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キレイな光沢仕上げのコツは塗料の“濃度調節”にアリ!【達人のプラモ術】

【達人のプラモ術】ハセガワ「YAMAHA TZR250(1KT)」04/04

プラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。「エンジン&フレーム製作編」から始まった「TZR250(1KT)」製作も、デカールを貼り終えて、いよいよ今回が最終回。ラストは、見栄えに大きく影響する光沢仕上げを行っていきます。

*  *  *

「TZR250」の製作の最終回となる今回は、光沢仕上げのためのクリアによるオーバーコート塗装、さらにはコンパウンドを使ってのクリア塗装面の研ぎ出しを行い、完成を目指します。クリア塗装には、カウリングに貼ったデカールの保護の役割もあり、バイクモデルやカーモデルなどの光沢仕上げを求める塗装では欠かせないフィニッシュワークといえます。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIEも配信中

■クリアによる光沢仕上げ

第3回の「デカール編」でカウリングにTZRの特徴でもあるストロボラインのデカールを貼りました。白いカウルに赤いラインが入ったことで、ぐっとTZRの完成が見えてきた感じですね。

▲デカールを貼ったカウル類を車体に仮組して不具合がないかを確認。ここで一気にモチベーションアップ!

今回は仕上げとして、デカールを貼ったカウリングなど外装パーツにクリアを使いオーバーコート塗装をおこなっていきます。デカールを貼った状態でも雰囲気は悪くありませんが、カウリングをピカピカな光沢仕上げにすることで、よりリアルな仕上がりを得られます。

クリア塗料は、キットで指定されているMr.カラー「C46 クリアー」をはじめ、各社から発売されています。今回は、より光沢と塗装後の塗膜が強いガイアノーツExシリーズの「Ex-03 Ex-クリアー」を使用し、エアブラシで塗装しています。

▲「Ex-03 Ex-クリア」は模型店やヨドバシカメラなどのホビーコーナー等で入手可能。ラッカー系クリアーで塗装後の光沢が強く、また乾燥後に塗膜が硬く仕上がるので、研ぎ出しにも強い

 

POINT1:クリア塗装のキモは希釈にあり!

「クリアを塗装したのに光沢が出ない」「エアブラシを使ったクリアの塗装面がザラザラになってしまう」というトラブルをよく聞きます。その原因は、塗料の希釈不足です。エアブラシ塗装は、使用する塗料に応じて専用の溶剤(シンナー)で希釈して使用します。

Mr.カラーのクリアであれば塗料1:溶剤1の希釈が一般的ですが、クリアによるオーバーコート塗装では、より塗膜が平滑な “鏡面仕上げ” を求められるため、さらに希釈する必要があります。今回使用した「Ex-03 Ex-クリアー」の場合、もともと濃度が濃いので、塗料3:溶剤7まで希釈しないと、平滑な塗装面が得られません。

▲左側は希釈が足りなくてゆず肌になった状態。右側は適切な希釈で塗装した状態。※サンプルは仕上がりの違いを分かりやすくするために敢えて黒の上にクリアを塗装

光沢を出すためのクリア塗装のはずが、希釈が足りないと塗装面がゆず肌(塗面がみかんの皮のように凹凸になる現象)になってしまいます。これではクリア塗装の意味がありません。適切な希釈であれば均一な塗装面が得られます。

 

POINT2:一度の厚塗りはNG!

クリア塗装は、薄く3~4回に分けて塗装→乾燥→塗装と重ねていくのがポイント。一度にドバッと吹き付けてしまうと塗料が流れてしまったり、デカールが溶けたり、シワが入るといったトラブルの原因になることがあるので注意が必要です。

▲希釈した「Exクリアー」をエアブラシで絞り込んで塗装(砂吹き)した状態のフロントカウル。この時点では、塗装にツヤがなくてもOK。吹き付けたクリアはすぐに溶剤が揮発して薄い塗膜になるが、この後塗り重ねていくクリアが浸透してデカールを溶かすといったトラブルを防いでくれる

▲エアブラシ全開でクリアを塗装した状態のフロントカウル。吹き付けたクリアがパーツの表面でじわじわと伸び広がって、均一な光沢仕上げを得られる

▲燃料タンクはほぼ半分がデカールで覆われているため、砂吹きを3回程度重ねる

▲4回クリアを重ねて仕上げた状態。表面のゆず肌も消えて均一な光沢面になっているのが分かる

▲アッパーカウルとサイドカウルも同様にクリアーで塗装して仕上げていく

 

POINT3:コンパウンドを使ってさらに光沢をアップ!

クリアによるオーバーコート塗装を完全に乾燥させたら、さらに塗装面を鏡面仕上げにするため、コンパウンド(研磨剤)を使って塗装面を研ぎあげていきます。今回は、タミヤ製コンパウンドの「粗目」と「仕上げ目」の2種類を使用しました。

▲ペースト状なのでメガネ用のクロス等を使用。粗目で塗装面を研磨したのち、さらにきめの細かい仕上げ用で研磨することで、鏡面仕上げを得られる(粗目:330円/仕上げ目:660円)

コンパウンドは研磨剤、要はキメの細かい液体状のヤスリです。このコンパウンドを使い研磨することで、クリア塗装面の微細な凹凸を削り、均一に整え、より平滑な仕上がりを得られます。ただし使いすぎは禁物。先にも書いたように、液体状のヤスリです。塗膜が薄いパーツのエッジ部分などは、塗膜を削り落としてしまうことがあるので注意が必要。コンパウンドによる研ぎ出しが終わったら、さらに模型用のコーティング剤でパーツを磨いて仕上げます。

▲ハセガワトライツールから発売されている「コーティングポリマー」(1200円)は、透明パーツのツヤ出しや、光沢塗装の最終仕上げに使用する “研磨剤を含まない”模型用水性コート剤。高分子ポリマーが細かい塗装面の研磨キズや凸凹を埋め、表面をなめらかに整えてくれる

▲カウルスクリーンを「コーティングポリマー」で磨くことで、クリアパーツ表面の擦り傷なども目立たなくなる

 

POINT4:乾燥は最低でも24時間。その間に細部パーツの取り付け

クリア塗装は、常温であれば最低でも丸一日、できれば3日程度は乾燥させます。この乾燥時間を利用して、パイピングやステップ類といった細部パーツを取り付けていきます。

キットは、メーターがデカールで再現されていますが、デカールを貼った上から水性アクリルのクリアを垂らすとガラスのような、よりリアルな仕上がりになってくれます。

▲メーターのデカールが乾燥したら上から水性アクリル塗料のクリアを塗装(デカールの上に塗料をポトッと垂らす感じで)し、メーターガラスを再現

▲デカールにクリアを塗装したことで、よりリアルな仕上がりに

▲使用したのは「タミヤカラー X-22 クリヤー」。水性アクリルはシンナー成分を含まないため、デカールを溶かすことがない

▲フロントウインカーは、内側にミラーフィニッシュシートを貼ることでより“らしさ”を再現

▲キットのバックミラーは、メッキパーツで再現されているが、ミラーフィニッシュを貼りこんで鏡面感をアップ!

▲フロントのカウルスクリーンは、インスト(説明書)の原寸大型紙からマスキングシートを切り出して裏側から塗装する

▲カウルスクリーンをアッパーカウルに取り付けた状態。クリアパーツの接着には、プラ用接着剤による白濁化を防ぐためにコニシの「ボンド Gクリヤー」を使用している

 

■カウルを付けてから、ステップ・ミラーを装着

キットのインスト(説明書)では、ステップ類等のパーツを組んでからカウルの取り付けが指示されていますが、折損しやすいので先にカウルを車体に取り付けてからステップ類を取り付けるようにします。ミラーも同様で、アッパーカウルを車体に取り付けたのち接着することで破損が防げます。

 

■これが長谷川迷人作「YAMAHA TZR250(1KT)」

今回製作した「YAMAHA TZR250(1KT)」は、ハセガワの最新キットということもあり、エンジンをはじめ足回りなどが細かく再現されています。それだけに製作は手がかかりますが、完成するとリアルなディテールを楽しめます。バイクオーナーならば1/12の実車を組んでいるような、バーチャル感を感じられるでしょう。

▲シートを外した状態。リアフェンダーの書類入れも再現

▲左右出しのチャンバーは2ストマシンの証

ハセガワはTZRに続いて、同じく80年代に人気を集めたカワサキKR250のキット化を発表しました。これを機会にバイクプラモに是非挑戦してみてください。

▲ハセガワから発表された「1/12カワサキKR250」

>> 達人のプラモ術

<写真・文/長谷川迷人>

 

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