ここ数カ月、中国のハイテク企業が次々と自動車分野への進出計画を発表している。検索エンジンを提供するBaidu(バイドゥ)をはじめとするインターネット企業の中には、自動車を生産するために従来の自動車メーカーと協力することを決断した例もある。Xiaomi(シャオミ)は(自社でスマートフォンを製造しているにもかかわらず、)ソフトウェアサービスで収益を上げるライトアセット企業であることを何年も強調してきたが、ここに来て自動車製造に参入する。業界関係者の間で次は誰かという話になれば、Huawei(ファーウェイ)の名前が挙がるのは当然だろう。
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通信機器やスマートフォンのメーカーであるHuaweiは、製造業としての歴史やサプライチェーン管理の経験、ブランド認知度、広大な小売ネットワークなどの点で、いくつかの純粋なインターネット企業よりも自動車の製造に適しているはずだ。しかし、同社は自動車ブランドを立ち上げるという報道を繰り返し否定し、Huaweiの役割は、自動車メーカーやOEM(相手先ブランドによる製造)企業の一次(ティア1)サプライヤーであることだとしている。
同社の輪番制会長であるEric Xu(エリック・シュー)氏は、最近、深圳で開催された同社の年次アナリスト会議で、Huaweiは自動車メーカーではない、と繰り返し述べている。
「2012年以来、中国の主要な自動車OEM企業の会長やCEO、ドイツや日本の自動車メーカーの幹部と個人的に関わってきた過程で、自動車業界にはHuaweiが必要だと気づきました。Huaweiのブランドが必要なのではなく、彼らは未来志向の自動車を作るために私たちのICT(情報通信技術)を必要としているのです」とシュー氏は語り、2018年に発案されたこの戦略に変わりはないという。
自動車の製造業は主に3つの役割で構成されている。1つ目はAudi(アウディ)、本田技研工業、Tesla(テスラ)といったブランド力のある自動車メーカー。間もなくApple(アップル)もここに名を連ねるであろう。そしてBosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などの老舗やここで取り上げているHuaweiなど、自動車の部品やシステムを自動車メーカーに直接供給するティア1企業。さらにNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)、NXP(エヌエックスピー)などのチップサプライヤーで、業界のプレイヤーたちが高度な自律運転車に向けて邁進する現在、その役割はますます重要になっている。Huaweiも自動車用チップを自社で製造している。
中国でロボタクシーを開発するスタートアップの幹部は「Huaweiは、次世代のBoschになることを狙っています」と、匿名でTechCrunchに話す。
Huaweiは、ティア1サプライヤーとしての地位を明確にしていて、これまでにBAIC(北汽集団)、Chang’an Automobile(長安汽車)、Guangzhou Automobile Group(広州汽車集団)という3つの主要な顧客を獲得している。
「このような綿密な協力関係は、あまり多くはないでしょう」とシュー氏は断言する。
レベル4の自律走行は実現したか?
中国国営自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランド、Arcfox(アークフォックス、極狐)は、現時間4月17日、(「Powered by Intel」ではなく)Huawei Insideの略語であるHuaweiの「HI」システムを搭載したAlpha Sモデルを初公開した。価格は38万8900~42万9900元(約650万~720万円)で、HuaweiのKirinチップを搭載したOS、HarmonyOS上で動作するアプリ、自動運転、急速充電、クラウドコンピューティングなど、Huaweiの機能を複数搭載している。
おそらく最も注目されるのはAlpha Sがレベル4を達成したことで、この点はHuaweiがTechCrunchに断言している。
ほとんどの場面で人間の介入を必要としない、つまりドライバーがハンドルから手を離してうたた寝することができることを意味する大胆な発言だ。
しかし、この主張にはいくつかの含みが残る。Huaweiの自律走行担当ゼネラルマネージャーであるSu Qing(スー・チン)氏は、最近のインタビューで、Alpha Sは「スキル」の面ではレベル4だが「法的」責任の面ではレベル2だと話している。中国では、安全運転者のいない自律走行車のテストが許可されているのは、制限された地域でごく少数の企業に限られており、都市部の道路を走る消費者向け無人走行車にはほど遠い。
結局、Huaweiの「レベル4」機能はデモの中で示されたに過ぎない。デモでは、Arcfoxの車両が(安全を確保するためにドライバーを乗せた状態とはいえ)人の介入なしに中国の混雑した都市を1000km走行している。この車の自動化を実現するのは、3つのLiDAR、6つのミリ波レーダー、13の超音波レーダー、12のカメラなどのセンサー群と、Huawei独自の自動運転用チップセットだ。
シュー氏はこの車の能力について「Teslaよりもはるかに優れている」と語る。
Huaweiの車両は、厳密な意味ではレベル4ではないという意見もある。この議論は、言葉の問題のようにも見える。
シュー氏は「あなたが今見ているHuaweiの車はレベル4であると断言できますが、あえてドライバーを乗せています」と話す。「レベル4のことは、あなたが長距離のMPI(Miles per intervention、ドライバーの介入を必要としない平均走行距離)を達成してから議論しましょう。これはただのデモです」。
前述のロボタクシー企業の幹部は「ドライバーを排除できなければ、レベル4ではありません」と主張する。「デモは簡単ですが、ドライバーの排除は非常に難しいのです」。
「Huaweiが主張するテクノロジーは、レベル4の自律走行ではありません」と、別の中国自律走行車スタートアップの役員は話す。「レベル4の現在の課題は、ドライバー不在にできるかどうかではなく、どうすれば常時ドライバー不在にすることができるか、ということです」。
レベル4であろうとなかろうと、Huaweiは自動車の未来への投資を止めるつもりはないようだ。シュー氏はアナリスト会議で、2021年はスマートカーの部品や技術に10億ドル(約1080億円)以上を投じる予定だと話している。
5Gの未来
5Gが無人運転車の開発を加速する上で重要な役割を果たすと考える人も多く、世界最大の通信機器メーカーであるHuaweiは、世界各地の5Gの展開で多くの利益を上げるだろう。しかし、シュー氏は、5Gは自動運転車にとって必須ではないと主張する。
「自律走行を実現するためには、クルマ自体が自律的である必要があります。つまり、外部からのサポートなしに車両が自律的に走行できなければならない、ということです」とシュー氏。
「自律走行のために5Gや5.5Gに完全に依存すれば、必ず問題が生じます。5Gの基地局に問題が起きたらどうなるか、想像してみてください。モバイルネットワーク事業者は、自社のネットワークをエリア全域に隈なく広げ、どのような状況でも絶対に問題が起こらないようにして、高いレベルの耐障害性を確保しなければなりません。モバイルネットワーク事業者にとっては非常に高いハードルとなり、非現実的です」。
Huaweiは、Boschの市場を乗っ取ることができれば、ティア1サプライヤーとしては十分に満足なのかもしれない。多くの中国企業が、将来の制裁を見越して、あるいは単に堅牢性に劣らない安価な代替品を求めて、欧米の技術サプライヤーから中国国内のサプライヤーへとシフトしている現在において、ArcfoxはHuaweiの自動車分野における野心の切っ先に過ぎない。
カテゴリー:モビリティ
タグ:中国、電気自動車、Huawei、自動運転、5G、Bosch
画像クレジット:Baidu’s autonomous driving car
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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)