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「moto g100」の紹介と、割安なハイエンドモデルが存在感を増している背景について

モトローラの日本法人、モトローラ・モビリティ・ジャパンは5月13日に、「moto g100」を発表しました。

moto g100はいわゆるSIMフリーモデルで、大手キャリア経由ではなく、直販のサイトのほか、家電量販店などで販売されます。発売は5月28日、直販価格は5万8800円を予定しています。

ミドルレンジカテゴリーながら高い処理能力を備えたmoto g100

モトローラのスマホには、主に3つのカテゴリーがあります。1つがエントリーモデルのeシリーズ、もう1つがフォルダブルスマホのrazr(レイザー)などのプレミアムシリーズで、gシリーズはその中間。いわゆるミドルレンジモデルを展開するブランドがgシリーズになります。最近では、「moto g10」と「moto g30」という2機種を日本で発売しています。価格が安い一方で、そこそこの性能もあり、モトローラの主力と言えるカテゴリーがgシリーズです。

gシリーズは、ミドルレンジモデルが中心でモトローラの主力だ

moto g100は、そのスペックをさらに強化したモデル。ミドルレンジモデルの持つコスパのよさを受け継ぎながら、一部の機能や仕様はハイエンドモデル並みという端末に仕上がっています。ミドルレンジモデルだと思うと5万8800円は少々割高に見えますが、性能面はむしろハイエンドモデルに近く、性能を考えると割安な端末と言えるでしょう。ミドルレンジモデルではスペックが物足りない、かといって10万円を超えるハイエンドモデルは手が届かないというニーズにジャストフィットする端末です。

性能の高さは、そのチップセットにあります。moto g100が採用しているのは、ハイエンドモデル向けのSnapdragon 870。Galaxy S21シリーズやXperia 1 IIIなどが採用するSnapdragon 888より、処理能力は一段劣りますが、20年に発売されたハイエンドモデルのチップセットと同等かそれ以上の性能を誇ります。現行のミドルレンジモデルよりパフォーマンスは高く、3Dグラフィックスを多用したゲームもサクサク動く性能です。

チップセットにはSnapdragon 870を採用。処理能力は昨年のハイエンドモデルに限りなく近い

ディスプレイのリフレッシュレートも90Hzと高く、スクロールなどの動きが滑らか。ディスプレイにケーブルで接続すると、PCのようなユーザーインターフェイスで「Ready For」にも対応します。普段はスマホとして持ち歩きながら、家ではディスプレイに接続してOfficeで文章を作成したり、大画面で動画を見たりすることができるというわけです。こうした機能は、ハイエンドモデルに近い性能を備えているからこそ実現したものと言えるでしょう。また、5Gにも対応しているため、エリア内であれば高速な通信を利用できます。

90Hzのリフレッシュレートで、レスポンスも高い

逆に、カメラのメインカメラは6400万画素と高画素ですが、これはミドルレンジ上位のモデルに採用されているものと同じ。ディスプレイも有機ELではなく液晶で、指紋センサーは画面内ではなく、電源キーと一体になっています。一部の性能をミドルレンジモデルに合わせ、ハイエンドモデルの処理能力と低価格を両立させたことがわかります。

moto g100のような端末が登場した背景には、ハイエンドモデルを低価格で使いたいというニーズがありそうです。スマホは年々高機能化している一方で価格も徐々に上がり、ハイエンドモデルは10万円を超えるのが当たり前になっています。日本に上陸した初代iPhoneのiPhone 3Gや初代Xperiaの本体価格が7万円程度だったこと踏まえると、確実にインフレしていることがわかります。高い処理能力の端末がほしくても、手が届きにくくなっていると言えるでしょう。

日本独自の事情としては、19年10月に改正された電気通信事業法があります。この法改正によって、キャリアや大手MVNOの端末購入補助は、2万円に制限されました。端末の価格上昇と割引の縮小のダブルパンチで、ハイエンドモデルの割高感が一気に表面化してしまったと言えるでしょう。かつてと同じような価格で買おうとすると、どうしても性能面で妥協が必要になってくるというわけです。

電気通信事業法の改正で、端末購入補助が2万円に制限された。画像は「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備」(総務省)より引用

ただ、処理能力はスマホの頭脳とも言える要素で、高いに越したことはありません。OSやアプリが必要とするスペックが年々上がっていくからで、高ければ高いほど、長く使えるのも事実です。こうした中、moto g100はチップセットなどの一部仕様をハイエンドに引き上げつつ、コストダウンを図ったモデルです。

こうした一部の仕様だけをハイエンド並みにした端末は、徐々に増えています。4月に発売したシャオミの「Redmi Note 10 Pro」も、その1つ。1億画素のカメラや120Hz駆動のディスプレイを備えている一方で、チップセットはSnapdragon 732Gに抑えられ、5Gにも非対応です。3万円台の格安価格で、メインカメラだけをハイエンドモデルに近づけたのがこの端末と言えるでしょう。

シャオミのRedmi Note 10 Proは、カメラだけをハイエンドモデルに近づけた端末と言える

また、ドコモがahamo向けに20年のハイエンドモデルを発売当時より安く販売したように、型落ちを安くするという流れも顕在化しています。スマホ黎明期とは異なり、ハイエンドモデルの性能は十分高くなっているため、販売期間が伸びるのは自然なことです。日本は元々ハイエンドモデルが好まれる市場だったため、ミドルレンジモデルに物足りなさを感じるユーザーも少なくありません。こうした市場特性を考えると、割安なハイエンドモデルが主流になっていく可能性もありそうです。

(文・石野純也)

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