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フォードが同社電気自動車計画の柱となるEVピックアップトラック「F-150ライトニング」を発表

米国自動車メーカーFord(フォード)の収益の柱となっているF-150に、電気自動車モデルが加わった。

米国時間5月19日に発表された完全電気ピックアップトラックF-150 Lightning(F-150ライトニング)は、フォードが220億ドル(約2兆4000億円)を投じて進めている電気自動車計画の柱だ。そして、フォードがこの1年の間に発表した3タイプの電気自動車のうちの1つでもある。また、収益の面では最も意味のあるものといえるだろう。フォードF-150ライトニングは、ミシガン州Dearborn(ディアボーン)にあるRouge(ルージュ)工場で生産され、電気自動車のMustang Mach-E(マスタング・マッハE)や、商用に特化し柔軟な構成が可能な電気カーゴバンE-Transit(Eトランジット)に続くモデルとなる。

F-150ライトニングは、フォードにとって挑戦的なプロジェクトだった。このピックアップトラックには、北米でベストセラーへと押し上げたガソリンエンジンモデルの特徴に加え、電気自動車ならではの新たなメリットが求められた。つまり、トルク、パフォーマンス、牽引力、そして全体的なレイアウトにおいて、その多くが商業目的で使用する顧客のニーズを満たす必要がある。仕様を見る限り、フォードはトルクとパワーを実現しながらも、キャビンと荷台はガソリンモデルと同じサイズを保っている。

これは重要なポイントだ。同じサイズにすることで、数千にもおよぶ既存のF-150トラックアクセサリーに対応することができるためだ。フォードが現在の顧客による買い替えを期待しているのであれば、今回のような判断は重要な意味を持つ。なお、今のところライトニングは、4ドアで5.5フィート(約1.68メートル)の荷台を持つスーパークルーのみが提供される予定だ。

F-150ライトニングは、ガソリンモデルの顧客による買い替えか、あるいはまったく新しい顧客層を獲得できるのか。この答えは、2022年春の発売を待たなければならない。

しかし、このライトニングはフォードのヒット商品になる可能性を秘めていると考えるアナリストもいる。

「フォードは、従来のF-150にバッテリーパックを搭載する以上のことをした」と、iSeeCars.com(アイ・シー・カーズ・ドットコム)のエグゼクティブアナリストであるKarl Brauer(カール・ブラウアー)氏は述べる。「ライトニングのデザイン、性能、先進的な機能に対する同社のアプローチによって、従来のエンジンでも魅力的なトラックになっていただろう。電気自動車のパワートレイン、瞬時トルク、積載量や牽引力の増強、さらには充電をシームレスに家への電力供給に切り替え、数日に渡って供給できる能力は、ライトニングの洗練されたスタイリング、すばやい加速、ハイテク設備に加えて、新たなメリットとなっている。フォードは、電気自動車へ移行することにともなうチャンスとリスクの両方を認識しており、F-150をバッテリー駆動の世界でも成長させると明確にコミットしている」。

ライトニングの基本仕様

F-150ライトニングには、トリムレベルが異なるベース、XLT、ラリアット、プラチナの4つのシリーズと、2つのバッテリーオプションが用意される。また、アルミ合金製のボディーに、2つのインボード電気モーターを搭載したこのトラックは、4輪駆動を標準装備し、独立型リアサスペンションを備えている。フォードは、現時点で2つの価格のみを公表している。ベースモデルは、連邦または州の税額控除前の価格で3万9974ドル(約434万円)、ミッドシリーズのXLTモデルは、5万2974ドル(約576万円)からとなる。予約サイトによると、フル装備のライトニングは9万474ドル(約983万円)となっている。なお、これらの価格には、デスティネーション料金(工場から販売店への配送料)と税金は含まれていない。

スタンダードレンジバッテリーモデル(他のトリムのスペックは未発表)のライトニングの全長は、232.7インチ(約5.91メートル)で、ガソリンエンジンのF-150よりも1インチ(2.54センチメートル)長い。ホイールベースは基本的に同じであり、ガソリンモデルやハイブリッドモデルとの差は、わずか10分の1インチ(2.54ミリメートル)だ。

F-150の4輪駆動タイプにおける、電気モーター車とガソリン車の大きな違いは、地上高だ。オリジナルのF-150の地上高が9.4インチ(約23.9センチメートル)だったのに対し、ライトニングでは8.9インチ(約22.6センチメートル)となっている。この0.5インチ(1.27センチメートル)の減少は、バッテリーやインボードモーターを地面の起伏から守るための金属製スキッドプレートによるものと考えられる。

スタンダードレンジバッテリーは、目標とする426 hp(約345kW)の出力と775 lb・ft(約1050 N・m)のトルクを実現した。また、エクステンデッドレンジバッテリーを搭載することにより、同じトルクで出力は563 hp(約420kW)まで向上する。フォードによると、これはF-150の中でも最も高い値だという。

バッテリーの目標航続距離は、スタンダードバッテリーで230マイル(約370キロメートル)、エクステンデッドバッテリーでは300マイル(約483キロメートル)にまで伸びる。しかし、ここで疑問が残る。ボートやトレーラーを牽引した場合、航続距離にどのような影響があるのだろうか。

フォードはその情報を提供しておらず、EPA(米国環境保護庁)が推定航続距離を発表し、ユーザーが車、ボート、スノーモービルなどを牽引するようになるまでは、はっきりしないかもしれない。

