キユーピーは6月21日、国際医療福祉大学の松本哲哉主任教授、帯広畜産大学との共同研究により、卵白に含まれるタンパク質「卵白リゾチーム」を加熱して変性した「加熱変性リゾチーム」に、新型コロナウイルスを不活性化させる効果があることを確認したと発表した。
キユーピーグループは「国内の鶏卵生産量の約1割を取り扱う商品メーカー」として、卵に関する研究を重ねてきた。その中で、加熱変性リゾチームについては、東京海洋大学との共同研究により、ヒトノロウイルス、新型ヒトノロウイルス(GⅡ.17)、A型肝炎ウイルスを不活性化させることを確認し発表している。
今回の研究で、濃度1%の加熱変性リゾチームは、新型コロナウイルスを20秒で99.5%以上不活性化することがわかった。試験は次の2通りが実施された(試験はアルコールの影響を排除するため、希釈などにアルコールは使用していない)。
試験1:加熱変性リゾチームを用いた短時間での新型コロナウイルス不活性化効果
加熱変性リゾチーム溶液の最終濃度が1%になるよう、新型コロナウイルス溶液(ウイルス力価は約6.75 log10 TCID50/mL)と混和。これを20秒間静置した後培養細胞に接種し、TCID50(50%培養細胞感染価)測定方によりウイルス力価(ウイルスりきか。ウイルス量)を算出。その結果、99.5%以上の新型コロナウイルスが不活性化された。
試験2:加熱変性リゾチームの濃度と新型コロナウイルス不活化効果
加熱変性リゾチームの最終濃度が0.25%、0.5%、1%になるよう新型コロナウイルス溶液と混和。これを5分間静置した後、培養細胞に接種し、TCID50法でウイルス力価を算出。その結果、0.25%の加熱変性リゾチームでは98.5%、0.5%と1%では99.5%以上の新型コロナウイルスが不活性化された。
アルコールによる新型コロナウイルスの不活性化はすでに知られているが、肌荒れ、アレルギー反応、宗教上の制約などで使えない人がいる。この研究は、そうした人たちへの活用が期待されている。今後は変異株の不活性化を検証するとのこと。
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