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ボートのナビゲーションにiPhone登場時のような革新もたらす「Orca」

ボート遊びは、歴史と伝統のある趣味で、ボート業界やそれを支える人々もそれを重視している。その一方で、インターネットを介したつながり、電気ボート、そしてその他の技術的変化により、この業界は古い慣習から抜け出しつつある。Orcaはハードウェアとソフトウェアを組み合わせ、他の最新の消費者向けテクノロジーと同じくらい洗練されたサービスを構築し、現在操舵に使われている古いインターフェイスと置き換えていきたいと考えている。

ボート好きなら(この記事を読んでくれている読者の一部はボート好きだと信じたい)、チャートプロッティングまたは、位置や航路を追跡する2つの異なる方法に精通しているだろう。1つはボート設置型、もう1つはポケットに入れられるタイプだ。

ボートに積んでいる方は、年季の入ったセダンに搭載されているGPSインターフェイスのように古く格好が悪い。ポケットに入れられる方がかっこいいしすばやく使える。だが、携帯電話には完全な耐航性があるわけではなく、アプリはバッテリーの消耗にもつながる。

Orcaは、ボートやチャートプロッティングのベテランが集結するノルウェーのスタートアップ企業であり、ゼロから構築された最新のインターフェイスで既存の製品を飛躍させるつもりだ。

「過去20年、この業界は変わっていません。大手3社がビジネスの80%を掌握しているのです」と共同創設者兼CEOのJorge Sevillano(ホルヘ・セビジャーノ)氏は語る。「彼らにとって、ソフトウェアがどのように価値を作り出すかを考えるのは難しいでしょう。すべてのデバイスが、10~15年前のユーザーインターフェイス上に構築されています。Tomtomを例に挙げると、たくさんのメニューがあって何度もクリックが必要です。この業界は、古いものを刷新し全体のあり方を再考する経験を経てきませんでした。だから白紙の状態から新しいサービスを創ることに決めたのです」。

CTO兼共同創設者であるKristian Fallro(クリスチャン・ファルロ)氏は、数年前にこういった作業を始めた。そして彼の会社は、セビジャーノ氏が先に言及した大手企業の1つであるNavicoに買収されたのだが、彼らはそれらの構想を形にする意欲がないようであった。そこでファルロ氏は他の人々とともにアイデアをかたちにすべくOrcaを立ち上げたのである。最初に完成した製品は発表されている

「これまでの課題は、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせる必要があることでした。そのため、市場への参入は非常に困難でした」とファルロ氏は説明する。「この業界はかなり保守的ですし、またAppleやGoogleなどの大企業には小さすぎます」。

だが現在、正しいハードウェアと完全に再構築されたソフトウェアスタックの組み合わせによって、大手企業を出し抜き、古いテクノロジーをこれ以上使うことに懐疑的なボート好きの新しい時代を作り上げる準備が整ったようだ。従来のように、船内システムと自分のコンピューター間でSDカードを入れ替えて海図を更新する、方向パッドを使って目的地を入力する、または別のモバイルアプリを使い天気や航路に影響のある潮流の状況をチェックしたりする。こういったことは最新のテクノロジーとは言えないだろう。

Orcaのシステムは、Samsungから供給された高耐久性の産業用タブレット、既製の海洋向け取り付け型アーム、すばやく取り付けや充電ができるようデザインをカスタマイズしたインターフェイス、NMEA 2000プロトコルを介したソナーやGPSなどのボート独自のセンサーに接続するコンピューターベースの装置を備えている。これらは、現在ボートに積まれているどんな装置と比較しても同等か、それ以上に優秀だと言える。

現在のところ、これらが既存の多くのソリューションと似通っているのは事実だ。しかしOrcaは、ユーザーが期待するすべての利便性と接続性を備えた最新のモバイルアプリをゼロから構築したのだ。航路は、Google MapやApple Mapsのように読みやすく明確な地図上で、すぐ正確に検索できる。だが、航海には予測できないことが多々ある。天気と潮流レポートは、海上交通同様、統合されている。本アプリは、AndroidとiOSの両方で機能し、スマートフォンと主要な装置間で興味のある航路や目的地を共有することができる。

