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レトロテイストが魅力!BMWらしさが濃密な「R nineTスクランブラー」は走りもイケる

水平対向エンジンやシャフトドライブ駆動など、特徴的なメカを多用するBMWのモトラッド(=バイク)。そんな個性派ブランドの中でも人気なのが、戦前からの伝統を受け継ぐのが「R nineT」シリーズです。

今回はその中から、クラシカルなオフ車テイストをまとった派生モデル「R nineTスクランブラー」に試乗。BMW伝統を今に受け継ぐ人気モデルの実力に迫ります。

■伝統を背負うフラットツインエンジンを搭載

好むと好まざるとにかかわらず密が避けられ、常に他人との物理的な距離を保つソーシャルディスタンスが意識される今日この頃。うっとうしいコロナ禍の中、すっかりご無沙汰していたけれど、「移動手段としてバイクもいいなぁ」と真剣に検討を始めている方も多いのではないでしょうか?

とはいえ、2輪ライフの“ロングバケーション”中(懐かしい!?)の人がいざ選ぶとなると、モデルを絞り込むのが難しい。せっかくなら実用性だけでなく、趣味性が高く、所有する喜びもあって、じっくり長くつき合える相手がいい。その上、「あまり子どもっぽいのもなぁ」と考えている、そんな貴方、スバリ、BMWのR nineTはどうでしょう?

「エーッ!? いきなりビーエム?」と、腰が引けちゃう人もいるかと思いますが、まあ聞いてください。最もベーシックな「R nineT ピュア」が190万5000円からと、決して安価なバイク…もとい! モトラッドではないけれど、それだけの価値は間違いなくあります(断言)。

BMW伝統の水平対向エンジンを搭載し、贅沢にして必然のシャフトドライブで後輪を駆動。親しみやすいシート高にして、いざ走り始めれば、独特のボクサーサウンドが乗り手を飽きさせない。退屈になりがちな高速道路でも、気分良くエンジンビートに浸りながら走り続けているうちに、いつしか同じくBMWエンジンを搭載したかつてのヒコーキに想いを馳せたりなんかして、R nineTへの愛着は増すばかり…。

スイマセン、ちょっと先走り過ぎました。戦前に遡る歴史を持つクルマ/バイクメーカーにして、新しい技術の開発・導入にも積極的なBMW。モトラッドこと2輪部門では、4気筒を使うスーパーバイクの「Sシリーズ」、実用的な並列2気筒エンジンを積む「Fシリーズ」、6気筒のゴージャスクルーザー「Kシリーズ」、手が届きやすい単気筒の「Gシリーズ」、そして、スクーターの「Cシリーズ」など、ラインナップはかなり充実しています。そして、R nineTが属する「Rシリーズ」は、フラットツインエンジンを搭載。戦前からの伝統を背負う“濃いぃぃ”モデル群ですね。

ひと口に“R”といっても、昨2020年にリリースされた1801ccエンジン(91.1馬力、16.1kgf-m)を胸に抱えるド級モデル「R18」を筆頭に、いわずと知れたアドベンチャー界の覇者「R1250GS」やツアラーの「R1250RT」、同じく「RS」、ネイキッドの「R1250R」と多彩な顔ぶれがそろいます。

■エンジン始動で「ズロン!」とボディが揺すられる

2013年に発表されたR nineTはレトロモダンなデザインが特徴で、1169ccの水平対向2気筒エンジンを搭載。ベースとなるR nineTを皮切りに、装備を削ぎ落としたピュア、オフテイストのスクランブラー、往年のレーシングマシン風ロケットカウルとセパレートハンドルを得た「レーサー」、そして1980年代の「GS」へのオマージュたる「アーバンG/S」とバリエーションを拡充。その人気のほどがうかがえます。

2021年モデルからは主に心臓部に手が入れられ、欧州の厳しい排ガス規制“EURO5”に対応した新エンジンに切り替わりました。まずは、スタンダード(224万円)、ピュア(190万5000円)、スクランブラー(202万7000円)、アーバンG/S(205万4000円)、その「40周年記念モデル」(231万2000円)がカタログに載ります。

