【達人のプラモ術】ボーダーモデル「AFVモデル 1/35 タイガーⅠ初期型」01/04
戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。今回からは、プラモデル界の中でも人気の高い戦車モデル「タイガーⅠ」を作っていきます。つい最近発売されたモデルということもあり、その精巧さにもぜひ注目してください。まずは「車体組立編」です。
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今回からは、中国の新興メーカー・Bordermodel(ボーダーモデル)社の「AFVモデル 1/35タイガーⅠ初期型」を作っていきます。海外メーカーキットというと、キットの組み立てが分かりにくい、作りにくいと思われがちですが、(まぁ、あながちその評価は間違っていませんが(笑))、最新キットでは、パーツの精度も向上し、最新の考証で細部ディテールの再現も素晴らしいものが多くなりました。AFVモデルの中でも圧倒的に人気の高いタイガーⅠの最新海外製キットにチャレンジしていきましょう!
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中
■タイガーⅠとは
タイガーⅠは、第二次世界大戦でドイツが開発した重戦車で、車体前面装甲は100mm、砲塔前面防盾は120mm、側面および後面装甲の厚さが80mm、側面下部は60mmの重装甲を持っています。
搭載された88mm砲(8.8cm KwK36 L/56)は、第二次世界大戦で使用された戦車砲の中でも高い威力を誇り、1000m離れていても100mmの装甲を、500mで111mmの装甲を貫通するほどの威力を持っていました。アメリカ陸軍戦車「M4シャーマン」であれば、1600m以上の遠方から撃破することができたそうです。
2014年に公開された映画『フューリー』では、博物館に現存する走行可能なタイガーⅠが使われ、劇中でM-4シャーマン5両との戦闘をリアルに再現し、話題になりました。
タイガーⅠはプラモデルとしても人気が高く、タミヤをはじめ多くのメーカーがモデル化しています。今回は、中国の新興スケールモデルメーカー・ボーダーモデル社から発売されたばかり(5月23日発売)の「1/35タイガーⅠ初期型」を製作します。ちなみにですが、タイガーⅠには多くのバリエーションがありますが、製品名にもある初期型とは、1942年12月から1943年7月まで生産された車両のことを指します。
■1/35スケールの意味を知ってます?
戦車や装甲車などの軍用車両のプラモデルは、AFVモデル(Armored Fighting Vehicle/アーマード・ファイティング・ビークル/装甲戦闘車両)と呼ばれ、スケールサイズは1/35が国内外で主流となっています。
ところで皆さんはAFVモデルがなぜ1/35スケールが主流なのかご存知ですか? 実はAFVモデルに初めて1/35スケールを採用したのはタミヤが1961年に発売した「パンサータンク」でした。単2電池2本で電動走行をさせるため、車体に組み込むモーターや電池、ギアボックスなどの大きさから逆算した縮尺サイズが、ほぼ1/35だったからなのだそうです。
当時、戦車のプラモデルはモーターやゼンマイで走るのが当たり前でした。その後1970年代には、タミヤの1/35戦車シリーズは30種類を超えて、更に走行ギミックを廃したMM(ミリタリーミニチュア)シリーズが人気を集めたことから、他メーカーも追随するようになりました。つまり、1/35スケールは、日本で生まれた縮尺で、AFVモデルでモータライズ(プラモデル本体にモーターと電池を組み込み、そのままラジコンのように走らせることのできるギミック)が廃止となり、精密モデルとなった後も、国際標準となったというワケです。ちなみに、タミヤでは1/48スケールでもAFVモデルの充実化を図っています。
POINT1:海外製キットはまずパーツの洗浄を!
海外メーカーのキットは、パーツが離形剤(金型から成形したパーツを抜きやすくするための潤滑剤)にまみれていることが多々あります。そのため、組み立て前にパーツを洗浄する必要があります。離型剤を落としていないと、塗装の際に塗料がはじかれたり剥離などトラブルの原因となります。洗浄は、中性洗剤とぬるま湯でOKですが、今回はファインモールドが発売している離型剤の洗浄剤「ご機嫌クリーナー」を使っています。
POINT2:AFVモデルは組んでから塗装する
飛行機モデルやバイクモデルでは、コクピットやエンジンなどパーツを塗装しながら組みあげていきますが、戦車モデルの場合、基本的に組み上げてから塗装を行います。今回は、車体、足回り(転輪と履帯)、砲塔の3つに分けて組み立てた後、塗装をおこないます。まずは、車体の製作。ちなみに、キットはランナー枠が8枚もあるのでパーツ探しが大変。そこで、マスキングテープでランナー識別用にタブをつけてA~Zを記しておくと探しやすくなります。
POINT3:エッチングパーツにはメタルプライマーを塗布
キットには、真ちゅうのエッチングパーツ(ディテールアップのための薄い金属製のパーツ。プラでは再現しにくい薄い・細い・小さい部位の再現に使用)が付属しています。近年は、AFVモデルでも細部をよりリアルに再現するためエッチングパーツの使用が当たり前になってきました。ラジエターの冷却ファンカバーやエンジングリルのカバーは、切り出したエッチングパーツを箱状に折り曲げ加工が必要となります。また、接着には瞬間接着剤を使用し、塗装の際に塗料の食いつきを良くして塗膜をはがれにくくするためにメタルプライマーを塗布しておく必要があります。
POINT4:下地塗装のサーフェイサーはさび止めの色に
装備品なども取り付けて組み上げた車体はサーフェイサーを使って下地塗装を行います。サーフェイサーというと一般的にはグレー、あるいは白を使うことが多いのですが、AFVモデルでは実車戦車の下地塗装に使われているさび止めのプライマー(暗い赤茶色)を再現したオキサイトレッド色を使うのが一般的です。今回はタミヤの「ファインサーフェイサーL (オキサイドレッド)」を使用しています。
POINT5:車内は先に塗装しておく
キットは、エンジンの冷却ファンと燃料タンク、さらには車体内部に横置きに納められた16本のトーションバーサスペンションがしっかり再現されていますが、完成後はほとんど見えなくなってしまいます。ですが、サーフェイサーで下地塗装のしたあと、車内色であるアイボリーホワイトで塗装して、見えない場所もバッチリキメておきましょう!
■車体の完成
キットは8種類の塗装バリエーションが選択可能になっています。作例は、初期型のタイガーⅠの中でも、1943年のマフラーカバーのない排気管を装着した車両をチョイスしました。選ぶ車両によって装備の有無や仕様の違いなど、細部が異なるので事前に説明書をチェックしておくことをオススメします。
次回はドイツ重戦車の特徴的な複合転輪(接地圧を低減させるため転輪が千鳥式に配置された)、組み立て式の履帯と、そして88mm砲を装備した砲塔の製作を進めていきます。
【達人流!製作のポイント】
1/35スケールのタイガーⅠは、人気が高いだけに、国内外のメーカーから中期型や後期型など様々なバリエーションが発売されています。今回選んだ初期生産型も、国内ではMMシリーズとしてタミヤがモデル化しています。海外メーカーではドラゴン、AFVクラブ、ライフィールドなどなど、同じ初期型のキットであってもメーカーによって捕らえ方の違いがあり、作り手としてはそれがまた面白くもあり製作意欲をそそるものです。後発となる今回のボーダーモデルのタイガーⅠは、車体に詰まれた荷物やエッチングパーツ使った有刺鉄線などの臨場感あふれるアクセサリーなどが充実しており、海外メーカーの戦車を作ってみたいという人にはオススメのキットです。
>> 達人のプラモ術
<写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/377228/
- Source:&GP
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