インド中央銀行は、同国におけるデータ保存規則の違反を理由に、American Express(アメリカン・エキスプレス)とDiners Club(ダイナースクラブ)が新規顧客を増やすことを2021年5月から制限するとインド時間4月23日に発表した。
インド準備銀行(RBI、Reserve Bank of India)は声明の中で、2つのカード会社のいずれかを利用している既存の顧客は、5月1日に発効するこの新しい命令による影響を受けないと述べている。
インド中央銀行が、2018年に発表された同国のデータ保存規則へのコンプライアンス違反を理由に企業にペナルティを科すのは、今回が初めてだ。この規則では、決済企業はすべてのインドでの取引データを同国内のサーバーに保存することが求められている。
Visa(ビザ)やMastercard(マスターカード)をはじめとする複数の企業と米国政府は、これまでにインド政府に対し、規制当局の「自由な監督アクセス」を可能にするための規則を再考するよう要請してきた。
さらにVisa、Mastercard、American Expressの3社は、このルールを大幅に変更するか、完全に破棄するよう当局に働きかけていた。しかし、これらの努力が功を奏さなかったため、ほとんどの企業がルールを遵守するようになった。
American Expressの広報担当者は、現地時間4月23日夜に発表した声明の中で「RBIがこのような行動に出たことに失望している」としながらも「できるだけ早く」懸念を解決するため当局と協力していると述べた。
同国におけるAmerican Expressの顧客数は約150万人に上り、インドの外資系銀行の中で最も多くの顧客を獲得している。
「当社は、インド準備銀行とデータローカリゼーションの要件について定期的に対話を行い、規制遵守に向けた進捗状況を示してきました。【略】これにより、インドの既存のお客様に提供しているサービスに影響はなく、お客様は通常通り当社のカードをご利用いただけます」と同社は述べている。
Discover Financial Servicesの傘下にあるダイナースクラブは、インド最大の民間銀行(HDFC)との提携によりインドでクレジットカードを提供しているが、声明の中で、インドは引き続き同社にとって重要な市場であり「インドでの成長を継続できるよう」中央銀行と協力して解決策を検討している、と述べている。
2020年、インド中央銀行は、HDFC銀行のサービスが停電に見舞われた後、新規のクレジット顧客を追加したり、デジタル事業を立ち上げないよう命じた。
4月23日の命令は、インドのもう1つの主要外資系銀行であるCitigroup(シティグループ)が、収益性の向上を目指してアジアの消費者向け事業の大半から撤退する計画を発表した中でのことだ。13カ国で展開している同銀行の消費者向け事業は、現在売却先を探している。
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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)