Appleは日本時間6月8日、「WWDC21」を開催しました。例年、次期OSバージョンで追加される新機能などが明らかになるため、ディベロッパー向けのカンファレンスでありながらも、一般ユーザーにとっても注目のイベントです。
同イベントについては、深夜のキーノートをリアルタイムで視聴した人も、まだ見ていない人もさまざまでしょう。今年は新製品の発表こそありませんでしたが、OS関連のネタは盛りだくさんでした。
アップデートについてこまごまと取り上げているとキリがなくなってしまうので、ここでは市場に変化を与えそうだ、と筆者が感じたトピックを5つ紹介したいと思います。OSの新機能はさほど気にならないという人でも、これらはチェック必須です。
1. ビデオ会議の選択肢にFaceTimeが加わるかも
FaceTimeといえば、Apple製品で利用できるビデオ電話ツールですが、次期OSバージョン(iOS15など)では「FaceTimeリンク(FaceTime Links)」という機能が加わります。最大の特徴は、URLを作成して、Appleデバイス以外のAndroidやWindowsからでも、ブラウザ経由でFaceTimeに参加できるということ。セキュリティ面もエンドツーエンドの暗号化がなされます。
現状、ほかのWeb会議ツールや、LINEなどのビデオ通話機能を活用するという人が多いと思いますが、今後は「FaceTime」もこうした手段のひとつに加わるかもしれません。
2. iPadでアプリが作れるように
次期iPadOSのアップデートでは、iPadでアプリを作れるようになります。これまでも「Swift Playgrounds」としてコーディングを学ぶ環境は用意されていました。しかし、今後はXcodeでも動作するプロジェクトタイプを、SwiftUIで整えていけるとのこと。フルスクリーンでアプリの挙動を試せるほか、App Storeへの提出も行えるというのは、大きな変化です。
イベント内では、クレイグ・フェデリギ氏が「これからはiPhoneやiPadのためのアプリケーションをiPad上で作れるのです。これによってiPadは新たな場所で使われることになると思います」と紹介していました。この言葉通り、まさにiPadのポテンシャルが広がる可能性を感じる変化です。
3. MacとiPadのカーソルがシームレスに移動
MacとiPadの両方を所有するユーザーにとって朗報となるのが「ユニバーサルコントロール(Universal Control)」の登場でしょう。簡単に説明すると、ひとつのカーソル・ポインタが、macOSとiPadOSの画面の間をシームレスに移動できるというびっくり機能です。同様に、キーボード操作も複数台のデバイスに対してシームレスな操作に対応します。
例えば、イベント中のデモでは、iPadの画面にあるファイルをドラッグし、そのまま隣においたMacの画面にドロップできる様子が紹介されていました。
これまでも、iPadのディスプレイにmacOSの画面を拡張する「SideCar(サイドカー)」という機能は存在しました。しかし、iPadの画面UIを活かしつつ、Macと連携できるのは、それとはまた違ったシーンで活躍するので、独自の魅力があると思います。
4. サードパーティ製品がSiriに対応する
サードパーティ製のHomeKit対応アクセサリーから、Siriに対応する製品が今年後半から登場します。具体的に何が発売されるのかは紹介されませんでしたが、スマートリモコンや、HomePod miniのようなスピーカーなどは、当然出てくる可能性が高いのではないでしょうか。
ちなみにSiriを通じた操作は、メーカー側のサーバを通過することなく、セキュアな状態で行えるとのこと。Appleが考えるプライバシー保護のレベルは遵守されるようです。
イベント内では、Amazon、Apple、Googleらによって21年5月に策定されたスマートホーム機器の相互運用規格「Matter」についても触れられていました。先のSiri対応のHomeKit機器との詳細な関係性は言及されませんでしたが、Matter対応製品も21年内の発売になるのではと報じられているので、こちらの表記にも注目しておきましょう。
5. カメラで3Dオブジェクトが作れるように
macOS向けに新しく追加されるAPIとしては、「Object Capture」が強調されました。これは2Dイメージ(カメラで取った映像)を元に、写実的な3Dオブジェクトを作成できるというものです。
スマートフォンのカメラで撮影して3Dモデルを作成できるという試みは、Android製品でも何度か目にしたことがあり、作成される3Dモデルのクオリティについては、どうしても眉に唾をつけながら見なくては、と構えてしまいます。ただし、ここ何年もARに注力してきたAppleが、頭ひとつ抜きん出た品質を実現するのならば、3DモデルやARの作成をiPhoneやMacで手軽に行えるようになるのはまさにエポックメイキングな変化となるでしょう。そんな意味で、引き続き注視したいトピックです。
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これらのほかにも、各種OSの新機能アップデートは、膨大に発表されました。例えばiOS 15では、
・FaceTimeにノイズを除去する機能の追加
・「メッセージ」アプリのデザイン改良
・「集中モード」の追加
・OCR機能の追加
・Walletの鍵や身分証対応
・天気アプリのリデザイン
・マップの改良
などが予定されています。iPadOS 15は、ウィジェットに対応し、マルチタスキングの仕方も変わります。「クイックメモ(Quick Note)」という新機能にも注目です。
またwatchOS 8は「呼吸」アプリが「マインドフルネス」アプリへと改良されるほか、ポートレート文字盤が追加されたり、「Home」アプリが再設計されたりします。
そして、macOS Montereyでは、ユニバーサルコントロールのほかにも、「ショートカット」アプリが追加されたことは大きなトピックでしょう。また、Safariの「タブグループ」という機能も便利そうでした。
ちなみに、ディベロッパーでなくても、新機能を先行して試せるパブリックベータテストプログラムは7月から公開される予定。アーリーアダプターな皆さんは、ぜひチェックしてみてくださいね。
<取材・文/井上 晃>
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