クラウドインフラストラクチャー市場が急成長している一方で、ワークロードの大部分はオンプレミスに留まっているという見解が一般的だ。しかし、Synergy Research Group(シナジー・リサーチ・グループ)の新たな調査によると、クラウドインフラへの支出は、2020年に初めてオンプレミスへの支出を上回ったという。しかも大差でだ。
「シナジー・リサーチ・グループの新しいデータによると、企業のクラウドインフラストラクチャサービスに対する支出は、2020年に積極的に増え続け、35%増の約1300億ドル(約14兆2000億円)に達しました。一方、データセンターのハードウェアおよびソフトウェアに対する企業の支出は、6%減の900億ドル(約9兆8000億円)以下となりました」と、同社は声明で述べている。
シナジー社のデータによると、10年ほど前からクラウドに対する支出は増加傾向にあったものの、2020年まではオンプレミスのソフトウェアを優先する支出が多く、2つの数字は前年の時点でほぼ互角になったという。シナジー社のチーフアナリスト兼リサーチディレクターであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏は、今回の新しいデータが、2020年に多くの企業の最高情報責任者(CIO)が支出をクラウドにシフトさせたことを示していると語る。
「重要なのは、企業が何にお金を使っているかということです。我々はそれを調査しています。各企業のCIOが、クラウドサービスに多くの資金を投じることを選択し、オンプレミス(またはコロケーション)のデータセンター資産に対する支出を大幅に削減していることは極めて明らかです」と、ディンズデール氏は筆者に語った。
オンプレミスの支出総額には、サーバー、ストレージ、ネットワーク、セキュリティおよびハードウェアを動作させるために必要な関連ソフトウェアが含まれている。「このデータにおけるソフトウェアというのは、主にサーバOSと仮想化ソフトウェアです。SaaSとオンプレミスのビジネスアプリケーションソフトウェアを比較することは、まったく別の話になります」と、ディンズデール氏は言っている。
オンプレミスとクラウドの数字がこのように分かれているのを見ると、世界のIT支出に占めるクラウドの割合はまだ比較的小さいというGartner(ガートナー)の調査結果などと、これらの数字をどうやって比較するかは考える価値があるだろう。今日のハイブリッドな世界では、ワークロードは行き来するため、その瞬間にどこに存在するかを数値で示すことは難しいと、ディンズデール氏はいう。
「パブリッククラウドで稼働しているワークロードはごく一部である、というコメントをよく目にします。しかし、私が問題にしているのは、『ワークロード』という概念が、特にそれを数値で示そうとする場合、非常に曖昧なものであるということです」と、同氏は語った。
新型コロナウイルスの影響で、企業がクラウドに移行するスピードが、平常時よりも格段に早まったことには留意する必要があるものの、しかし、ディンズデール氏によれば、この傾向は何年も前から見られていたものであり、ウイルスの感染流行が加速させなかったとしても、動向は変わらなかっただろうと同氏はいう。
どの数字を見ても、クラウドインフラ市場がオンプレミス市場よりもはるかに速く成長していることは明らかであり、今回のシナジー社の新しいデータは、企業のCIOがクラウドに賭け始めていることを示している。
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カテゴリー:ネットサービス
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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)