キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は5月26日、令和元年度から令和2年度にかけて実施したスマート農業技術の開発・実証プロジェクト「阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム」(農研機構九州沖縄農業研究センター)の検証実験結果を公開した。
今回の実証実験でキヤノンITSは、映像情報から現在までのイチゴの生育状況を数値化および未来の収穫量を予測する「イチゴ生育画像解析システム」と、遠隔業務支援サービス「VisualBrain」により、スマートフォンと画像情報を用いたイチゴの花数・果実熟度・葉面積の「生育特徴量計測技術」の実証実験を行った。生育特徴量計測技術は、イチゴの生育画像からAIが花の数や果実の⽣育ステージなどを自動判別し、生育状況の指標として定量化するものという。
実証実験では、九州沖縄農業研究センター内のイチゴ品種「恋みのり」「さがほのか」の生育状況をスマートフォンで一定期間にわたり撮影し、解析に適した高精細かつ定点の画像データを収集。そしてイチゴ生育画像解析システムを使った画像解析で得られたデータを「VisualBrain」を通じてクラウドシステムに蓄積し、遠隔から現地の映像や解析結果を閲覧できる環境を構築した。
そしてスマートフォンでの簡易な生育解析として実証したところ、2品種の花数・果実熟度・葉面積の生育特徴量の自動計測精度が90%以上を達成。これにより、スマートフォンのカメラ機能を使い初期費用を抑えた生育解析や、高精度な生育解析が可能だと確認している。
またキヤノンITSは、農林水産省委託事業「令和3年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」にも採択されており、次回のプロジェクト「阿蘇イチゴ輸出スマート農業実証コンソーシアム」(課題番号:21451798)ではイチゴ生育画像解析システムおよび「VisualBrain」を活用したスマートフォンによる生育計測から収量予測、農業熟練者による映像共有を活用した遠隔指導や農作物のリモート審査の実証実験を開始する予定だ。
キヤノンITSは、2015年よりカメラとAIを活用したスマート農業技術の研究開発に取り組んでおり、イチゴ栽培において、花や実の数、葉の大きさ・色などの生育情報をICT技術を用いて数値化するAIを開発したという。さらにこの情報に温度や湿度などの環境データを組み合わせることで、マルチモーダルな情報をもとにした収穫量予測AIの開発に取り組んでいるとした。
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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)、キヤノンITソリューションズ(企業)、食品(用語)、農業 / アグリテック(用語)、日本(国・地域)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/05/27/canon-its/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:塚本直樹(Naoki Tsukamoto)