ピックアップトラックのパワーは、トルクや馬力、牽引力や運搬力だけではない。米国時間5月19日に発表されたFord(フォード)の最新電気自動車「F-150 Lightning」は、停電時に顧客の家屋にエネルギーを供給できるシステムを搭載し、トラックのパワーに新たな意味を与えようとしている。
このような電気自動車ならではのメリットを消費者に伝えようとしているのは、フォードだけではない。Lucid Motors(ルーシッド・モーターズ)などの企業も、この機能をアピールしている。
2月にテキサス州で発生した大規模な停電では、数日間にわたって450万戸以上の家庭や企業で電力供給が停止し、結果として151人が命を落とすことになった。F-150 Lightningに搭載されている「Ford Intelligent Backup Power(フォード・インテリジェント・バックアップ・パワー)」は、車載バッテリーをフル充電した状態から最大3日間、家庭に9.6kWの電力を供給することができる。
フォードの電動車戦略を率いるRyan O’Gorman(ライアン・オゴーマン)氏は、実車公開に先立つビデオブリーフィングで「F-150 Lightningのプラグが接続されていれば、停電時にIntelligent Backup Powerが自動的に作動し、家庭の電力を供給します」と語った。「電力が回復すると、トラックは自動的にバッテリーの充電に戻ります」。
太陽光発電、蓄電池、エネルギーサービスを提供するSunrun(サンラン)はフォードと提携し、オーナーの自宅に80アンペアのFord Charge Station Pro(フォード・チャージ・ステーション・プロ)と呼ばれる充電器と家庭用統合システムの設置を支援する。F-150 Lightningのエクステンデッド・レンジ・バッテリー仕様に標準で付くこれらの設備が、Intelligent Backup Powerシステムを介し、充電時には車載バッテリーに電力を供給し、停電時は逆に車載バッテリーの電力を家庭に供給する。Sunrunは、顧客に自宅用の太陽光発電と蓄電システムを設置するオプションも提供する。
家から離れた場所で過ごしたい人は、F-150ハイブリッドの7.2kWから9.6kWへパワーアップした「Pro Power Onboard(プロ・パワー・オンボード)」を使えば、野外でもスピーカーやテレビから電動ダートバイク、丸ノコ、ジャックハンマーまで、あらゆるものに電力を供給することができる。このピックアップトラックは、荷台、車内、フランク(フロントのトランク)に、全部で11個のコンセントが装備されている。
Pro Power Onboardシステムはバッテリーの電力をインテリジェントに分配する。ドライバーが作業現場で電動工具を使っている時に、車載バッテリーの残量が3分の1以下になると、ドライバーのスマートフォンに通知が送られるので、そのまま作業を続けるか、それとも帰りの運転のためにバッテリーを節約するかを判断できる。
ただ、ドライバーは最寄りの充電スタンドまでの距離をあまり気にする必要はない。バッテリー残量で走行可能な距離が、最寄りの充電スタンドまでの距離に近づくと、Pro Power Onboardは自動的にオフになる。Intelligent Backup PowerやPro Power Onboardで消費したバッテリーの電力に関する情報は、フォードの専用アプリと車載インフォテインメント・スクリーンに表示される。
フォードの広報担当者によると、将来的には夜間の電気料金が安い時間帯に電気自動車のバッテリーを充電しておき、電力消費がピークになる電気料金が高い時間帯には車載バッテリーから家庭に電力を供給することで、電気代を節約できるようにすることも目指しているという。
「F-150 Lightningは、自動車のパワーという概念を再定義します」と、オゴーマン氏は語った。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:フォード、電気自動車、充電ステーション、バッテリー
画像クレジット:Ford
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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)