フォードは、ドライバーが充電する前に、あとどのくらいの距離を走行できるかを把握するための2つの機能を紹介している。1つ目の機能は「オンボード・スケール」と呼ばれるもので、トラックに搭載されたセンサーを使って積載量を推定し、ドライバーは自分の運ぶものの重さを知ることができるというものだ。ここで積載量、つまりトラックが積んで運ぶ重さは、牽引できる重さである牽引能力とは異なる。しかし、フォードによると「オンボード・スケール」は、牽引の情報、積載量、天候などを考慮した「インテリジェント・レンジ」という、さらに別の機能も使って情報を提供するという。

フォードは、積載量や牽引能力にも向き合っている。同社によると、ライトニングの新しいフレームには、F-150のフレームとしては最も強度の高いスチールが使用されており、最大2000ポンド(約907キログラム)の積載量と最大1万ポンド(約4536キログラム)の牽引力をサポートしているという。

ライトニングの車内

新しくモデルチェンジしたガソリンエンジンのF-150と同様に、ライトニングにもコネクテッドカー技術や先進のドライビングアシスト機能が惜しみなく搭載されている。ライトニングの上位モデルであるラリアットとプラチナには、フォードのSync 4A(シンク4A)インフォテイメントシステムが搭載されており、無線によるソフトウェアアップデートに対応している。つまり、ドライビングアシスト機能の追加や改善、地図を最新に保つなど、車の機能のアップグレードをシステムが行うということだ。Sync 4Aは、Sync AppLink(シンク・アプリンク)システムを介して、Waze(ウェイズ)やFord+Alexa(フォード・プラス・アレクサ)と呼ばれるAmazon Alexa(アマゾン・アレクサ)のフォード向けバージョンなど、サードパーティのアプリを提供する。

Sync 4Aシステムは、自然な音声コントロールとリアルタイムのマッピングを特徴とし、15.5インチ(約39.4センチメートル)のタッチスクリーンに表示される。このタッチスクリーンは、クロスオーバータイプの新しい電気自動車であるマスタング・マッハEに搭載されているものと同様のものだ。また、ドライバーの正面には、カスタマイズ可能な12インチ(約30.5センチメートル)のメーターパネルがある。このデジタルパネルは、バッテリーの動作状況、回生ブレーキ、先進的なドライビングアシスト機能など、ドライバーにとって重要な情報を提供する。

画像クレジット:Ford

「このクルマは、当社がこれまでに作った中で最もスマートなF-150だ」と、Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)のバッテリー電気自動車担当ゼネラルマネージャーであるDarren Palmer(ダレン・パーマー)氏はいう。そして「F-150ライトニングは、没入型タッチスクリーンを備えており、お客様が求めるすべての情報を瞬時に提供する。目的地、積載量、残りの航続距離などをリアルタイムで見ることができる。また、Ford Power-Up(フォード・パワーアップ)ソフトウェアアップデート機能により、この車をさらに気に入ってもらえるだろう」と続ける。

また、F-150ライトニングには、同社の新しいハンズフリー運転機能であるBlue Cruise(ブルークルーズ)が搭載される。この機能は、F-150エンジン車の2021年モデルとマスタング・マッハEの一部の2021年モデルにも搭載され、2021年後半のソフトウェアアップデートで利用可能になる。このハンズフリー運転機能は、カメラ、レーダーセンサー、ソフトウェアを使用して、アダプティブ・クルーズ・コントロール、車線中央維持、速度標識認識を統合することにより実現している。そして2021年4月の同社の発表では、約50万マイル(約80万キロメートル)の開発テストをパスしたことを公表している。また、このシステムでは、ドライバーの視線と頭の位置をモニタリングする車内カメラも実装され、視線を道路に集中させることができる。

関連記事:フォードがGMやテスラに対抗し手放し運転機能の導入を発表

このハンズフリーシステムは、フォードのCo-Pilot360(コウパイロット360)テクノロジーを搭載した車両で利用可能であり、車線が分離された高速道路の特定区間でのみ機能する。このシステムは、2021年後半にソフトウェアアップデートにより展開され、まず北米の10万マイル(約16万キロメートル)以上の高速道路で利用可能となる予定だ。

充電と電源

電気自動車の運転には、もちろん充電が欠かせない。しかし、単にプラグインできるだけでは十分とはいえない。いつ、どこで、どのようにして充電できるのか把握できることが最も重要なポイントだ。フォードによると、トラックのバッテリー残量が総航続距離の3分の1を下回ると、顧客に通知されるという。このインテリジェントレンジは、前述した通り、牽引の情報、積載量、天候を考慮したもので、ドライバーにも通知される。また、付属のFordPass(フォードパス)アプリによって、充電可能な場所の情報も得られる。車内ではインフォテイメントシステムで充電ステーションを見つけてナビゲートすることができる。

ライトニングには車載電源も搭載されており、スタンダードモデルでは2.4kW、ラリアットモデルとプラチナモデルでは9.6kWの電力が供給できる。これは「メガパワーフランク」と呼ばれるボンネット下のトランクにあるアウトレットからの最大2.4kW、キャビンと荷台のアウトレットからの最大7.2kWを合わせたものだ。

フォードはまた、9.6kWのバックアップ電源としての機能をアピールしている。停電の場合は3日間、配給制の場合は10日間、家庭に電力を供給できるとしている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:フォード電気自動車

画像クレジット:Ford

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

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