた素材であるステンレス製。最大30ニュートンのトルクがかけられます。自転車のホイールを留めるアクスルシャフトなど比較的強いトルクで絞めこむパーツでも15ニュートン程度だと思いますので、必要にして充分なスペックです。
そして何より音がいい。カチカチという小気味良いラチェット音は工具が好きな人であれば琴線に触れるものがあると思います。実際にトルクもかかりやすく、確実にボルトを締められます。
■7種のビットとチェーンカッター
ビットは全部で7種類。T25とは星形のトルクスレンチで、自転車では主にブレーキローターを留めるボルトに使われています。スポーツバイクのメンテナンスでは六角レンチを最も多用しますが、ブレーキローターは伝統的にこのT25が採用されています。
各ビットが納まるケースの底面にはマグネットがあり、逆さまにしてもビットは自重で落ちないようになっています。このマグネットのおかげでビットを紛失し難くなり、戻しやすくなっています。細かい配慮ですが、実用面では非常に助かる機能です。
▼T25トルクスビット
高い制動力を発揮する油圧ディスクブレーキと共に使用されるブレーキローターは、かつてはマウンテンバイクに限られていましたが、近年はロードバイクにも装備されるようになってきました。T25ビットはたしかに、ブレーキローターを留める以外は、リアサスペンション付きバイクのリンク部にたまに使われているくらいのボルトではあります。しかし、T25がなければ緩んだディスクローターを固定することはできません。
自転車専用でなくても六角レンチがあれば事足りることがほとんどですが、T25を携帯できることは、長距離ライドや山道を走るトレイルライドを楽しむライダーにとって心強いものであることは間違いありません。
▼ラチェットレンチの欠点を補う機能
ラチェットレンチはどんな時に使うか? 固く締まったボルトを緩める時、仕上げの増し締めをする時など、ボルトを着脱する際のキッカケや仕上げの時に使うものだと思います。緩いボルトを最初からラチェットで回すことは、場合によっては不効率。
そんな場合は、レンチのハンドル末端部にビットを挿して使います。ここなら通常のレンチのように使えるんです。仮留めまではこちらで締めて、仕上げはラチェットを使うと効率的です。
▼ビットの外し方
5mm以上のビットであれば指で摘まんでラチェットから引き抜けます。それよりも細いビットの場合は力が入り難く、引き抜き難いかもしれません。そんな場合は、ビット収納ケースに装備されているチェーンカッターの先端で押してやると簡単に外せます。
▼チェーンカッター
自転車のトラブルで最も深刻なのがチェーンの破損です。走行中にチェーンが切れることは滅多にありませんが、実際に直面すると途方に暮れてしまいます。チェーントラブルが発生した場合、チェーンの切断と再接続によるシングルスピード化で一時的な解決ができます。
リアのギアが大口径化する傾向のあるマウンテンバイクでは、軽いギア比のまま急斜面のオフロードを下り始めると、たわんだチェーンが何かの拍子にハブ側(内側)に落ち、その瞬間にペダルを踏み込むとチェーンはあっさり切れてしまいます。これは実体験です。
この時はディレイラー(外装変速機)が取り付けボルトの部分からもげ、チェーンが切れてしまいました。このようなトラブルを解決するには、チェーンラインが出る最適なギアにチェーンを掛け直して再接続する必要があります。ディレイラーを通していたチェーンを切り、新しいアンプルピンを挿してチェーンを接続します。
チェーンカッターを回す際もラチェットが使えるので非常に軽い力でチェーンのピンを押し出せます。対応するチェーンは1~12速とほとんどのチェーンで使えますが、カンパニョーロのチェーンだけ使用できないのでご注意を。
6mmのビットの片側には、チェーンに差し込むアンプルピンを折るための穴があります。チェーンから飛び出たアンプルの端を差し込み、軽くコジるとアンプルが折れます。プライヤーなどを別に用意する必要はありません。
収納ケースの内側にはアンプルピンを収納するスペース(赤丸で囲んだところ)まであります。アンプルピンは細かな部品なので無くさないための心遣い。到れり尽くせりですね。
収納ケースにはタイヤレバーが2本付属。短めですが金属製で丈夫です。パンク修理の際に、チューブをタイヤから出す時に使います。実際に外すタイヤのサイドウォールの硬さや、カーボンリムなど材質によってはおすすめできませんが、チューブ使用が前提のホイールであれば充分使えると思います。
▼スマートなマウント方法
収納ケースはフレームにマウント可能です。
マウントベースは、ボトルゲージ部とシートポストやトップチューブなどに付けられるユニバーサルマウントの2種類が付属。好みに合わせて装着部位が選べるのは良いですね。
収納ケースのカバーはシリコンゴム製。しっかりとケースを覆うのでツールが脱落することはまずないと思いますが、カバーは全開する訳ではないので、少し取り出しづらく入れづらいかな。結局はフレームにはマウントせずにポケットやバックに入れて持ち運びに落ち着くかも。
■コンパクトで精緻なマルチツール
春から自転車通勤や通学をする人もいるでしょう。昨年はコロナ禍のため、自転車通勤をする人が増えたようです。また、余暇に密にならないアウトドアスポーツとして自転車に乗り始めた人もいるかもしれません。
新車で購入した自転車でも、使っているうちに徐々にネジが緩んだり傷んできたりします。より自分の体格に合ったパーツや好みのパーツを付けるようなカスタムに目覚める人もいるかもしれません。そんな時に専用工具を揃えていくと結構出費がかさみます。
TOPEAK「ラチェットロケット」は、自転車の簡単なメンテナンスをするのに充分な機能を備えています。フレームから自転車を組むような人でない限り、日常のメンテンナンスで不足を感じることは少ないでしょう。まして、自転車に装備して携帯できるツールとしてはこれ以上ない優れたマルチツールです。
>> TOPEAK
<取材・文/GOL>
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/360103/
- Source:&GP
- Author:&GP