また1つ、モビリティ業界でのSPAC取引だ。今回はオーストラリア・ブリスベン拠点のDC急速EV充電デベロッパー兼プロデューサーのTritium(トリティウム)だ。同社は12億ドル(約1310億円)という評価額でのSPAC(特別買収目的会社)合併で上場する。
Tritiumは現地時間5月26日、SPACのDecarbonization Plus Acquisition Corp. II(DCRN)との合併を通じてNASDAQに上場すると明らかにしたが、この取引がいつ完了するのかタイムラインは示さなかった。合併により総収入は最大4億300万ドル(約440億円)となることが見込まれている。Tritiumはティッカーシンボル「DCFC」で取引される。
この取引は通常合併の際に行われる新会社への資本注入、PIPE(上場企業の私募増資)を含まないという点で珍しい。
「我々はPIPEを必要としていません。というのも、DCRNは4億ドル(約440億円)超のSPACであり、当社の株主たちはわずか2億ドル(約220億円)のキャッシュクロージングに同意したからです。これは償還のリスクを大幅に減らします」とTritiumのCEOであるJane Hunter(ジェーン・ハンター)氏はTechCrunchに語った 。「また、当社の売上高は2016年以来、年平均成長率(CAGR)56%で成長していて、当社がかなりのマーケットシェアを握っている米国や欧州など主要マーケットでプレゼンスを拡大しています。売上高の成長は成長戦略を実行するのに必要な新たな資金への依存を減らすのに役立っています」。
2001年創業のTritiumはDC急速充電のためのチャージャーのハードウェアとソフトウェアを手がけている。同社のプロダクトでは、1分で20マイル(約32km)走行分、あるいは5分で100マイル(約160km)走行分のEVバッテリー充電ができる、とDPAC IIの会長Robert Tichio(ロバート・ティキオ)氏は5月26日の投資家説明会で述べた。DCチャージャーはACチャージャーよりも高価だが、すばやく車両に給電できる。通常、ACチャージャーは家庭に設置されており、ドライバーが夜間に車両を充電するためにプラグをつなぐ。一方のDCチャージャーは公共の充電ステーションに設置されていることが多い。
「ドライバーは公共充電のエクスペリエンスを、その日走る距離に必要なガソリンを数分でまかなえる現在のガソリンスタンドでの給油と同じようなものに可能な限り近づけたいはずです」とハンター氏は述べた。
Tritiumの最大のマーケットは欧州で、同社の売上高の70%を占める。北米が20%、アジアが10%だと同氏は投資家らに説明した。同社は合併取引で獲得する資金を製造能力の拡大と販売の成長に使う。
EVのマーケットシェアが拡大するにつれ、公共のEVチャージャーステーションに対する需要は今後20年で急激に増えると見込まれている。分析会社Grandview Researchによると、EV充電インフラマーケットの規模は2020年に20億ドル(約2180億円)で、2028年までに39%近く成長すると予想されている。ジョー・バイデン大統領は全国のEV充電網は2兆ドル(約218兆円)のインフラ投資計画で最優先事項だと述べた。
カテゴリー:モビリティ
タグ:Tritium、SPAC、電気自動車、充電ステーション
画像クレジット:Tritium
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi)