ソニーがXperiaシリーズのフラッグシップ「Xperia 1 III」を発表しました。デザインを前モデルから踏襲しているため、一見すると、前モデルの「Xperia 1 II」から大きく変わっていないようにも見えますが、カメラ・ディスプレイ・オーディオなど、Xperiaが得意とする機能が確実に進化しています。
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可変式レンズと大型イメージセンサーで望遠でも高画質に
まずカメラですが、「Xperia 1 III」では望遠カメラを大きく強化しています。望遠は70mm(光学2.9倍)と105mm(光学4.4倍)に切り替わる可変式望遠レンズを採用しています。
ペリスコープ構造で取り込んだ光を屈曲させることで距離を稼いでいる点は、他の望遠を売りにする端末と同じですが、その中のレンズがスライドすることで、倍率を切り替える仕様になっています。見た目的にはトリプルカメラですが、実質的にクアッドカメラとして使えるというわけです。
一般的にペリスコープ型の望遠カメラはレンズが暗くなり、画質がイマイチになりがちです。一方の「Xperia 1 III」はセンサーサイズが1/2.9と望遠カメラの中では大きめ。さらにレンズも70mmでF2.3、105mmでF2.8と明るめです。
日本向けの他の機種だと、例えば「Galaxy S21 Ultra」は光学3倍望遠がF2.4なのに対し、光学10倍望遠はF4.9。OPPOの「Find X2 Pro」は光学10倍望遠でF3.0と、高倍率は比較的暗めです。「Xperia 1 III」の望遠カメラは倍率こそ低めですが、メインカメラとの差分を減らし画質を強化していることがうかがえます。
また、ズームレンズにもDual PDのセンサーを採用しているため、オートフォーカスのスピードが速いのも特徴です。単に望遠の倍率を追い求めるのではなく、望遠でも105mmまでに抑えながら、仕上がりのよさを重視しているのはXperiaらしいところです。
ちなみに、24mmの広角レンズはもちろん、16mmの超広角レンズにもDual PDのセンサーを採用しています。画素数は「Xperia 1 II」と同様に1200万画素に統一。こうした“デジカメらしさ”を追求しているのはXperiaならではと言えそうです。
デジカメらしい点では、「Xperia 1 III」から標準のカメラアプリが廃止され、カメラの操作はαの操作を模した「Photography Pro」に一本化されています。より正確に言えば、Photographyにスマホライクな撮影ができる「BASIC」モードを追加することで、標準カメラアプリを統合したというわけです。「Xperia 1 II」までは2つのカメラアプリに分かれてしまっていて、どちらを起動すればいいか迷うこともありましたが、統合によって操作性がシンプルになった格好です。
Photography ProのBASICモードでは、画面上にシャッターボタンが表示されます。動画撮影やインカメラでの撮影ができるのも、こちらのモード。標準カメラで必要とされていた機能を、ほぼ丸ごとBASICモードとしてPhotography Proに吸収させたことがうかがえます。
メリットとしては、これまで標準カメラで利用できなかった秒間60回のAF/AEや、リアルタイム瞳AFに対応している点が挙げられます。Xperiaのカメラ機能を引出しつつ、スマホ風の操作で写真を撮りたい人に向けたモードがBASICモードと言えるでしょう。
ディスプレイは世界初の4K 120Hz駆動に対応
次に、ディスプレイですが、こちらは従来からの4K HDRに加えて、120Hz駆動にも対応しました。ここまでの高解像度と、120Hzの高速駆動を両立させたのは世界初です。120Hz駆動だけなら、昨年発売された「Xperia 5 II」でも実現していましたが、あちらは解像度がフルHD+。対する「Xperia 1 II」は、4K HDR対応ながら、ディスプレイのリフレッシュレートは90Hz“相当”までしか上げられていませんでした。「Xperia 1 III」で晴れて4K HDRと120Hzに両対応できたというわけです。
さらに、「Xperia 1 III」では、ディスプレイの色ずれを個体ごとに補正するディスプレイキャリブレーションを実施しています。
キャリブレーションと言えば、最近では「Xperia PRO」、もう少しさかのぼると「Xperia 1 Professional Edition」でも行われていた作業ですが、どちらかいうと、プロ向け端末のための工程といった感がありました。出荷台数も多いであろう、フラッグシップモデルの「Xperia 1 III」は、これら2機種以上に手間がかかることは確かですが、個体ごとの違いがないというのは購入する側にとって安心感があります。
Xperia 1 II比でスピーカーの音圧が40%向上
カメラ・ディスプレイに続く3つ目の強化点はサウンドです。まず、ハードウェアとして、スピーカーの構造を見直し、音圧を「Xperia 1 II」比で40%向上させました。Dolby Atmosにも対応していますが、さらに、ソニー・ピクチャーズ エンタテイメントが独自のチューニングを施しているところはソニーグループならでは。スピーカーだけでなく有線イヤホン/ヘッドホン接続時の音圧も40%アップしています。
さらに、本体のスピーカーだけで、360 Reality Audioを楽しむこともできます。対応するストリーミングサービスが「TIDAL」のみで、TIDALが日本でのサービスを展開していないため、実質的に日本では利用できない機能になってしまっているのは残念ですが、サービスインを期待したいところです。
これとは別に、通常のステレオ音源を立体化できる「360 Spatial Sound」にも対応しており、こちらはヘッドホンで楽しむことができます。
カメラ、ディスプレイ、オーディオと、ソニーの得意分野をさらに磨いた格好の「Xperia 1 III」ですが、スペックが底上げされている点も見逃せません。チップセットにはSnapdragon 888を採用。メモリ(RAM)は12GBと大容量です。ストレージ(ROM)は2パターンあり、地域によって256GBか512GBのどちらかが採用されるといいます。
スペック面で注目したいのは、ミリ波に対応したところ。これも地域に応じて対応の可否が変わるため、日本版がミリ波対応するかどうかは不明ですが、Sub-6のみだった「Xperia 1 II」からは大きな進化です。
ちなみに、Sub-6版とミリ波版ではアンテナ構造の違いから、本体デザインにも差分があるようです。具体的には、Sub-6版がアンテナ用のスリットが見える以下の写真のようなデザインなのに対し、ミリ波版は逆に継ぎ目がないように色が加えられているとのこと。
「iPhone 12」シリーズは、米国のみミリ波対応だった一方、側面にちょっと残念なアンテナが露出していましたが、「Xperia 1 III」の場合はミリ波版の方がよりソリッドなデザインに仕上がっていると言えるでしょう。
ただし、側面に関しては「Xperia 1 II」より1つボタンが増えています。ソニーによると、これはGoogleアシスタントボタンとのこと。「Xperia PRO」のように、アプリの割り当てはできないのは残念なお知らせです。ボタンに凹みがあり、かつカメラボタンには「Xperia 1 III」からエンボス加工が施されているため、押し間違えはなさそうですが、右側面がボタンだらけなのは少々いただけません。
Googleアシスタントボタンは、グーグルが一部メーカーに対して搭載するよう働きかけているという話を耳にしますが、当のグーグルが作るPixelにもないボタンなだけに、対応の一貫性には疑問が残ります。Googleアシスタントは声や画面の下の隅をフリックすれば呼び出せるため、専用ボタンまでは必要がない人も多いはず。せめてほかのアプリが割り当てられるようになっていれば……と思わざるをえませんでした。
背面ガラスのフロスト加工を全色へ拡大
デザインは「Xperia 1 II」に似ていますが、背面の処理を変え、差別化を図っています。「Xperia 1 II」はピカピカの光沢があったのに対し、「Xperia 1 III」はマットな手触り。「Xperia 1 II」のSIMフリー版にあったフロスト仕上げが全色に採用されています。
カラーはフロストブラック、フロストグレー、フロストパープルの3色で、発売は初夏を予定しているとのこと。日本ではキャリアの採用発表待ちですが、「Xperia 1 II」と同様、デュアルSIM対応のSIMフリー版にも期待したいところです。
(石野純也。Engadget日本版より転載)
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Xperia(製品)、ガジェット(用語)、スマートフォン(用語)、Sony / ソニー(企業)、日本(国・地域)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/04/15/sony-xperia-1iii/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Engadget Japanese