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glafitの電動ハイブリッドバイクを自転車・電動バイクに切り替えて道路を自由に走れるようにする「モビチェン」販売へ

glafitの電動ハイブリッドバイク「GFR-02」

和歌山県に本拠地を置くハードモビリティベンチャーのglafit(グラフィット)は2021年夏を目途に、glafitのバイクに後付けすることでバイクと普通自転車の切り替えを可能にする新機構「モビチェン」(モビリティカテゴリーチェンジャー)の販売を始める。これにより、glafitのペダル付き電動ハイブリットバイクは、法律上の区分において原付としてだけではなく、普通自転車としても街を走れるようになる。現行法では、状況を問わずペダル付き電動バイクは「原付一種」扱いとなるが、glafitは日本で唯一、バイクにも普通自転車にも切り替えられるという特例を得ている。glafitの鳴海禎造代表にglafitのバイクや起業の経緯などについて話を聞いた。

折りたたみ式の電動ハイブリットバイク「GFR」

glafitは折りたたみ式の電動ハイブリットバイク「GFR‐01」を2017年に販売し、現在までに5000台を売り上げている。2020年にはGFR‐01をフルモデルチェンジした「GFR‐02」を発表。2021年2月に行った先行予約販売分はわずか1時間で完売するなど、人気を集めている。

GFR‐02は普通自転車のようにペダルを漕いで走ることも、スロットルを回してバイクとして走ることも可能な折りたたみ式の電動ハイブリットバイクだ。価格は税込19万8000円で、本体の重さはバッテリー込みで約20kgとなる。

全長は1250mmで、折りたたみ時には650mmになり、クルマのトランクやマンションのベランダなどにも簡単に置くことができる。最高速度は時速約30kmで、走行距離はおよそ25kmとなる。リチウムイオンバッテリーのため、家庭用コンセントから充電可能。100%電動で動くカーボンフリーのエコなモビリティだ。

家庭用コンセントで充電可能

GFR‐02は01と比べて、ペダル走行時の走行速度の高速化のため、クランク側のチェーンリングの大型化を図った。また、折りたたみが楽にできるよう変更し、より安定してGFR-02が自立できるようになっている。鳴海氏は「電動ハイブリットバイクとして大きく進化しました」と胸を張る。

しかし、普通自転車としての側面はあるものの、モビチェンを後付けしなければ法律上の区分では原付であるため、車道しか走ることができない。

1台で普通自転車とバイクを切り替えるモビチェン

モビチェンのイメージ(販売モデルのデザインとは異なる)

電動バイクと普通自転車の切り替えを可能にする新機構「モビチェン」は2021年夏以降に、オプションとして販売をする予定で、まずGFR-02に後付けできるようにしていく。GFR-01のモビチェン後付けについては今後対応を検討していく。

glafitは2019年に内閣府のサンドボックス制度で認可された実証実験を経て、モビチェンを後付けしたglafitのGFRシリーズは「バイクの電源を切り、ナンバープレートを覆った時は道路交通法上、普通自転車」として取り扱えることが認められた。これによりユーザーは、電動バイク時は原付、自転車時は普通自転車として乗ることができるようになる。

鳴海氏は「現状、glafitのGFRシリーズのみに認められた特例になります。他のハイブリットスタイルのペダル付き電動バイクは、原付扱いしか認められていないため、ペダルを漕いで走る場合も車道しか走ることができません」とした。

モビチェンはナンバープレートを覆うカバーの構造になっている。モビチェンの切り替え作業は、電源をオフにし停車したときに手動で行わなければならない。モーターの駆動は電子制御だけではなく、この必ず電源をオフにして行う作業を入れることで担保している。モビチェンには交通標識デザインに沿った普通自転車のピクトグラムが描かれており、切り替え時に普通自転車であることが通行人らに明確に伝わるようになっている。

モビチェンを後付けしたGFR-02は、電動バイクとして車道走行も、普通自転車として歩道や自転車レーン走行も可能になる。ユーザーは状況に合わせて柔軟に走り方を変更できるのだ。これでバッテリーが切れた時なども快適に進むことができるだろう。なお、普通自転車が歩道走行するには、歩道に「普通自転車歩道通行可」などの標識がある場合など、一定の条件が定められている。モビチェンを取りつけたglafitのバイクも同様だ。

