環境にありふれたエネルギーを捕らえることができれば、いつでもどこでも電力を得ることができます。そんな、究極の再生可能エネルギー生成技術が環境発電。
ラジオが電磁波から情報を取り出して音声に変換するのに対して、環境発電ではこれを直流に整流された電気エネルギーに変換します。
コロラド大学ボルダー校の研究チームは、ラジオのアンテナのように機能する「光レクテナ(整流アンテナ)」のエネルギー変換効率を従来の100倍に高めたようです。
初の発電可能なレクテナ
レクテナでは、理論的には工場の煙突やパン屋のオーブンの熱を利用できます。また、地球から宇宙空間に放射されるエネルギーを捕らえるために、飛行船にレクテナを取り付けようと提案した科学者もいたようです。
このように、環境から自在にエネルギーが取り出せるはずのレクテナですが、これまでのところ実際に発電できるほどのエネルギー変換効率を達成していませんでした。
研究チームは、「共鳴トンネリング」と呼ばれる不思議なプロセスを通じて、初めて発電可能なレクテナの開発に成功しています。
エネルギーを消費することなく電子が絶縁体を通過
熱放射やマイクロ波を取り込むためには、レクテナを非常に小さくする必要があります。ただし、デバイスが小さいほど抵抗は高くなり、出力が低下するとの相反する性質があり、これが何十年もの間、実用的なレクテナが開発できない原因となってきました。
研究チームによる解決策では、電子の量子領域の性質を利用しています。
従来のレクテナでは、電力を生成するために電子が絶縁体を通過する必要がありました。通常であれば絶縁体が増えるほど抵抗が高くなり、取り出す電気の量は減ります。ところが研究チームは、絶縁体を追加することで「量子井戸」と呼ばれる状態を作り出し、電子の移動方向を束縛。これにより電子は、幽霊のように抵抗なしで2つの絶縁体をすり抜けられるようです。
25万個のレクテナでホットプレートの熱を取り込むことに成功
研究チームは、肉眼では見ることができないほど小さな約25万個のレクテナを、ホットプレート上に配置してテストしています。レクテナは、ホットプレートによって生成された熱の1%未満を取り込むことができたとのことです。
まだまだ実用に向けた第一歩といったところですが、抵抗の材料や形状を変更することで量子井戸を深くし、より多くの電子を取り込める可能性があるといいます。
(文・山田洋路)
- Original:https://techable.jp/archives/154862
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:YamadaYoji