今回、試乗したのは、新しいR nineTのスクランブラー。念のため確認しておくと、スクランブラーとは、オフロードバイクがひとつのカテゴリーとして確立される以前に、未舗装路を走るために改造されたバイクのこと。今では機能面よりそのスタイルにスポットが当てられます。アップライトなバーハンドル、大径ホイールにゴツめのタイヤ、ストロークが大きく取られたサスペンション、高い位置に配されたマフラーなどがポイントでしょうか。

R nineTスクランブラーも、文法通りキレイにまとめられています。同車は、スクランブラーらしく19インチのフロントタイヤも選べる(プレミアムライン)のですが、試乗車は標準の17インチ(プレミアムスタンダード)を履いていました。前輪大径化の変化をチェックしたい気持ちもありましたが、一方で、シート高が820mmから790mmに落ちているのが、身長165cmにして足の短いライダー(←ワタシのことです)にはちょっぴりうれしい。

早速、シャレたボルドーカラーのシートにまたがると、両足とも親指の付け根付近まで接地するので、ほどほどの安心感。そして、いざボクサーエンジンに火を入れると、「ズロン!」とボディが横方向に揺すられる。「分かっちゃいる」けど、口元がゆるむ瞬間です。

新しいR nineTはシリンダーヘッドに手が入れられ、スロットルが電子制御化されました。いうまでもなく排ガスコントロールのためですが、ユーザーメリットとしては“ライディングモード”が新設されました。ノーマルの「ロード」に加え、エンジン特性やトラクションコントロールの設定を変えた「レイン」と「ダート」が選べるようになりました。

また、シートの下にあって、ちょっとカードの出し入れがしにくいけれど、ETC2.0が標準装備されたほか、USBソケットが設けられたのもありがたいですね。

■山岳路も楽しめる素直なハンドリングの持ち主

フラットツインの低音ビートを響かせながらR nineTスクランブラーで自動車専用道を行くと、しっかりした足回りと落ち着いたライドフィールが印象的。ボディ各部の作りの良さもあって、いかにも“大人な”バイクです。

また2021年型から、クルーズコントロールが採用されたのも新しい。ひとたび設定すれば、ただ巡航するだけでなく、スロットル操作による加速は受け付けて、スロットルを戻せば元の速度に復帰して走り続けてくれます。ラクですね。これまで以上にロングライドが楽しめそう。

ヘッドをオイル、シリンダー部は空気で冷却する空油冷式2気筒は、1169ccの排気量から109馬力/7250回転の最高出力と、11.8kgf-m/6000回転の最大トルクを発生。中低回転域で厚い駆動力を提供してくれる頼りがいあるエンジンで、余裕を持って224kgのボディを走らせます。

そして、R nineTは重厚感がありながらもスッキリとした素直なハンドリングの持ち主なので、もし貴方がオーナーになられたなら、ロングツーリングのコースに山岳路を入れておくのを忘れないでください!

歴史に裏打ちされた強い個性があって、気張らず乗れて、飽きが来ない。R nineT、長くつき合うにはいい選択肢だと思いませんか? アクセサリー類が豊富で、自分好みのモトラッドに仕立てる楽しみも見逃せません。

<SPECIFICATIONS>
☆R nineT スクランブラー
ボディサイズ:L2110×W870×H1120mm
車両重量:224㎏(燃料満タン時)
エンジン:1169cc 水平対向2気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:109馬力/7250回転
最大トルク:11.8kgf-m/6000回転
価格:202万7000円

>>BMW「R nineT スクランブラー」

文&写真/ダン・アオキ

ダン・アオキ|15年ほど出版社に勤務し、クルマ専門誌、カメラムックなどの編集に携わった後に独立。フリーランスの“カメライター”になる。現在は、2輪・4輪のコンテンツ制作を担当するほか、女性を被写体とした人物撮影も行っている。

 

 

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