サンドボックス制度を活用した特例

2018年に始まったサンドボックス制度は、関係省庁の既存の規制を受けずに、新技術の実証ができる環境を整えるものだ。glafitが2017年に販売を始めたGFR-01は原付に区分されるため、通行できるのは車道だけだった。このため、glafitはサンドボックス制度の認可を受けて、2019年11月から2020年1月までの3カ月間、和歌山県和歌山市の公道で普通自転車としての走行や安全性などを実証してきた。

鳴海氏は「交通量が多く、自転車レーンがある場合など、最適な道を選択できる幅をglafitのバイクにも持たせたいと考えていました。私のわがままではなく、ユーザーの声としてもありました。つまりユーザー代表として我々が国に声を届けたということです。実はここが重要で、これまでは法律が変わらなければ、サービスが開始できないといった議論が多くありました」と語る。

glafitはすでに、現行法の下でプロダクトを提供してきていた。鳴海氏は「法律の解釈を変えることができれば、国民がより安全、快適に生活できることに繋がります。単なるサービス開始のための法改正といった願望だったら、国も相手にしてくれなかったかもしれません」と振り返る。

実証実験の結果、参加者の約8割から、ペダル走行時のglafitのバイクを普通自転車として認める規制緩和をすべきという回答を得た。glafitは実証実験の結果も踏まえ、普通自転車として取り扱われるよう国にモビチェンによる安全性の担保などの説明し、今回の特例を受けることができた。

glafitのバイクができるまでの長い道のり

glafitの鳴海禎造代表

鳴海氏はシリアルアントレプナーだ。これまでglafitを含めて5社立ち上げている。鳴海氏は15歳から自力でビジネスを始め、自作で組み立てたオリジナルPCの販売などを行っていた。18歳でクルマの免許を取るとその魅力に取りつかれた。愛車を改造する度に出た交換部品をネット販売すると、買い手が多かった。この経験がきっかけとなり、鳴海氏はカービジネスにつき進んでいく。

2003年に自動車販売店を個人創業し、そこで新規事業としてカー用品事業を立ち上げる。2007年には同事業を独立させて「FINE TRADING JAPAN」を設立した。さらに2008年には単身海外に出て、ゼロベースから中国本土にカー用品などの製造請負会社と、この貿易を担う貿易会社を香港に立ち上げる。

鳴海氏は「中国の製造請負会社はglafit製品における部品の製造管理も行っており、ものづくりの重要なハブになっています」と説明する。

ターニングポイントとなったのは2011年、鳴海氏が30歳を過ぎたころだ。フォーバル創業者で会長の大久保秀夫氏と出会い、弟子入りをした。鳴海氏は「大久保さんに手とり足とり教わる中で言われたのが『100年ビジョンを持て』ということでした」と振り返る。

鳴海氏は悩んだ末、21世紀を代表する自動車メーカーを目指すことを決めた。FINE TRADING JAPANの新たなプロジェクトとして、2012年に「glafit」が生まれる。プロジェクトは電気自動車を作ろうと始めたが、まず二輪自動車から作ってみようと、2015年に社員から「GFR」の案が出た。鳴海氏は「私が考えるバイクとはまったく違うものでした。クルマ好きな私もおもしろいと思ったので、これはいけると直感しました」と語った。

鳴海氏は2017年に、Makuakeに電動ハイブリットバイクのプロジェクトを公開する。結果、目標金額の300万円をプロジェクト開始からわずか3時間で達成した。最終的に約1億2800万円が集まり、当時の国内クラウドファンディングにおける資金調達額の最高記録を樹立した。

鳴海氏は「プロダクトは高い評価を得ることができました。それならばスピンアウトして、会社として独立しようと決断しました」という。そして2017年、現在のglafitが立ち上がった。

また、国内で小型電動モビリティ事業を展開するglafitをはじめとした6社で2020年9月「日本電動モビリティ推進協会」(JEMAP)を設立した。鳴海氏は同協会の代表に就任している。同協会では次世代に向けた電動モビリティの在り方の提言や普及を進めていく考えだ。今後、glafitなどの小型電動モビリティスタートアップが、モビリティ領域を大きく変革させていくかもしれない。

関連記事:国内小型電動モビリティ系スタートアップなど6社が「日本電動モビリティ推進協会」を設立

カテゴリー:モビリティ
タグ:glafit電動自転車日本電動モビリティ推進協会日本

画像クレジット:glafit

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