デジタル住宅ローン融資のBetter.com(ベター)は、日本の投資コングロマリットであるSoftBank(ソフトバンク)から5億ドル(約548億円)の資金調達を行い、同社の価値を60億ドル(約6571億円)とした。
この資金調達はいくつかの理由で注目されている。まず、同社の60億ドルという新たな評価額は、2020年11月にシリーズD投資ラウンドで2億ドル(約219億円)を調達した際の評価額40億ドル(約4381億円)から50%アップしていること。2019年8月のシリーズCラウンドで資金調達した当時の6億ドル(約657億円)という評価額からは10倍にもなっている。
2つ目の理由としては、伝統的に「魅力的ではない」業界で、長い間分裂を必要としてきた住宅ローンが、公式にホットであるとさらに証明されたということだ。ソフトバンクが投資すれば、間違いなく人々は注目する。
新型コロナウイルスの大流行と過去最低水準の住宅ローン金利は、誰も予想しなかった方法でオンライン住宅ローン融資の分野を加速させた。これにベンチャー投資における全体的な熱気が合わされば、Better.comがわずか数カ月の間に7億ドル(約767億円)を調達したことも大きな驚きは与えない。
今回の投資によって、2014年の創業以来、Better.comが調達した資金総額は9億ドル(約986億円)を超えた。ソフトバンク以外の支援者には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)、American Express(アメリカン・エキスプレス)、Activant Capital(アクティバント・キャピタル)、Citi(シティ)などが含まれている。
The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)によると、ソフトバンクはBetterの既存の投資家から株式を購入し、同社創業者でCEOのVishal Garg(ヴィシャル・ガーグ)氏に、同社に投資する「熱心さの表れ」として、すべての議決権を与えることで合意したという。
2020年10月に開催されたバーチャルイベント「LendIt Fintech(レンディット・フィンテック)USA 2020」で筆者が行った個別インタビューの中で、ガーグ氏は「IPOは間違いなく実現する」と語っていた。
「適切な時にやるつもりです」と、彼は言った。「米国資本主義の核となる信条の1つは、ある会社の顧客がその会社の株を買えるということです」。
そして2021年2月には、Betterが米国での新規株式公開に向けて、Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)と Bank of America Corp(バンク・オブ・アメリカ)を起用したと、Bloomberg(ブルームバーグ)が報じた。IPOの前に多額の資金を調達することは珍しいことではない。例えば、後払いや分割払いによる決済サービスを提供するフィンテック企業のAffirm(アファーム)は2020年それを行った。
2020年10月にヴァーグ氏が筆者に語ったところによると、新型コロナウイルス感染流行前のBetterは月に約12億ドル(約1315億円)のローンを処理していたが、2020年10月の時点では月に25億ドル(約2739億円)以上の資金を調達し、スタッフも1500人から世界中で約4000人に増えていたという。
「新型コロナウイルス感染拡大が始まったとき、私たちの収益は月に5000万ドル(約54億8000万円)にも満たないものでした。今はその2.5倍です」と、当時ヴァーグ氏は語っていた。
その後、この数字はさらに上昇している。同社の広報担当者によると、Better.comは2021年の第1四半期だけで140億ドル(約1兆5300億円)のローンを提供し、現在は月に40億ドル(約4380億円)以上のローンを提供しているとのこと。ちなみに、同社が2020年の全期間で提供したローンの総額は、250億ドル(約2兆7400億円)だった。また、現在の従業員数は6000人で、2020年10月からさらに2000人増加しているという。
関連記事:米不動産販売が急増しIPOが迫る中、住宅ローンのBetter.comのCTOにダイアン・ユー氏が就任
カテゴリー:フィンテック
タグ:Better.com、ソフトバンクグループ、資金調達、ローン、不動産
画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch
[原文へ]
(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)