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英国のドローンスタートアップsees.aiがBVLOS飛行試験の許可を取得

英国の民間航空管理局(CAA)は現地時間時間4月19日、産業用ユースケースのためのデータ収集を支援するBVLOS(目視見通し外)飛行のコマンド&コントロールソリューションを開発する同国のスタートアップsees.ai(シーズエーアイ)に、英国の民間企業としては初めて、BVLOSの定常運用の概念実証試験を認可したと述べた

この試験は、2019年5月に発表された、政府の資金援助と規制当局の支援をドローン分野の研究開発に向けるサンドボックスプログラムの一環として行われる。最初は、回避システムや検知システムの仮想テストから実施される。

Sees.aiは、このサンドボックスプログラムに早期から参加している企業の1つだが、これで、3つの(物理的な)試験場で、毎回事前の許可を得ることなく、定常BVLOS運用の概念実証試験が行える権限を手にした。

Techstars(テックスターズ)の支援を受けるこのスタートアップは、工業環境でのドローン運用、つまり、石油やガスなどの工業分野での検査や維持管理の目的に合わせてドローン利用の規模を調整し、フライトごとにパイロットが現地に赴かなくとも、特定の場所から遠隔操作できる技術の構築にフォーカスしている。

だが、BVLOS能力は、配達などの他分野のドローン利用にも欠かせないものであることは明らかだ。そのためCAAも、この試験を「ドローン業界にとって極めて大きなステップ」と呼ぶ。

「検査、モニター、維持管理といった工業環境で概念を試すことで、sees.aiはまずその状況での同社システムの安全性を実証し、その後に、時間をかけて、徐々に困難さを増すミッションへの対処をテストしていきます」と同局は話している。

現在の英国の規制では、特別な許可がない限り、オペレーターはドローンを見通せる範囲内に留め、英国のドローン規定に従わなければならない。

過去にその許可を得た企業に、米国のテック最大手Amazon(アマゾン)がある。2016年に英国でBVLOSによる宅配ドローンの試験を開始した。現在も、Prime Air(プライム・エアー)というブランド名で、商用ドローン配達サービスを市場に投入しようと活動を続けている。

Amazonの取り組みはすでに何年間にも及んでおり(実験は2003年から行われている)、2020年、Financial Times(ファイナンシャル・タイムズ)がPrime Airの文書を引用するかたちで伝えたところによると、世界中で大規模にドローン宅配が行えるようになるまでは、あと「何年」もかかるとのことだ。そのため、また別のBVLOSドローン技術の試験が英国で始まり、これが業界にとって規制当局の大変な進歩であったとしても、ドローン宅配がすぐにでも実現するという英国人の期待は、裏切られることになりそうだ。

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CAAがsees.aiに試験許可を与えたことで、BVLOSのテスト飛行は150フィート(約45メートル)以内で可能となる。最初は、ドローンを目視できる場所に監視人を置き、必要に応じてリモートのパイロットと通信ができるようにしておくことが規定されている。

つまり厳密に言えば、最初は、本当のBVLOSではなく、範囲を限定したEVLOS(拡張視野見通し内)飛行となる。つまり、リモートのパイロットから500メートル以上離れた範囲を飛行できるが、監視人を配置する必要があり、同社が最終目標としている完全に監視人を廃した飛行とはならない。CAAは、監視人を置かない飛行を目指していると明言しているが、それは試験によってsees.aiの概念が実証された場合だ。また同局は、この試験は、従来のEVLOS飛行とは異なるとも話している。監視人が常にパイロットと連絡を取り合う必要がないからだ。必要なときにだけ話ができる手段があればよい。

CAAが2020年秋に発表したロードマップによれば、範囲を限定しない空域での「ごく普通の」状態でのBVLOSになんとか到達するまでには、数多くの手順を踏まなければならない。そのため、商用ドローンが運用者から遠く離れた場所で合法的に飛び回りデータ収集(や荷物の配達)ができるようになるまでには、まだ道のりは長い。

「BVLOS運用における運用者の長期的な願望は、英国中の事業でそれがごく普通のものになることです。これが実現するためには、膨大な量の実証結果と、これに関わるすべての人の膨大な経験と学習が必要です。イノベーターにもCAAにもその未来を構築し、テストし、学習し、そして小さなステップを繰り返し行う努力が欠かせません」とCAAのロードマップには記されてる。

sees.aiのCEOであるJohn McKenna(ジョン・マッケナ)氏は声明の中で、今回の試験の許可を「極めて画期的な出来事」と称し、こう述べている。「私たちは、ドローンが大規模に自律飛行する未来に向かって加速しています。そこには、上は有人飛行から、下は工場や校外や街といった範囲内の飛行が含まれます。英国で初の許可を取得したことは、この旅の大きな一歩となり、公共衛生および安全から、効率化や環境へのインパクトに至るまで、大きな社会的恩恵をもたらすことになります」。

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カテゴリー:ドローン
タグ:sees.ai民間航空管理局(CAA)イギリスドローン配送

画像クレジット:sees.ai

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:金井哲夫)

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