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ボタンひとつで走りが激変!アプリリア「RS660」は先進装備満載のスポーツバイクだ

2020年秋にヨーロッパでの販売がスタートしたアプリリアの「RS660」が、先頃ついに上陸しました。

RS660は電子制御の塊で、その充実ぶりは「スゴい!」のひと言。今回はそんな最先端イタリアン・スーパースポーツの真価をワインディングロードで確かめます。

■計5種類のライディングモードから選択可能

「『コミュート』では、ちょっと退屈かもしれませんよ」と、アプリリアRS660の輸入を手掛けるピアッジオ グループ ジャパンの人。レーシーなブランドのミドル級スーパースポーツだけに、試乗前に「まずは大人しめのライディングモードから」と設定を確認していたら、そんなアドバイスをいただきました。

素直にデフォルトの「ダイナミック」モードで走り始めると、アラ、乗りやすい!? 659ccの並列(直列)2気筒エンジン(100馬力/6.83kgf-m)は回り始めから力強く、太めのトルクで183kgのボディをグイグイ押し出してくれる。内心警戒していた神経質な特性は見受けられず、なんだか拍子抜けしたような、うれしい気持ちで山道へと向かいます。

その行程でライディングモードを「コミュート」に変更してみると、なるほど、にわかにパラレルツインの性格が穏やかになって、スロットルレスポンスもリラックス寄り。退屈ということは全然ないけれど、RS660に乗っていてあえて選ぶモードではないかもしれませんね。ただ、例えば頻繁に細かいスロットルのオン/オフを繰り返す渋滞時などに活用すると、心をケバ立たせずに済みそうです。

それにしても、モードボタンひとつで大きくキャラクターを変えるさまは、さすがはアプリリアの最新モデル。いうまでもなく、スロットルとパワーユニットを電気的につなぐ“ライド・バイ・ワイヤ”方式を採った恩恵で、エンジンマッピングを変えれば、RS660はたちまち乗り手の嗜好やシチュエーションに合わせたバイクに早変わり。公道、サーキット用に2種類ずつ、そして個人設定と、合計5種類のモードが用意されます。

先進の電子制御は、パワーソースだけに適用されるのではありません。加速度計やジャイロスコープを活用して自車の状態を把握。トラクションコントロール、ウィリーコントロール、エンジンブレーキの強度(!)を調整できます。さらにブレーキレバーの圧力を始め、横加速、バンク角、ピッチングやヨーイングなどを勘案してコーナリング時のABSを調整する“マルチマップコーナリングABS”を採用。コントロールの目が網のように広げられます。

加えて、クルーズコントロールや、シフトアップ/ダウンをクラッチ操作なしで行えるクイックシフトを搭載。まさに先進装備満載ですね! ABSさえ付いていない20年落ちのミドル級スーパースポーツをプライベートバイクとしている身としては、うらやましいを通り越してあきれるばかり。いやぁ、スゴい!

■コース次第ではツーリングマシンとしても使えそう

アプリリアRS660のデビューは、“EICMA2018”こと2018年のミラノモーターサイクルショー。その2年後にヨーロッパで販売が開始されました。アルミツインスパーのボディフレームに659ccのパラレルツインを挟み込む“いかにも”なスーパースポーツです。

同社の1077ccV4エンジン(217馬力/12.4kgf-m)を積むリッター級スーパーバイク「RSV4 1100ファクトリー」の弟分で、それらのネイキッドならぬストリートファイター版が「トゥオーノV4 1100ファクトリー」と「トゥオーノ 660」になります。

RS660の実車を前にすると、「うーん、カッコいい…」と、ため息が出るようなハンサムバイク。空力を意識したフェアリングやウイング類。メーターは液晶フルカラー。ランプ類はフルLED化され、目元を飾るデイタイムランニングライトがキリリと表情を引き締めます。

フロントのツインディスクを挟むラジアルマウントされたブレンボ製キャリパー、当たり前の倒立フォーク、そしてブッ太いアルミ製スイングアームと、それぞれのパーツがまたステキ!

個人的に期待していたのが、820mmというシート高。プライベートで乗っている4気筒スーパースポーツのそれがやはり820mmで、身長165cm足短めのライダー(←ワタシです)ながら、両足親指の腹がつくので、それほど苦労していない。「スリムな2気筒モデルなら」と楽観視してRS 660のシートにまたがると、アララ。両方の足先がやっと接地する、いわゆる“ツンツン”状態。乗り手の体重でサスペンションが柔らかく沈む、なんてこともなく。幸いRS660のシートはソフトで厚めなので、シートのクッションを少し削る“アンコ抜き”の余地はありそうですが…。

しかし、ひとたび走り始めれば、公道を行くスーパースポーツとして順当なポジション。ステップ位置は極端に後ろではなく、上半身の前傾は強めで長時間同じ姿勢を強いられるのはつらいけれど、赤信号などでときどき腰を伸ばせる機会があれば、ツーリングマシンとしても使えそう。ちなみに純正アクセサリーとして、タンクやリアシートに取り付けるバッグが用意されています。

■Vツインのように少しワイルドなパラレルツイン

新開発のパラレルツインは、ボア×ストローク=81×63.93mm。上位のV4モデルと同径で、ストロークは52.30mmから11.63mm延ばされています。最高出力は100馬力/1万500回転、最大トルクは6.83kgf-m/8500回転。並列2気筒ながら270度のクランク角を持つので、牧歌的なサウンドではなく、Vツインのようなビートを刻む、ややワイルドなフィールが印象的です。

中回転域から十分なパワーを発生する一方、回転数のインジケーターが7000回転を超える辺りからパワーバンドに突入。あたかも車重が軽くなっていくかの強烈な加速感と鋭いレスポンスを味わえます! マルチシリンダーの「どこまで行っちゃうの!?」という突き抜けたパワー感もいいですが、キャラの立った2気筒のパンチ力も、また捨てがたいものですね。

サーキットでの限界走行では違った顔を見せるのかもしれませんが、山岳路でちょっと“その気になる”程度なら、素直にスポーティで程良く“スーパー”の片鱗を示してくれるハンドリング。アプリリアRS660は、分かりやすく、乗り手を存分に楽しませてくれるスポーツバイクです。マイナー好きの人たちに独占させておくのは、もったいない!?

<SPECIFICATIONS>
☆RS660
ボディサイズ:L1995×W745mm
車両重量:183kg(乾燥重量:169kg)
エンジン:659cc 並列2気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:100馬力/1万500回転
最大トルク:6.83kgf-m/8500回転
価格:139万7000円

>>アプリリア「RS660」

文&写真/ダン・アオキ

ダン・アオキ|15年ほど出版社に勤務し、クルマ専門誌、カメラムックなどの編集に携わった後に独立。フリーランスの“カメライター”になる。現在は、2輪・4輪のコンテンツ制作を担当するほか、女性を被写体とした人物撮影も行っている。

 

 

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