JAXAは5月27日、月面での人の移動に使われる「有人与圧ローバー」の実現に向け、月面でのデータ取得を行うと発表した。これには、JAXA、タカラトミー、ソニー、同志社大学と共同開発する変形型月面ロボットが使われ、月面投入はispace(アイスペース)が2022年に打ち上げを予定している月着陸船が使われる。
JAXAは、2019年から有人与圧ローバーの概念検討を行っており、自動運転技術や走行技術の詳細を検討するためには月面の画像データなどが必要だと判断した。そこでispaceの月着陸船で変形型月面ロボット1機を月面に送り込み、レゴリス(月面の砂)の挙動や画像データを月着陸船経由で地上に送ることを決めた。取得したデータは、有人与圧ローバーの自己位置推定アルゴリズムの評価、走行性能へのレゴリスの影響評価などに用いられる。ispaceの月着陸船は、変形型月面ロボットを月に送り込みデータ通信を行わせる目的で、競争入札により選定され2021年4月に契約を締結したもの。
変形型月面ロボットは、2016年に実施された第1回JAXA宇宙探査イノベーションハブ(Tansax)の研究提案公募でタカラトミーによって提案された重量約250gの自走型の超小型ロボット。月着陸船には、直径約8cmの球状になって搭載され、月面に展開された後に走行用の形状に変形して活動を行う。
2016年よりJAXAとタカラトミーが筐体の共同研究を開始し、2019年にソニー、2021年に同志社大学が参加した。タカラトミーと同志社大学の筐体の小型化技術、ソニーによるSPRESENSEを使った制御技術、JAXAの宇宙環境下での開発技術と知見がそれぞれ生かされている。
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