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AI制御の冷蔵庫って具体的に何がすごい?何ができる?

家電にもAIが搭載されるようになって、ますますIT化は進んでいる。しかし、どのような構造や仕組みで動いているのか、購買のための理由から考えても理解できるに越したことはない。そこで先日発表された三菱電機の新型冷蔵庫について、詳細なレポートを紹介しよう。

*  *  *

三菱電機は2021年4月23日、冷凍冷蔵庫「置けるスマート大容量」シリーズの最新モデル「WXD/WXシリーズ」を発売する。

「置けるスマート大容量シリーズ」は、過冷却技術を応用することによって約-7℃で食品を瞬時に凍結させる「切れちゃう瞬冷凍 A.I.」と、同じく過冷却技術によって約0℃~-3℃でも凍結させない「氷点下ストッカーD A.I.」が売りとなっている。

最新モデルでは冷蔵室や冷凍室、野菜室なども含めた全室に対して、各家庭の生活パターンを分析・学習し、冷却を自動制御する「全室独立おまかせA.I.」を搭載したことで、さらにこれらの機能が使いやすくなった。

さらに、上位モデルのWXDシリーズはWi-Fi接続に対応し、スマートフォンアプリ「MyMU」で外出先から急速製氷機能をオンにしたり、庫内の温度設定を変更したり、離れた家族の使用状況を確認することで見守り機能的に使うこともできるようになった。

■温度センサーや扉開閉センサーなど、計16個のセンサーで全室をしっかり管理

置けるスマート大容量シリーズのこだわりについて三菱電機 静岡製作所 営業部 冷蔵庫営業課の遊佐正治氏は「全室をきちんと仕切っている『全室独立構造』にあります」と語る。

▲遊佐正治氏

「このシリーズでは全室に温度センサーや扉開閉センサーなど合わせて計16個のセンサーを搭載しており、開け閉め、つまり使用時の把握と、温度の管理を各部屋でしています。約-7℃の温度帯の『瞬冷凍室』も、全室をきちんと仕切って温度管理、扉開閉管理をしているからこそできる機能です」(遊佐氏)

▲温度センサーや扉開閉センサーなど、16個のセンサーを搭載している

「氷点下ストッカーD A.I.」と「切れちゃう瞬冷凍 A.I.」に加えて、「全室独立おまかせA.I.」になって新たに搭載したのがAIによる「急速自動製氷」の制御と「熱いまま自動で瞬冷凍」の制御、さらに冷凍室の「霜付き抑制」だ。

まずは「氷点下ストッカーD A.I.」と「切れちゃう瞬冷凍 A.I.」からおさらいしていこう。

「氷点下ストッカーD A.I.」はゆっくりと冷却することで氷点下でも凍結しない「過冷却現象」を応用し、約-3℃~0℃の氷点下でも食材が凍らないというもの。最新モデルではAIがユーザーの活動時間と非活動時間を学習・分析して過冷却状態を保つ。

▲-3℃~0℃の氷点下でも食材が凍らないように制御する「氷点下ストッカーD A.I.」

「非活動時間の時にもう少し温度を下げることで、1日の平均温度を下げ、しっかり鮮度長持ちに貢献します」(遊佐氏)

▲「氷点下ストッカーD A.I.」の制御

「切れちゃう瞬冷凍 A.I.」は約-7℃まで過冷却状態を保ち、そこで瞬時に氷核を形成させることで、通常の冷凍で起こる食材の細胞破壊を抑えておいしく冷凍できるというもの。約-7℃と冷凍室(約-18℃)よりも温度が高めなので、食品を解凍せずにそのまま切ったり、スプーンですくったりして調理に使えるのも魅力だ。

▲約-7℃で瞬時に凍結させることで、食材を解凍せずに使える「切れちゃう瞬冷凍 A.I.」。温かい食品もそのまま瞬冷凍できる

▲「切れちゃう瞬冷凍 A.I.」の温度制御

「こちらも深夜帯などの冷蔵庫を使わない非活動時間に、温度を全体的に下げることで保存期間を延ばすようにしています」(遊佐氏)

▲深夜などの非活動時間帯に温度を下げることで保存期間を延ばすという制御を行っている

2019年モデルから搭載する「切れちゃう瞬冷凍A.I.」では、2020年モデルでは温かい食品でもあら熱取り不要で冷凍できる「あついまま瞬冷凍」をAIが自動で判断して行ってくれるようになった。

「従来はタッチパネルで『あついまま瞬冷凍』のボタンを設定する必要がありましたが、新モデルは熱いものを入れるだけで自動的に感知し、急冷して粗熱取りをして熱いものをおいしく冷凍します。操作が苦手な人でも入れるだけでおいしく保存できるようになっています」(遊佐氏)

■氷室や冷凍室もAIで自動コントロール

新モデルで搭載したのが製氷室と冷凍室のAIによる自動制御機能だ。

「急速自動製氷」機能は、AIが家庭ごとの製氷室の利用タイミングを学習・分析し、氷を使うタイミングを予測することで、自動で急速製氷運転を実施するというもの。

▲AIによる「急速自動製氷」機能が新搭載された

「従来からボタンを操作して早く作ることはできましたが、AI化によって自動で急速に作ってくれるようになります。例えば朝に水筒に氷を入れて持っていくなど、朝に氷を使うことが多いと学習すると、夜の間に氷を作ってくれます。通常だと朝足りなくなるという場合でも、急速製氷で事前にたくさん作ることで朝たくさん使える、という機能です」(遊佐氏)

▲クリーン朝どれ野菜室もAIによる自動制御が加わった

冷凍室には、新たに霜付きを抑制しながら冷凍する「霜ガード」機能が搭載された。

▲冷凍室には、「しっかり冷凍室 霜ガード」機能を新搭載した

「扉を開閉すると外気が入って温度が上昇し、温度が上がった食材から水分が抜け、冷えて凍って霜になります。そこでAIが使用状況を分析し、庫内の温度変動を抑制する制御を行うことで霜付きを抑えます。扉開閉が多い時間帯の前に、しっかり冷やしこんで温度変動をなくすといった制御を行います」(遊佐氏)

■IoTにも対応し、「見守り」も利用できる

ここ数年で冷蔵庫にもWi-Fi機能を内蔵し、スマートフォンアプリなどと連携するメーカーが増えているが、三菱電機も2月発売のMXDシリーズも含め、いよいよWi-Fi対応を行った。上位モデルのWXDシリーズでは、Wi-Fiに接続し、スマートフォン向けの三菱電機家電統合アプリ「MyMU」を利用できる。

▲WXDシリーズはスマートフォンアプリ「MyMU」との連携機能を搭載した

MyMUでは、冷蔵庫の使い方の案内や食材の保存方法などを紹介。さらに遠隔操作で急速製氷機能をオンにしたり、庫内の温度設定を変えたりできる。

「扉開閉のデータを取得し、どの部屋がよく使われているといったデータもアプリで見られます。また、離れた家庭の扉の開閉を確認することで、見守り的にも使えます」(遊佐氏)

置けるスマート大容量シリーズは冷蔵室とチルドルーム、冷凍室・製氷室、野菜室に加えて、氷点下ストッカーと瞬冷凍室と、6つの温度帯の部屋を備えているのがユニークな特徴だ。ただし、冷蔵室とチルドルーム、氷点下ストッカー、瞬冷凍室は微妙に温度帯が近く、使い分けが難しい部分もある。

「氷点下ストッカーはチルドルームとは別の部屋を設けており、肉・魚専用ルームになっています。肉や魚をここに入れて、加工食品とうまく使い分けることで、どこに何を入れたらいいのかが分かりやすくなり、チルドの整理もしやすくなります」(遊佐氏)

氷点下ストッカーは約-3℃~0℃と氷点下ながら、凍らせない温度制御というのが特徴となっており、瞬冷凍室は約-7℃と比較的高めの温度で冷凍するというのが特徴だ。

遊佐氏は実体験として、「切れちゃう瞬冷凍は離乳食作りに便利でした」と語る。

「最近は小分けパックがあるので小分けにすればいいですが、うちで離乳食を作っていた当時は、まとめて作ってスプーンですくって使う……といった使い方が便利でした。最近ではミートソースなどをまとめて作って、在宅勤務中の短い昼休みにパスタだけをゆで、ミートソースを温めてあえるだけでお昼ご飯が済むなど、便利に使っています」(遊佐氏)

コロナ禍でステイホーム時間が延びただけでなく、まとめ買いで食材をより長持ちさせたいという需要も増えている。そんな中で、生の食材をより低温にして鮮度を保持できる氷点下ストッカーや、解凍しないでそのまま使える切れちゃう瞬冷凍はかなり重宝しそうだ。

「全室独立おまかせAIによって全体がAI化することで、自動で快適に冷蔵庫を意識せずに使ってもらえる形になりました。冷蔵庫は毎日使うものなので、家庭の生活に寄り添った機能を、今後もしっかりやっていきたいです」(遊佐氏)

>> 三菱電機「WXD/WXシリーズ」

<取材・文/安蔵靖志>

安蔵靖志|IT・家電ジャーナリスト 一般財団法人家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー、スマートマスター。AllAbout家電ガイド。ITや家電に関する記事執筆のほか、家電の専門家としてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。Facebookはこちら

 

 

 

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