Facebook(フェイスブック)の自称「監督委員会」(FOB)が運用の変更を発表した。この自主規制コンテンツ管理決定審査機関の限界に対する批判に答えることが目的と思われる。同委員会は、FacebookとInstagramにコンテンツを残す決定を見直す申し立てをユーザーから受け付けることにした。
この動きはFOBの権限を、コンテンツ削除の見直し(ほとんどが撤回)以上に拡大するものだ。これまで同委員会の判断は、Facebookの経済的誘因に沿ったものであるという批判を受けてきた。同社のビジネスがコンテンツへのユーザーアクセスの増加から利益を受ける(悪意あるコンテンツはクリックを誘発しユーザーを引き止める)からだ。
「これまでユーザーは、FacebookまたはInstagramに『復活』させるべきだと考えるコンテンツを委員会に申し立てることができました。これからは、FacebookまたはInstagramから『削除』されるべきだと考えるコンテンツについても委員会に申し立てることができます」とFOBは言い「何を残し何を取り除くかは独自の判断に基づく」ことを付け加えた。
さらに「我々の決定はFacebookを拘束します」ことも付け加えた。
Facebookにコンテンツの削除撤回を依頼する機能は、全世界に適用されるとFacebookは述べている。しかしテック巨人は、新しい体験の安定性を確認するために段階的に展開するため、全ユーザーが利用できるようになるまでには「数週間」かかるという。
これでFOBは、(コンテンツを削除「しない」という会社の以前の決定を覆す正当な理由があると委員会が信じた場合)FacebookとInstagramから個々のコンテンツを削除できるようになったが、委員会はFacebookに対して同社のコンテンツ管理ポリシー全般に対して関連する提案を受け入れるよう強制することはできない。
それはFacebookが、FOBのポリシー提案に拘束されるとは言っておらず、審査ごとの最終判断にのみ拘束されるからだ。
結果的にテック巨人の言論取締り方法にFOBが影響を与える能力は限定される。実際、すべての行動はFacebookと一体不可分であり、FOBを設立、構成したのは同社である(委員会の設立趣意書と規約を書き、第一次メンバーを自分で選んだ)。つまり同社は今後も、その自主規制の道具と、人のプロファイリングとターゲット広告による裕福な帝国とを繋ぐ切れない糸を操り続けることになる。
FOBがコンテンツの「存続」(と呼ぶことができるなら)を見直す能力を得ることは、管理に関して委員会が何も「言わない」とFacebookが確認していいる山のようなコンテンツのことを考えると、事実上意味はない。資源と人手の限界から、審査の対象となるのは途方もなくわずかな事例だけだからだ。
監視機関がFacebookの権力に対して意味のある制約を加えるためには、今よりもはるかに骨のある(つまり法的な)権力が必要だ。Facebookビジネスのあらゆる面(ユーザー生成コンテンツの審査だけでなく)を自由に探索することが可能で、広告テックの母艦から真に独立した存在であること。そして、執行と制裁の有意な力を持つことだ。
つまり、公的機関として公益のために機能する必要がある。
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しかし、Facebookは社内弁護士を大挙動員して、「真の」民主的な規制監視と規則遵守と戦い、同社の言論趣旨に沿った特注の官僚主義を金に飽かして作ろうとしている。都合のよい外部専門家を雇い、金を払って自作の危機PRドラマでコンテンツ審査に顔見せ出演させる。
そして予想されたとおり、現在のところFOBは概ね言論自由化の方向に舵を切っている。しかし、一方でFacebookの配ったカードの制約に不満も漏らしている。
最も注目すべきなのは、委員会がドナルド・トランプ前米国大統領に対するFacebook永久追放を撤回するかどうかの決定を未だに保留していることだ。もし決定を覆せば、Facebookユーザーはトランプ氏のアカウント復活に異議申立てをする道がなくなる。
おそらく唯一の可能性は、ユーザーがトランプ氏の将来のコンテンツに対してFacebookにポリシー違反を訴えることだろう。そしてもしFacebookがそれを却下したら、今度はFOBに審査を要求できる。しかし、ここでも、FOBがそのような審査要求を受け付ける保証はない(実際、もし委員会がトランプ氏の復権を決定を選んだとすれば、トランプ氏のコンテンツの審査要求を受け作る可能性は、少なくとも短期的には難しくなるかもしれない(事件簿の多様性維持のために)。
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削除されていないコンテンツの審査を要求する方法
掲載され続けているコンテンツの審査をFOBに要請するために、FacebookとInstagramのユーザーは、まずFacebookとInstagramにコンテンツを報告する必要がある。
もし会社がそのコンテンツを存続させると決定した場合、報告者は監督委員会参照ID(FBで始まる10文字の文字列)をサポート受信箱で受け取る。報告者はこれを使って会社の「削除せず」決定を監督委員会に申し立てることができる。
異議申し立てにはいくつか超えなければならないハードルがある。ユーザーは画面の指示に従って、監督委員会ウェブサイトへ誘導され、参照IDが発行されたアカウントでログインする。
次にコンテンツを報告した理由に関していくつかの質問に答えるよう求められる(「Facebookが誤った判断をしたとあなたが思う理由を委員会が理解するため」に)。
異議申し立てが送信されると、監督委員会は審査を行うかとをかを判断する。委員会は一定数の「適格な異議申し立て」のみを選んで審査を行う。そしてFacebookは、委員会が審査を行う数と提出数の比率を、事例毎でも全体としても公表していない。つまり、あるコンテンツに関して提出が成功する確率は未知(かつ不可知)数である。
存続しているコンテンツに対して異議申し立てを提出したユーザーは、自分の異議申し立ての状況を監督委員会のウェブサイトで確認できる。ここでもログインと参照IDが必要。
もう1つの制限は時間であり、FacebookはFOBへの異議申し立てには申請期限があると注意している。
「監督委員会に異議を申し立てることができる期間には期限があります。異議を申し立てることができる期間を過ぎると、異議申し立てを送信できなくなります」とヘルプセンターに書かれているが、申立てできる期間が何日あるのかは書かれていない(本誌がFacebookに尋ねたところ15日間であることを確認した。日本語版注:現在、英語版には15日間と明記されている)
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook )