Spotify(スポティファイ)との競争が激化する中、Apple(アップル)は米国時間4月20日、ポッドキャストのサブスクリプション(有料定額制)配信サービスを開始すると発表した。同社の「Spring Loaded」イベントで発表された「Apple Podcasts(アップル・ポッドキャスト)」のサブスクリプションサービスは、リスナーが定額料金を支払うことで、広告なしの聴取、エピソードへの早期アクセス、お気に入りのクリエイターをサポートする機能などの「利点が追加」される。このサービスは、Apple Podcastsアプリのアップデートで利用可能になる。このアップル純正ポッドキャストアプリでは、引き続き無料のポッドキャストも探して聴くことができる。
今回の新サービス「Apple Podcasts Subscriptions(アップル・ポッドキャスト・サブスクリプション)」の発表は、Spotifyのポッドキャストリスナー数が、2021年に初めてアップルのそれを上回る見込みとの業界レポートが発表された直後のことだ。
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アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOは、イベントの開始時にこのサブスクリプションを簡単に紹介し「Apple Podcastsのデビュー以来最大の変更」と言及した。
今回のアップデートでは、番組やエピソードのページが新たにデザインされ、ポッドキャストの聴取、フォロー、共有が容易になると、クック氏は述べている。また、お気に入りのクリエイターの番組を探したり、おすすめの番組を見つけられる「チャンネル」機能も新たに追加された。ここには無料チャンネルの他に定額料金を支払うことでさまざまな特典がある会員向けの有料チャンネルが用意される。
チャンネルとは要するに、クリエイターがキュレーションした番組のグループで、チャンネルごとに「独自のタイトル、説明、アートワーク」が付けられるという。
また、エピソード型の番組では最新のエピソードから、連続型の番組では各シリーズの最初から自動的に開始できるようにする「スマートプレイ」ボタンも搭載される。その他の新機能としては、ユーザーが個々のエピソードを保存してオフラインで再生できるようになったほか、トップチャートにすばやくアクセスできるように検索タブが強化された。ポッドキャスター用のApple Podcasts Connect(アップル・ポッドキャスト・コネクト)ダッシュボードも刷新され、番組のメタデータの編集、番組の配信予約と管理、チャンネルへの追加、複数のユーザーと役割の管理、そして新たに用意されたパフォーマンス指標と可視化ツールによる番組の再生記録の追跡などが可能になる。
アップルはこの新サービスを、170以上の国と地域のリスナーに2021年5月から提供すると発表した。
アップルはプレスリリースの中で、最初のプレミアム有料配信は、Tenderfoot TV(テンダーフットTV)、Pushkin Industries(プーシキン・インダストリーズ)、Radiotopia from PRX(ラジオトピア・フロム PRX)、QCODE(キューコード)の他、NPR、Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)、The Athletic(アスレチック)、Sony Music Entertainment(ソニー・ミュージックエンタテインメント)といった大規模ブランドなど「独立系の音声と一流のスタジオ」の双方から番組を提供すると述べている。
「15年前、アップルはポッドキャストを普及させ、クリエイターに最高のオープンプラットフォームを提供して、世界中の何億人ものリスナーに情報を提供し、楽しませ、刺激を与えてきました」と、アップルのインターネットソフトウェア&サービス担当上級副社長のEddy Cue(エディ・キュー)氏は声明の中で語っている。「現在、Apple Podcastsは、リスナーが何百万ものすばらしい番組を発見し、楽しむことができる最高の場所となっています。そして今回、私たちはApple Podcasts Subscriptionsによって、ポッドキャスティングを次の章に導くことを誇りに思います。このパワフルな新しいプラットフォームを世界中のクリエイターに提供できることに、私たちはワクワクしています。これを使ってクリエイターのみなさまがどのような作品を配信するのか、それを聴くのが楽しみで仕方ありません」。
アップルがポッドキャストのサブスクリプションサービスを計画しているということは、Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)が同社のポッドキャストアプリに有料配信オプションを追加する準備が行われていると報じたほか、Vox Media(ヴォックス・メディア)のPeter Kafka(ピーター・カフカ)氏が、アップルは新製品発表イベントで有料のポッドキャスト配信を発表するだろうと語ったことから、すでに予想されていた。
また、iOS 14.5ベータ版には、デザインが変更されたPodcastアプリの「今すぐ聴く」タブにアカウントボタンが設けられているなどのヒントも見られた。MacRumors(マックルーマーズ)は、番組の通知がこの場所に移されたことを報じ、将来的には有料サブスクリプションの管理もこの新しいエリアで行われるのではないかと予想していた。
定額制ポッドキャストへの参入は、Apple PodcastsおよびApple Musicの競合相手であるSpotifyが長年にわたって多額の投資を行ってきたことを受けたものだ。Spotifyはアップルに対する批判の先鋒でもある。
Spotifyは2021年2月、自社のプラットフォームに登録されているポッドキャストの数が、前年比3倍の220万件に増えたことを発表した。同社はまた、Joe Rogan(ジョー・ローガン)氏、Kim Kardashian(キム・カーダシアン)氏、 DC Comics(DCコミックス)、Michelle Obama(ミシェル・オバマ)氏、サセックス公爵および公爵夫人などのビッグネームと、長年にわたってさまざまな独占契約を結んできた。ポッドキャスト関連のスタートアップやアドテクノロジー、スタジオの買収も続けており、その中にはホスティングや広告を手がけるMegaphone(メガフォン)、Anchor(アンカー)の制作ツール、Gimlet(ギムレット)、The Ringer(ザ・リンガー)、Parcast(パーキャスト)といったコンテンツ制作会社が含まれている。
最近では、SpotifyはAnchorの機能を利用して独自のポッドキャストのサブスクリプションを計画していることを発表したり、ライブチャットアプリ「Locker Room(ロッカー・ルーム)」を運営するBetty Labs(ベティ・ラボ)の買収を通じてライブオーディオ分野にも投資を行っている。ちなみにSpotifyは、定額購読料による収入をポッドキャストの制作者に分配し、制作者は収益の大半を確保できると語っていた。
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ポッドキャスト制作者が知っておくべきこと
- Apple Podcast Subscriptionsに詳しい人の話によると、アップルはポッドキャスト制作者がサブスクリプションの一部として提供する条件には口出ししないとのこと。これはオープンな市場であり、ポッドキャスト制作者は、広告なしの聴取、ボーナスエピソード、過去に配信された番組へのアクセスなどを提供するかどうかを選択することができる。
- 番組は完全無料か有料、または誰でもアクセスできる無料コンテンツと有料会員へのアップグレード機能を組み合わせた「フリーミアム」のいずれかを選択できる。
- 価格は、米国では月額約0.49ドル(約53円)からとなっており(App Storeとは違うようだ!)、クリエイターは自分で価格を設定することができる。
- アップルは、ストリーミングサービスやその他のサブスクリプション製品と同様に、1年目は売上の30%を受け取り、2年目には15%に下げる。
- ポッドキャスターは自分の番組をどこにでも配信することができる。Apple Podcast専用にする必要はない。つまり、Spotifyなどの他のプラットフォームにも有料コンテンツを提供し、収益を増やすことができるということだろう。
- アップルは、現時点ではポッドキャスター向けに広告を販売していない。広告収入は、クリエイターが100%取得できる。
- クリエイターは、Apple IDやそれに関連するメールアドレスなど、リスナーの個人データにアクセスすることはできない。ポッドキャストのアナリティクスでは、匿名化され、集約されたインサイトが提供される。
- しかし「最も熱心なリスナー」や「上位の都市」などの新たな指標を追跡することはできる。これは、クリエイターが最大のファンに合わせてポッドキャストを調整したり、次のライブショーを計画したりするのに役立つだろう。
- サブスクリプションは、個々の番組またはチャンネルと呼ばれる番組グループのいずれかに対して設定することができる。例えば、有料のポッドキャスト配信サービス「Luminary(ルミナリー)」は「チャンネル」だ。Radiotopia(ラジオトピア)のようなポッドキャストネットワークもチャンネルになる。
- チャンネルも、個々の番組と同様に、無料、有料、フリーミアムのいずれかに設定することができる。また、国ごとに配信の有無や価格を設定することも可能。
- サブスクリプションコンテンツのアップロードは、RSSではなくApple Podcasts Connect経由で行われる。
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タグ:Apple、APPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021、ポッドキャスト、サブスクリプション、Spotify
画像クレジット:TechCrunch
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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)