画像クレジット:Orca

「弊社はチャートプロッターが考えもしなかった新しいサービスを構築することに成功しました」とセビジャーノ氏はいう。「このサービスにより、最新の潮流レポートや風の動きに合わせ、または商業船が自分の航路上にいる場合に、ユーザーのボートの後続距離と航路を更新することができます。また、毎週新しい機能をリリースし、バグを修正するつもりです。私たちはどの企業よりも早くユーザーのフィードバックを反復適用し改善に向けて動きます」。

ボートの最も中心的なシステムに対するこうした改善は、同社が今後に向け、老朽化したガジェットを単に交換する以上の大きな志を持っていることを示している。

またボート自体から収集した情報を使用し、ほぼリアルタイムで海図を更新することができる。ボートが監視しているものに応じて、例えばまだ記録されていない大波に遭ったり、危険度の高い化学物質を見つけたり、さらには障害物を検出した際、別の船や当局に警告することもできるだろう。「これは海バージョンのWazeです」と彼はいう。「私たちの目標は、海上データ企業になることです。ボート乗り、海関連の業界そして社会への販売機会は計り知れないものがあると思います」。

設置や機能に柔軟性があるため、ボートに直接統合し、新モデルの組み込みOSにしていきたい意向だ。これは、電気ボートの将来有望なカテゴリーには特に重要である。というのも、電気ボートは古い伝統から脱し、テクノロジーに精通したボート乗りの興味をひきつける傾向があるとされているからだ。

「陸上で機能するものを海上に導入する人たちを見てきましたが、彼らはすべて同じ課題に直面しています。最大の問題は、航続距離に関する不安です。この不安は海上ではさらに悪化します」とファルロ氏はいう。「たくさんの製造メーカーと相談した結果、造船は難しいが、ナビゲーションエクスペリエンスを構築するのはさらに難しいことがわかりました」と続けた。

これが完全に正しいかどうかは造船に関する専門知識がどれくらいあるかによるが、電気ボートの有効な小航続距離を把握することは、恐ろしく困難であることには間違いない。Zin Boatsが行ったように、開始原理と高度な物理的シミュレーションから効率的かつ予測可能な新しいボートを造ったとしても、実際に航行してみると、物理の法則や船舶の性質により最善の見積もりさえも数秒ごとの修正を迫られるのだ。

「海上で後続距離を把握することは非常に難しいのですが、弊社の技術はトップクラスだと自認しています。そこでユーザーが直面している航続距離不安の解消に役立つ統合されたナビゲーションが搭載されたソフトウェアスタックを製造メーカーに提供したいと思っています」とファルロ氏は語った。

もちろん、このような船の購入を検討している消費者が、後続距離を正確に追跡するだけでなく、充電ポイント候補地やその他設備へのリアルタイムでのアクセスを可能にする最新かつ応答性の高いOSがあることを知れば、購入を決断する可能性は高まるだろう。ボートに搭載されている古いチャートプロッターにできることは非常に限られていることから、最近は自分のスマートフォンを使用するボート乗りも増えている。だが重要なのは、Orcaを使えば、これ以上迷うことはないということだ。

コンピューティングコア、取り付け、タブレットをセットにした価格は1449ユーロ(約18万7000円)で、コアだけだと449ユーロ(約5万8000円)となるが、事前注文者には大幅な割引が検討されている(新しいボートを購入する人にとって、この数字は、丸め誤差と変わらないかもしれないが)。

ファルロ氏によるとOrcaはAtomico、Nordic VC firm Skyfall VenturesそしてKahoot の共同創設者であるJohan Brand(ヨハン・ブランド)氏を含むエンジェル投資家からの投資で運用されている。同社は、機能の追加と先に明言した定期的な更新を行う前に、まずは受注した注文を処理するために労力を集中させているいう(商売は「順風満帆」ということのようだ)。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Orcaボート

画像クレジット:Orca

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

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